成長ホルモン治療読む時間 約6分
成長ホルモン治療の保険診療と自費(自由診療)の違い:対象・費用・治療の進め方
公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日
成長ホルモン治療は、国が承認した病気と診断された場合は保険診療、原因となる病気が見つからない低身長に使う場合は適応外使用の自由診療になります。使う薬の成分は同じでも、診断までの流れ、費用の負担と助成、副作用の救済、続ける・やめるの基準が違います。どちらかを考える前に、まず保険診療の対象になる病気がないかを確かめることが出発点です。
保険診療か自由診療かは、何で決まる?
家族が選ぶものではなく、診断で決まります。成長ホルモン製剤の添付文書には、どの病気の低身長に使う薬かが書かれており、成長ホルモン分泌不全性低身長症、ターナー症候群、SGA性低身長症など、いずれも骨端線が閉じていない特定の病気です。この病気と診断され、病気ごとの基準を満たすと、保険診療で治療できます。
検査をしても原因となる病気が見つからない低身長は、承認された病気に含まれていません。この場合に成長ホルモン製剤を使うことは適応外使用となり、保険は使えず自由診療になります。
日本小児内分泌学会と日本内分泌学会の見解では、低身長の子どものうち成長ホルモンを適切に使えるのは一部で、それ以外の子どもへの使用は保険の適応にならず、よい治療効果も期待できないとしています。
保険診療と自由診療を比べると、何が違う?
おもな違いを表にまとめました。自由診療の内容は医療機関ごとに違うため、受診先で一つずつ確かめてください。
| 項目 | 保険診療 | 自由診療(適応外使用) |
|---|---|---|
| 対象 | 承認された病気と診断され、病気ごとの基準を満たす子ども | 原因となる病気が見つからない低身長など、承認の範囲の外 |
| 診断までの検査 | 病気に応じて血液検査、骨年齢、分泌刺激試験、染色体検査など | 医療機関によって違う。保険の対象になる病気がないかの確認が大切 |
| 薬 | 国内で承認された製剤を、承認された量で使う | 同じ成分の製剤を、承認された病気以外に使う |
| 費用の負担 | 薬価にもとづく。窓口負担は小学校入学前2割、それ以降3割 | 医療機関が決めた料金を全額自己負担 |
| 公的な助成 | 高額療養費、対象の病気なら小児慢性特定疾病の医療費助成など | 健康保険や医療費助成は使えない |
| 重い副作用の救済 | 適正に使った場合は、医薬品副作用被害救済制度の対象になりうる | 原則として救済制度の対象にならない |
| 続ける・やめる基準 | 添付文書の継続基準や、学会の中止の推奨がある | 公的な基準はない。始める前に医療機関に確認する |
保険診療は、どんな流れで進む?
まず、かかりつけの小児科で成長曲線を見てもらい、必要に応じて小児の内分泌を専門とする医療機関に紹介されます。東京慈恵会医科大学の小児科は、診断のために、外来や入院で血液検査、成長ホルモン分泌刺激試験、骨のエックス線、頭部MRI、染色体検査などを行うと説明しています。
日本小児内分泌学会は、成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断と治療の開始には、2種類以上の分泌刺激試験で成長ホルモンの不足を確かめることが原則必要で、骨端線が閉じていないことが条件だとしています。診断がつけば、小児慢性特定疾病の医療費助成を申請できる場合があります。小児慢性特定疾病情報センターによると、令和6年4月から、助成での成長ホルモン治療の扱いは保険診療の適用基準と同じになりました。学会は、この変更は診断の基準や保険診療の対象を変えるものではないとしています。
治療中は定期的に通院し、伸び方や副作用を確かめます。学会は、成長ホルモン分泌不全性低身長症では、1年の伸びが1cm未満になった場合や骨端線が閉じた場合は中止、2cm未満では中止を積極的に検討することを推奨しています。
自由診療は、どんな流れになる?
自由診療を考える場合も、最初に保険診療の対象になる病気が隠れていないかを確かめることが大切です。病気が見つかれば、保険診療で治療できる可能性があるからです。
厚生労働省の医療広告ガイドラインは、適応外使用を自由診療で行う場合、承認された使い方と違うこと、薬の入手経路、同じ成分の国内承認薬があるかどうか、医薬品副作用被害救済制度の対象にならないこと、標準的な費用、期間、主なリスクなどを示すよう求めています。説明を受けるときの確認項目として役立ちます。
学会の見解は、承認された病気以外の低身長に使うと効果が得られないことが多く、有害なことが起こる可能性もあるとしています。原因が見つからない低身長への使用は適応外使用で、勧められている治療ではありません。それでも検討する場合は、効果をどう確かめ、どうなったらやめるのかを、始める前に決めておきましょう。くわしくは「自由診療の成長ホルモン治療とは?」の記事で説明しています。
費用の考え方は、どう違う?
保険診療では、薬の費用は国が決めた薬価にもとづいて計算され、窓口で払うのはその一部です。1か月の自己負担が上限を超えた場合は、高額療養費制度で超えた分が払い戻されます。対象の病気であれば、小児慢性特定疾病の医療費助成で自己負担の上限がさらに低くなります。この助成は、指定医療機関で行われた保険診療が対象です。
自由診療では、薬の料金も診察や検査の料金も、医療機関がそれぞれ決め、全額を自己負担します。高額療養費や医療費助成は使えません。成長ホルモン治療は年単位で続くことが多く、体重が増えると薬の量も増えるため、月ごとの金額だけでなく、検査を含めた総額の見込みを確認することが大切です。
費用を決める要素や見積もりの比べ方は「成長ホルモン治療の費用は何で決まる?」の記事で、保険診療での助成は「小児慢性特定疾病の医療費助成とは?」の記事で説明しています。
重い副作用が起きたときの救済は、どう違う?
国内で承認された薬を適正に使ったのに、入院が必要になるほどの副作用が起きた場合には、医薬品副作用被害救済制度があります。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、薬の使い方が適正と認められない場合は救済の対象にならないとしています。
原因の見つからない低身長への成長ホルモンの使用は、承認された使い方の外にあるため、原則として救済の対象になりません。くわしくは「医薬品副作用被害救済制度とは?」の記事で説明しています。
途中で保険診療と自由診療が切り替わることはある?
あります。自由診療で経過を見ているうちに、伸び方や追加の検査から、保険の対象になる病気が疑われることがあります。その場合は、小児の内分泌を専門とする医療機関などで、保険診療として改めて検査や診断を受けます。反対に、保険の基準を満たさなかった場合は、経過を見る、治療をしないといった選択も含めて考えます。
保険診療と保険外の診療を組み合わせられるのは、国が一定のルールで認めたものに限られています。同じ時期に保険診療と自由診療を受けられるかどうかは、受診する医療機関に確認してください。
ノビケアの成長ホルモン治療は自由診療で、原因となる病気が見つからない低身長への使用は適応外使用のため、健康保険や医療費助成は使えません。医師による無料相談(ビデオ通話)で保険診療の対象になりうる病気が疑われる場合は、対面の医療機関をご紹介します。
保険診療でも自由診療でも、共通することは?
どちらの場合も、治療は自宅で毎日(製剤によっては週1回)注射を続けるもので、年単位になることが多い治療です。注射を受けるのは子ども本人なので、年齢に応じて、治療の目的、痛み、続ける期間を一緒に話し合うことが大切です。
骨端線が閉じると、成長ホルモンは身長を伸ばす効果がなくなります。日本小児内分泌学会の見解は、骨年齢で男子15歳・女子14歳以上の閉じかけている時期や、二次性徴が進んで1年の伸びが2cm以下になった場合も、ほとんど効果がみられないとしています。保険か自由診療かにかかわらず、治療を考えるなら時期の見通しも医師に確かめましょう。
副作用の確認も共通です。注射の部分の痛みや腫れ、頭痛などのほか、まれな副作用もあるため、治療中は定期的な診察や検査を受けます。副作用の内容は「成長ホルモン治療の副作用と、治療中に確認すること」の記事で説明しています。
保険診療と自由診療の違いについてよくある質問
Q. 同じ薬なら、保険診療でも自由診療でも効果は同じですか?
A. 成分が同じでも、効果の見込みは、使う相手の病気によって違います。学会は、承認された病気以外の低身長では効果が得られないことが多いとしています。
Q. 保険で治療を続けていて、基準を満たさなくなったら、自由診療で続けられますか?
A. 基準は、効果が見込めるかどうかの判断にもとづいています。学会は、伸びから見て効果が望めないと判断した時点での中止を推奨しています。続けるかどうかは主治医とよく相談してください。
Q. 自由診療の費用に、小児慢性特定疾病の助成は使えますか?
A. 使えません。助成は、指定医療機関で行われた保険診療が対象です。
まとめ
成長ホルモン治療が保険診療になるか自由診療になるかは、診断で決まります。保険診療には承認された使い方、助成、救済制度、やめる基準がそろっており、自由診療(適応外使用)ではそれらが使えないか、医療機関ごとに確かめる必要があります。まず小児科で原因を調べてもらい、そのうえで説明を受けて判断しましょう。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- PMDA「ノルディトロピン フレックスプロ注 添付文書」(2025年9月改訂 第3版)
- 日本小児内分泌学会「成長ホルモンとは」
- 厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」(PDF)
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 小児慢性特定疾病情報センター「手続きの流れ」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「Q7 救済の対象とならない場合とは、どのような場合ですか。」
- 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」(PDF、令和8年3月30日最終改正)
- 東京慈恵会医科大学 小児科学講座「低身長」
- 小児慢性特定疾病情報センター「成長ホルモン治療について」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「Q2 「適正な使用」とは、具体的にどのような使用をいうのですか。」
- 厚生労働省「保険外併用療養費制度について」
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- ノビケア「お問い合わせ」
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル」