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アナストロゾールは身長に使われる?乳がんの薬が話題になる理由と注意点
公開日:2026年10月3日 更新日:2026年10月3日
アナストロゾールは、閉経後乳癌の治療薬として承認されたアロマターゼ阻害薬で、子どもの低身長は承認された効能に含まれていません。骨端線を閉じさせる女性ホルモン(エストロゲン)が作られるのを抑えるため、男の子の身長を伸ばす目的で海外で研究されてきましたが、大人の身長が高くなるかどうかの根拠は限られています。骨や背骨への影響などの安全性の心配もあり、使うかどうかは小児の内分泌を専門とする医師と慎重に相談する必要があります。
アナストロゾールとは、どんな薬?
アナストロゾールは、アロマターゼという酵素のはたらきを抑える「アロマターゼ阻害剤」です。日本ではアリミデックス錠1mgなどが販売されており、劇薬・処方箋医薬品に指定されています。
添付文書の効能又は効果は「閉経後乳癌」で、通常、成人に1日1回1mgを飲むとされています。閉経前の患者への使用は避けること、がんの薬物療法に十分な知識と経験をもつ医師のもとで使うことも書かれています。
子どもの低身長や、身長を伸ばすことは、承認された効能に含まれていません。そのため、身長を目的とした使用は適応外使用になります。
出典 [1]
なぜ身長の話題で名前が出るの?
骨端線が閉じるのには、女性ホルモンのエストロゲンが大きな役割をもっています。男の子でも、男性ホルモンの一部がアロマターゼによってエストロゲンに変えられ、骨端線に作用します。
アロマターゼ阻害薬でエストロゲンが作られるのを抑えれば、骨の成熟がゆっくりになり、身長が伸びる期間が長くなるのではないか、という考えから、男の子の低身長や思春期の遅れに対して海外で研究されてきました。
小児内分泌の総説では、乳がんの補助療法として承認されたレトロゾールとアナストロゾールが手に入るようになったことで、子どもへの適応外使用が広がったと説明しています。対象には、低身長や思春期の遅れのほか、ホルモンが過剰になる一部のまれな病気も含まれ、病気によって効果の見込みが違うとされています。
研究では、身長が伸びることが分かっている?
コクランの系統的レビュー(2015年)は、男の子の低身長にアロマターゼ阻害薬を使ったランダム化比較試験4件(207人)をまとめています。対象は、体質による思春期の遅れ、特発性低身長、成長ホルモン分泌不全症の男の子でした。予測される大人の身長など、短い期間の成長の指標はどの試験でも改善しました。
しかし、実際の大人の身長(最終身長)を報告していたのは1件だけで、それもランダム化されていない条件での延長調査でした。レビューは、大人の身長が高くなることを支える根拠は限られていると結論しています。根拠の確かさは低いから中等度とされています。
2025年に発表された各国の小児内分泌医への調査では、使う医師が増えている一方、使わない理由としていちばん多かったのは長期の効果のデータがないことでした。予測身長が改善しても、それが大人の身長の改善を約束するものではありません。
子どもに使ったときの安全性の心配は?
コクランのレビューでは、同じ仲間の薬レトロゾールを使った思春期前の特発性低身長の男の子の45%に、背骨の軽い形の異常が見られ、プラセボのグループには見られなかったと報告されています。
小児内分泌の総説(2011年)も、背骨の変形、血液中のHDLコレステロールの低下、赤血球が増えすぎることなどの安全性の心配から、慎重であるべきだとしています。前に紹介した背骨の形の異常は、思春期前の男の子を対象にした試験で報告されたものです。
コクランのレビューでは、副作用をくわしく報告していた論文は1件だけで、安全性の情報そのものが限られていました。前述の調査でも、回答した医師の5人に1人が、副作用のために治療を中止した経験があったとされ、長期の結果についての疑問が残るとまとめています。子どもに使った場合の長期の安全性は、十分に分かっていません。
添付文書には、どんな副作用が書かれている?
アリミデックスの添付文書(成人の乳がん治療での情報)には、骨粗鬆症や骨折が起こりやすくなるため骨密度などを定期的に確かめることが望ましいと書かれています。
重大な副作用として、皮膚や粘膜の重い症状(スティーブンス・ジョンソン症候群)、アナフィラキシー、肝機能障害・黄疸、間質性肺炎、血栓塞栓症が挙げられています。そのほか、ほてり、頭痛、関節の痛み、吐き気、コレステロールの上昇などが載っています。
子どもでの安全性は、添付文書では確かめられていません。添付文書の情報は成人の女性を対象にしたものであることに注意が必要です。
出典 [1]
女の子に使われることはある?
身長を目的としたアロマターゼ阻害薬の研究は、おもに男の子を対象にしています。コクランのレビューも、男の子の低身長についてのものです。
コクランのレビューの解説は、エストロゲンは女の子の思春期の発達に大切なため、アロマターゼ阻害薬は10代の女の子への使用に適さないとしています。女の子の身長を伸ばす目的での使用を支える根拠は、学会や公的機関の資料には見当たりません。
出典 [3]
ドーピングや救済制度の注意は?
世界アンチ・ドーピング機構の2026年の禁止表では、アロマターゼ阻害薬は常に禁止される物質で、アナストロゾールも名前が挙げられています。スポーツをしている子は注意が必要です。
医療広告ガイドラインは、承認された効能と違う使い方では原則として医薬品副作用被害救済制度の対象にならないことを、自由診療の情報として示すよう求めています。個人輸入した薬は、厚生労働省が救済の対象にならないとしています。
くわしくは「医薬品副作用被害救済制度とは?」「スポーツ選手を目指す子の成長ホルモン治療はドーピングになる?」の記事で説明しています。
勧められたときに、確認したいことは?
身長を伸ばす目的でアナストロゾールを勧められた場合は、次の点について説明を受けましょう。使うかどうかは、小児の内分泌を専門とする医師と、効果の根拠とリスクをよく話し合って決めることをおすすめします。身長の伸び方が気になる場合は、ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話)で、成長の記録を見ながらご相談いただけます。
- 承認された効能ではない(適応外使用である)こと
- 大人の身長についての根拠がどこまであるのか
- 骨密度や背骨、血液検査などをどう確かめるのか
- 成長ホルモン治療と組み合わせる場合、その理由と追加のリスク
- どうなったらやめるのか、副作用が出たときの対応
- 競技スポーツをしている場合、ドーピングの規則との関係
アナストロゾールと身長についてよくある質問
Q. 骨年齢が進んでいると言われました。アナストロゾールで止められますか?
A. 骨の成熟をゆっくりにする目的で研究されていますが、大人の身長が高くなる根拠は限られ、安全性の心配もあります。骨年齢が進む原因を確かめることが先になります。
Q. 成長ホルモン治療と一緒に使うと、よく伸びますか?
A. 成長ホルモン治療に組み合わせた試験をまとめた2024年の解析では、予測身長や伸びの速さの改善が報告されていますが、実際の大人の身長への効果ははっきりしていません。勧められた場合は、根拠と副作用の説明を受けてください。
Q. 乳がんの薬を子どもが飲んで大丈夫ですか?
A. 子どもへの使用は承認されておらず、子どもでの安全性は添付文書では確かめられていません。研究でも背骨への影響などが報告されているため、慎重な判断が必要です。
まとめ
アナストロゾールは閉経後乳癌に承認された薬で、子どもの身長を目的とした使用は適応外使用です。男の子で予測身長が改善したという研究はありますが、大人の身長への効果の根拠は限られ、背骨や骨への影響などの心配もあります。勧められたら、小児の内分泌の専門医と慎重に相談しましょう。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- PMDA「アリミデックス錠1mg 添付文書」(2026年3月改訂 第3版)
- Nature Reviews Endocrinology「Aromatase inhibitors in pediatrics」(2011年、PubMed)
- コクラン「Aromatase inhibitors for short stature in male children and adolescents」(2015年)
- Hormone Research in Paediatrics「Use of Aromatase Inhibitors in Short Children and Adolescents to Increase Height Gain: A Current Practice Survey and Review of the Literature」(2025年、PubMed)
- 世界アンチ・ドーピング機構(WADA)「2026禁止表国際基準」日本語版(日本アンチ・ドーピング機構)(PDF)
- 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」(PDF、令和8年3月30日最終改正)
- 厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」
- 日本小児内分泌学会「当学会に所属している、内分泌代謝科(小児科)専門医」
- ノビケア「お問い合わせ」
- BMC Pediatrics「Aromatase inhibitors for short stature in male children and adolescents treated with growth hormone: a meta-analysis of randomized controlled trials」(2024年、PubMed)