成長ホルモン治療読む時間 約6分
成長ホルモン治療中の歯医者さん:歯の生えかわり・矯正・抜歯のときに伝えること
公開日:2026年10月5日 更新日:2026年10月5日
成長ホルモン治療中でも、歯の治療や矯正はふだんどおり受けられることがほとんどです。ただ、成長ホルモンはあごの成長にも関わるため、矯正治療を始めるときや歯を抜くときは、治療中であることを歯医者さんに伝えておきましょう。歯科で薬を出してもらうときも、お薬手帳で成長ホルモンの治療中であることが分かるようにしておくと安心です。
歯医者さんにも、治療のことを伝えたほうがよい?
成長ホルモン製剤の患者向医薬品ガイドには、ほかの医師を受診するときは、この薬を使っていることを伝えるよう書かれています。歯科も同じです。成長ホルモンの注射は家で打つ薬なので、伝えないと歯医者さんには分かりません。
日本薬剤師会が厚生労働省の検討会で示した資料では、お薬手帳を見せることで、複数の医療機関にかかっていても薬の重なりや飲み合わせを確かめられると説明しています。歯科を受診するときもお薬手帳を持っていき、次のことを伝えましょう。
- 成長ホルモンの注射をしていることと、治療を受けている病気
- 治療を始めた時期と、終わる見こみの時期
- 副腎皮質ホルモンなど、ほかに使っている薬
- 成長ホルモンの主治医の医療機関名
歯科で出る痛み止めや抗菌薬は、使ってよい?
成長ホルモン製剤の添付文書で併用に注意するとされているのは、主に副腎皮質ステロイド、甲状腺ホルモン、糖尿病の薬、女性ホルモンの飲み薬など、ホルモンや血糖に関わる薬と、一部の製剤で挙げられている、主に肝臓の酵素(CYP3A)で分解される薬(抗てんかん薬など)です。歯科でよく使われる痛み止めや抗菌薬は、添付文書の併用注意には挙げられていません。
ただし、これは「どんな薬でも問題ない」という意味ではないため、薬を出してもらうときは、治療中であることを歯科医師や薬剤師に伝えて確かめてもらいましょう。ほかの薬との関係は「成長ホルモン治療中にほかの薬を使ってよい?」のコラムで説明しています。
歯の生えかわりと、成長ホルモンの関係は?
日本小児歯科学会によると、乳歯は3歳ごろまでにすべて生え、永久歯は6歳ごろから生え始めます。一番奥の第二大臼歯は11〜13歳のうちに生えるのが一般的ですが、歯の生える時期には個人差があります。
成長ホルモン分泌不全症の子どもの歯について10件の研究をまとめた報告(Journal of Clinical Medicine誌、2021年)では、歯の年齢が1〜2年ほど遅れていることが示されていました。治療による歯の成熟の変化ははっきりしなかったとされる一方、2025年に発表された別のまとめでは、治療中に歯の成熟が進んだとする研究が2件あり、結果はそろっていません。生えかわりが遅いと感じるときは、歯医者さんに相談しましょう。
あごの成長と、成長ホルモン治療の関係は?
2021年のまとめでは、成長ホルモン分泌不全症の子どもは下あごが小さめで、上の歯が前に出たかみ合わせになりやすく、その割合は最大で31%と報告されていました。治療によってあごの成長が追いつき、かみ合わせがよくなる方向に変わったとされています。
2025年のまとめ(7件の研究)でも、成長ホルモン治療で下あごの長さが大きくなったという結果が多く見られました。ただし、どの研究も人数が少なく、証拠の確かさは「非常に低い」と評価されており、はっきりしたことを言うには、さらに研究が必要だとされています。
矯正治療を始めるとき、伝えておきたいことは?
日本小児歯科学会は、あご、歯並び、かみ合わせの成長による変化は、おおむね18歳くらいまで続くとしています。矯正治療は、こうした成長の時期を見ながら計画を立てます。成長ホルモンの治療中は、あごの成長の進み方が変わる可能性があるため、矯正歯科の医師にも治療中であることを伝えましょう。
成長曲線や、成長ホルモンの治療をいつごろ終える見こみかを伝えると、矯正の計画を立てる参考になります。骨年齢の検査の結果を伝えてよいかも、主治医に聞いておくとよいでしょう。骨年齢については「骨年齢とは?」のコラムで説明しています。
歯を抜くときは?
矯正治療では、歯を並べるすき間をつくるために、むし歯でない永久歯を抜くことがあります。日本小児歯科学会は、ふつうは歯並びの真ん中あたりの第一小臼歯を抜き、きちんと治してかみ合っていれば悪い影響はほとんどないと説明しています。成長ホルモンの治療中であることだけを理由に、抜歯を避ける必要があるとする記載は、このコラムで確認した添付文書には見当たりません。
抜いたあとに血が出るときは、きれいなガーゼをたたんで当て、5〜10分ほどかんでいると止まると同学会は説明しています。副腎皮質ホルモンの薬を使っている子や、全身麻酔で歯の治療を受ける子は、前もって成長ホルモンの主治医に相談してください。全身麻酔の考え方は「成長ホルモン治療中に入院や手術をすることになったら」のコラムで説明しています。
あごや歯並びの変化で、医師に伝えたほうがよいことは?
患者向医薬品ガイドには、長いあいだ多く使いすぎた場合に、額、鼻やあご、手足など体の先が大きくなる症状があらわれることがあると書かれています。指示どおりの量で使っていればまれなことですが、あごが急に大きくなった、歯のすき間が広がってきたなどの変化に歯医者さんが気づいたときは、成長ホルモンの主治医にも伝えてください。
出典 [1]
治療中のむし歯予防で気をつけることは?
日本小児歯科学会は、6歳ごろに生える第一大臼歯(6歳臼歯)はむし歯になりやすいため、溝をふさぐシーラントやフッ化物の塗布を勧めています。フッ化物の塗布は、第二大臼歯が生えたあとも数年間、中学卒業まで続けたいとしています。
治療を始めてから食欲が増え、間食が増えることもあります。食べる回数が増えたときは、歯みがきのタイミングも見直しましょう。食欲の変化は「成長ホルモン治療を始めたら食欲や体重が増えた」のコラムで説明しています。
歯科と成長ホルモンの主治医、どちらに何を相談する?
むし歯や歯並び、生えかわりの時期など歯そのものの相談は、かかりつけの歯科や小児歯科、矯正歯科にします。成長ホルモンの注射を続けてよいか、休む必要があるか、ほかのホルモンの薬の量をどうするかは、成長ホルモンの主治医が判断します。
歯科で全身麻酔や鎮静を使う治療をすすめられたときや、歯科から成長ホルモンの治療について質問があったときは、主治医に伝えて、必要なら医療機関どうしで情報を共有してもらいましょう。
出典 [1]
ノビケアで治療を受けている場合は?
ノビケアで治療を受けている方も、歯科でほかの医療機関から新しく薬を処方されたときや、矯正治療を始めるときはお知らせください。治療を始めるかどうか迷っている段階では、医師による無料相談(ビデオ通話)をご利用いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。お薬の処方を検討する2回目には、お子さまにも参加していただきます。予約は公式LINEから受け付けています。
成長ホルモン治療中の歯科受診についてよくある質問
Q. 注射をした日に、歯の治療を受けてもよいですか?
A. 注射と歯科治療の日にちについて、添付文書に決まりは書かれていません。迷うときは主治医に確認してください。
Q. 歯の生えかわりが、友だちより遅い気がします。
A. 歯の生える時期には個人差があります。成長ホルモン分泌不全症の子では歯の年齢が遅れていることがあるとされていますが、生えてこない歯がある場合はほかの原因のこともあるため、歯医者さんで調べてもらいましょう。
Q. 部活でマウスガードを作ってもらうときも、伝えたほうがよいですか?
A. 日本小児歯科学会は、あごや歯並びの成長変化に合わせてマウスガードの適合を管理する必要があるとしています。成長ホルモンの治療中であることも伝えておくとよいでしょう。
まとめ
成長ホルモン治療中でも歯科治療はふだんどおり受けられることがほとんどですが、お薬手帳を持っていき、治療中であることを伝えましょう。成長ホルモンはあごの成長にも関わる可能性があるため、矯正治療を始めるときや歯を抜くときは、矯正歯科の医師と成長ホルモンの主治医の両方に相談してください。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル」
- 厚生労働省 第4回高齢者医薬品適正使用検討会 資料2 日本薬剤師会「電子版お薬手帳の現状と課題」(PDF、2017年10月30日。お薬手帳で重複や相互作用を確かめられること、市販薬も記録すること)
- PMDA「ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル 添付文書」(2026年8月改訂 第3版)
- PMDA「ノルディトロピン フレックスプロ注 添付文書」(2025年9月改訂 第3版)
- 日本小児歯科学会「こどもの歯のQ&A 小学生低学年」(歯の生えかわり、6歳臼歯、歯が抜けたあとの出血の止め方など)
- 日本小児歯科学会「こどもの歯のQ&A 中学生高校生」(矯正治療での抜歯、第二大臼歯の生える時期、顎・歯列・咬合の成長変化の時期など)
- Journal of Clinical Medicine「Clinical Implications of Growth Hormone Deficiency for Oral Health in Children: A Systematic Review」(Torlińska-Walkowiak N ほか、2021年、10件の研究のまとめ)
- Orthodontics & Craniofacial Research「Craniofacial Changes Among Children and Adolescents Submitted to Growth Hormone Therapy: A Systematic Review」(Nascimento RB ほか、2025年、7件の研究のまとめ)
- 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会(厚生労働科学研究班・日本内分泌学会)「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」(日本内分泌学会雑誌 Vol.99 Suppl.、2023年7月、J-STAGE、PDF)
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- ノビケア「お問い合わせ」