成長ホルモン治療読む時間 約6分
成長ホルモン治療と血糖値:「検査で糖が高め」と言われたら確かめること
公開日:2026年10月5日 更新日:2026年10月5日
成長ホルモンにはインスリンの効きを弱める働きがあるため、治療中は血糖値やHbA1cを定期的に調べます。「糖が高め」と言われたら、尿・血液のどの検査か、空腹時か食後か、どのくらいの数値かを確かめましょう。1回の結果だけで糖尿病と決まるわけではありません。対応は主治医が判断するため、自分の判断で注射をやめないでください。
成長ホルモンと血糖は、どう関係する?
成長ホルモン製剤の添付文書には、成長ホルモンはインスリン感受性(インスリンの効きやすさ)を下げるため、血糖値やHbA1cが上がることがあると書かれています。そのため、定期的に血糖値やHbA1cを測り、異常があれば量を減らしたり一時的に中止したりするとされています。プラダー・ウィリ症候群とターナー症候群では、もともと糖の代謝が悪くなりやすいため、とくに注意して経過を見ることとされています。
日本糖尿病学会のサイトで公開されている小児・思春期糖尿病のガイドライン(2024年)も、成長ホルモンを、インスリンの効きを弱めて糖尿病の原因となりうる薬の一つに挙げています。成長ホルモン製剤は以前は糖尿病のある人には使えない薬でしたが、2022年からは使えるようになり、そのかわり慎重に経過を見ることが求められています。
治療中に糖尿病になることは、どのくらいある?
成長ホルモン治療の安全性についての国際的な専門家会議の報告(European Journal of Endocrinology誌、2016年)は、成長ホルモン分泌不全症や原因の分からない低身長で治療を受ける子どもが、糖の代謝の異常や2型糖尿病になる頻度はとても低いとしています。
日本で成長ホルモン治療を受けた低身長の子ども2,345人を追った調査(Clinical Pediatric Endocrinology誌、2017年)では、新たに2型糖尿病と診断されたのは3人(0.13%)でした。いずれの子にも、糖の代謝が悪くなりやすい要因がありました。日本内分泌学会などの診療ガイドライン(2023年版)も、成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療で、インスリンの効きが弱まることはあるものの、臨床的に問題になることは少ないとしています。
「糖が高め」は、どの検査の話?
「糖」の検査には、尿に糖が出ているかを見る尿糖、その時点の血液の糖の濃さを見る血糖値、1〜2か月の血糖の平均を表すHbA1cがあります。血糖値は、食事をしてからの時間で大きく変わるため、空腹時に測ったものか、食後に測ったもの(随時血糖)かで意味が違います。
前に紹介した糖尿病のガイドラインは、高血糖かどうかの判定は静脈から採った血液の値で行うとしています。尿糖は、血糖が上がっていなくても尿に糖が出る「腎性糖尿」のこともあり、小児慢性特定疾病情報センターは、学校検尿で腎性糖尿も多く見つかっているとしています。どの検査で、どんな条件で高めだったのかを、まず確かめましょう。
血糖値やHbA1cの区分は?
日本糖尿病学会の基準では、空腹時血糖値とHbA1cは下の表のように区分されます。子どもに特有の診断基準はなく、大人と同じ基準が使われています。数値はあくまで目安で、ブドウ糖を飲んで測る検査の結果なども合わせて判断します。
| 検査 | 区分 | 数値(静脈の血液) |
|---|---|---|
| 空腹時血糖値 | 正常域 | 110mg/dL未満(100〜109mg/dLは正常高値) |
| 空腹時血糖値 | 境界域 | 110〜125mg/dL |
| 空腹時血糖値 | 糖尿病域 | 126mg/dL以上 |
| 随時血糖値 | 糖尿病型とみなす値 | 200mg/dL以上 |
| HbA1c | 糖尿病型とみなす値 | 6.5%以上 |
出典 [6]
1回高めだったら、糖尿病ということ?
同じガイドラインでは、1回目の検査で「糖尿病型」の値が出ても、原則として別の日に再検査をして、もう一度「糖尿病型」が確かめられた場合に糖尿病と診断するとしています。HbA1cだけをくり返し測って診断することはできないとされています。また、強いストレスのない状態で高血糖を確かめる必要があるとしています。
一方、血糖値とHbA1cが同じ採血でどちらも糖尿病型を示した場合や、のどの渇き、水をたくさん飲む、尿が多い、体重が減るといった典型的な症状がある場合は、1回の検査で糖尿病と診断されることもあります。結果の受け止め方は、数値と症状を合わせて主治医に聞いてください。
出典 [6]
学校の尿検査で尿糖を指摘されたら?
学校検尿では、1992年から全国の小中学校で尿糖の検査が行われています。ガイドラインによると、尿糖が陽性の場合は、再検査や精密検査で空腹時血糖とHbA1cを測り、必要に応じてブドウ糖を飲んで測る検査で判定します。尿糖とあわせて尿ケトンも陽性の場合は、急いで医療機関を受診する必要があるとされています。
小児慢性特定疾病情報センターは、子どもの2型糖尿病の多くは学校検尿で見つかり、診断のときは症状がないことが多いと説明しています。成長ホルモン治療中に学校から通知を受け取ったときは、学校の検査結果を持って、成長ホルモンの主治医にも伝えましょう。
主治医に確かめたいことは?
「糖が高め」と言われたら、次のことを確かめておくと、今後の見通しが分かりやすくなります。
- どの検査(尿糖、血糖値、HbA1c)で、数値はいくつだったか
- 空腹時の採血か、食事のあとの採血か
- 前回の検査と比べて、上がってきているか
- 再検査はいつ、どこで、どんな方法で行うか
- 成長ホルモンの量や注射を変える必要があるか
- 家で気をつけて見ておく症状はあるか
とくに気をつけて見ていくのは、どんな子?
添付文書では、肥満がある子や、家族に糖尿病の人がいる子など、糖尿病になりやすい条件がある場合は慎重に観察することとされています。診療ガイドラインも、肥満を伴う場合や、糖の代謝が悪くなりやすい病気の場合は、より慎重に経過を見るべきだとしています。
小児慢性特定疾病情報センターによると、子どもの2型糖尿病では、診断のときに肥満を伴う割合が約70〜80%で、治療の基本は食事と運動です。血糖を下げようと自己判断で食事を大きく減らすと、成長に必要な栄養が足りなくなるおそれがあります。食事の見直しは、主治医や栄養士と相談して進めましょう。肥満と身長の関係は「太っているのに背が低い子」のコラムで説明しています。
すぐに受診したほうがよい症状は?
成長ホルモン製剤のガイドには、糖尿病の症状として、体がだるい、体重が減る、のどが渇く、水をたくさん飲む、尿の量が増えるといった様子が挙げられています。こうした症状があるときは、次の診察を待たずに主治医に連絡してください。
何度も吐く、おなかを強く痛がる、呼吸が速く深い、ぼんやりしているといった様子があるときは、血糖が高い状態が続いて危険な状態になっていることがあります。すぐに119番や救急医療機関に連絡してください。
ノビケアで治療を受けている場合は?
ノビケアでは、糖尿病がある場合は治療を行っていません。医師が必要と判断した場合はご自宅で指先の血液と尿を採る郵送検査を行い、治療中もおおむね半年から1年ごとに、血糖や甲状腺の働きなどを確認しています。静脈からの採血は行っておらず、必要な場合は対面の医療機関をご紹介します。学校検尿などで尿糖を指摘されたときも、お知らせください。治療を始めるかどうか迷っている段階では、医師による無料相談(ビデオ通話)をご利用いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。お薬の処方を検討する2回目には、お子さまにも参加していただきます。予約は公式LINEから受け付けています。
成長ホルモン治療と血糖についてよくある質問
Q. 甘いものは控えたほうがよいですか?
A. 小児慢性特定疾病情報センターは、子どもの2型糖尿病の食事について、バランスのよい食事をとり、ジュースなど砂糖を含む甘いものを避けることを基本としています。治療中の子どもの食事の制限が必要かどうかは、検査の結果をふまえて主治医と相談してください。
Q. 家族に糖尿病の人がいます。治療は受けられますか?
A. 添付文書では、家族に糖尿病の人がいる場合は慎重に観察することとされています。治療を始める前に、主治医に伝えてください。
Q. 検査で高めと言われたので、注射を休んでもよいですか?
A. 自己判断で休まず、主治医の指示を待ちましょう。量の見直しや再検査で対応することもあります。
まとめ
成長ホルモンにはインスリンの効きを弱める働きがあるため、治療中は血糖値やHbA1cを定期的に調べます。「糖が高め」と言われたら、どの検査で、どんな条件で、どのくらいだったかを確かめ、再検査の予定を主治医と決めましょう。のどの渇きや尿の増加などの症状があれば、早めに相談してください。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- PMDA「ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル 添付文書」(2026年8月改訂 第3版)
- 日本糖尿病学会掲載「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」Ⅳ.その他の糖尿病(薬剤によるもの、遺伝的症候群に伴う糖尿病など、PDF)
- 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会(厚生労働科学研究班・日本内分泌学会)「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」(日本内分泌学会雑誌 Vol.99 Suppl.、2023年7月、J-STAGE、PDF)
- European Journal of Endocrinology「GH safety workshop position paper: a critical appraisal of recombinant human GH therapy in children and adults」(欧州小児内分泌学会・成長ホルモン研究学会・米国小児内分泌学会の合同会議の声明、2016年、PMC)
- Clinical Pediatric Endocrinology「Incidence of diabetes mellitus and neoplasia in Japanese short-statured children treated with growth hormone in the GeNeSIS」(国内で成長ホルモン治療を受けた子ども2,345人、2017年、PMC)
- 日本糖尿病学会掲載「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」Ⅰ.総論(定義と分類、診断基準、学校検尿による尿糖スクリーニングなど、PDF)
- 小児慢性特定疾病情報センター「2型糖尿病 概要」
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル」
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- ノビケア「お問い合わせ」