成長ホルモン治療読む時間 約6分
成長ホルモン治療を受けるか迷ったら:家族で話し合いたいこと
公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日
成長ホルモン治療を受けるかどうかは、急いで決めるより、まず診断名と保険診療の対象かどうかを確かめ、そのうえで「何のために治療するのか」「毎日の注射を何年も続けられるか」「本人はどう思っているか」を家族で話し合うことが大切です。治療をしないで経過を見ることも、選択肢の一つです。迷っている点は、そのまま医師に伝えてかまいません。
話し合う前に、最初に確かめることは?
最初に確かめたいのは、診断名と、その治療が保険診療で認められた使い方かどうかです。成長ホルモン治療が保険診療で受けられるのは、成長ホルモン分泌不全性低身長症など、国が承認した病気と診断され、基準を満たす場合です。日本小児内分泌学会は、低身長の子どものうち、健康保険で成長ホルモン治療が使えるのは一部だと説明しています。
同じ学会は、承認された病気以外の低身長に使うと、効果が得られないことが多く、有害なことが起こる可能性があるとしています。原因となる病気が見つからない低身長への使用は適応外使用で、自由診療になります。くわしくは「自由診療の成長ホルモン治療とは?」のコラムで説明しています。どちらにあたるかで、期待できることも、費用や手続きも大きく変わります。
出典 [1]
治療に何を期待しているかを、家族で言葉にする
「背を伸ばしたい」という気持ちの奥には、からかわれないでほしい、スポーツで不利にならないでほしい、本人の悩みを軽くしたいなど、さまざまな思いがあります。何を期待しているのかを家族で言葉にしておくと、医師の説明と照らし合わせやすくなります。
治療の効果は、1年あたりの伸びる速さの変化で確かめるもので、最終的な身長を約束できる治療ではありません。また、成長ホルモン治療と心の面の関係を扱った総説(Pediatric Clinics of North America誌、2015年)では、背が低いこと自体が心の問題につながるという根拠や、身長を伸ばすことで生活の質が良くなるという根拠には疑問が出されています。期待していることが治療で得られるものかどうかを、医師に率直に聞いてみましょう。効果の確かめ方は「成長ホルモン治療の効果:何を目指し、どう確かめる?」のコラムで説明しています。
出典 [2]
毎日の注射を、続けられるかを考える
成長ホルモン治療は、多くの場合、自宅で毎日注射し、年単位で続けます。フランスで毎日型の治療を受けていた子ども275人を調べた研究(Endocrine Connections誌、2023年)では、治療が生活のじゃまになると感じる場面として、外泊や旅行がとくに挙げられていました。
誰が注射を担当するか、帰りが遅い日や外泊の日はどうするか、通院や薬の受け取りに誰が行くかなど、生活の具体的な場面で考えてみると、続けられるかどうかが見えてきます。家族の負担を軽くする工夫は「毎日の注射を続ける家族の負担を軽くするには」のコラムで説明しています。
注射のほかにも、治療中は定期的な診察や検査で、伸びや副作用を確かめます。通院の回数や、学校を休む必要があるかも、生活の負担として考えておきましょう。治療中の検査については「成長ホルモン治療中の通院と検査」のコラムで、きょうだいへの説明は「治療をしていないきょうだいにどう説明する?」のコラムで説明しています。
出典 [3]
副作用と、やめる目安も先に聞いておく
治療を始める前に、主な副作用と、治療中に何を確かめるかを聞いておきましょう。副作用については「成長ホルモン治療の副作用と、治療中に確認すること」のコラムで説明しています。
やめる目安を始める前に知っておくことも大切です。日本小児内分泌学会は、成長ホルモン分泌不全性低身長症で保険診療を受けている子どもについて、1年の伸びが2cm未満になったときは中止を積極的に考える目安、1cm未満になったときや骨端線が閉じたときは中止する目安を示しています。ほかの病気や自由診療の場合の目安は、主治医に確かめてください。どのくらいの期間で効果を見直すか、思ったほど伸びないときにどうするかを確かめておくと、始めたあとに迷いにくくなります。
出典 [1]
子ども本人の気持ちは、どう聞く?
注射を受けるのは子ども本人です。日本小児科学会の「医療における子ども憲章」は、子どもには自分の健康を守るための情報を分かりやすく説明してもらい、自分の気持ちや希望、意見を伝える権利があるとしています。年齢に合わせて、何のための治療か、毎日どんなことをするのかを説明し、本人の考えを聞きましょう。
米国の小児病院で、8〜14歳の子ども22人とその保護者に聞き取りをした研究(Endocrines誌、2022年)では、保護者が情報を伝えて意見を求めていた家庭がある一方、話し合いを覚えていない子どももいました。研究者は、子どもの年齢に合った言葉で、くり返し話すことが大切だとしています。同じ研究グループの別の調査(2025年)では、保護者の心配が強いと、子どもが決定に関わる度合いが低くなる傾向が見られました。
本人が注射を嫌がる、または治療を強く望んでいるなど、親と考えが違うこともあります。その場合も、どちらかに決めつけず、本人の不安や期待を医師にも聞いてもらいましょう。
両親で意見が分かれるときは?
治療に前向きな気持ちと、注射を続ける負担や副作用を心配する気持ちが、家族の中で分かれることはよくあります。意見が分かれていること自体は問題ではありません。それぞれが何を大事にしているかを書き出してみると、話し合いの焦点がはっきりします。
| 話し合いたいこと | 確かめる相手 |
|---|---|
| 診断名と、保険診療か自由診療か | 医師 |
| 治療で期待していることと、その見込み | 家族と医師 |
| 注射の担当、外泊や行事の日の対応 | 家族 |
| 副作用、治療中の検査と通院の回数 | 医師 |
| 効果の見直しの時期と、やめる目安 | 医師 |
| 費用の総額と、続ける期間 | 医師・医療機関 |
| 本人の気持ちと、不安に思っていること | 本人 |
治療しない、まだ決めないという選択は?
原因となる病気がない体質的な低身長では、治療をせずに記録を続けながら経過を見ることも一般的な選択です。治療をしなかった場合の考え方は「成長ホルモン治療をしなかったらどうなる?」のコラムで説明しています。
一方で、日本小児内分泌学会は、骨端線が閉じたあとは成長ホルモン治療に身長を伸ばす効果がないとしています。決めるまでの時間は無制限ではないため、「いつまでに、何を見て決めるか」を医師と相談しておくと、焦らずに考えられます。
まだ決めないで経過を見る場合も、測った日と身長の記録を続けておくと、あとで考え直すときの大切な材料になります。半年から1年たって伸び方を見直したうえで、改めて家族で話し合うこともできます。
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成長ホルモン治療を迷うときによくある質問
Q. 一度始めたら、やめられないのですか?
A. やめることはできます。効果の見直しの時期と、やめるときの手順を、始める前に医師と確かめておきましょう。
Q. 本人が「自分で決めたい」と言っています。
A. 本人の意見はとても大切です。治療の内容を本人にも分かる言葉で説明してもらい、一緒に考えましょう。ただし、治療を受けるかどうかの最終的な判断には保護者の同意が必要です。
Q. 迷っていることを医師に言うと、悪く思われませんか?
A. 迷いを伝えることは、納得して決めるために必要な情報です。何が決めきれないのかを具体的に伝えると、説明を補ってもらいやすくなります。
まとめ
成長ホルモン治療を受けるかどうかは、診断名と保険の扱いを確かめたうえで、期待していること、毎日の注射の負担、副作用とやめる目安、本人の気持ちを家族で話し合って決めましょう。治療しないで経過を見ることも選択肢です。ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話)は、1回目は保護者の方だけでもご相談いただけます。治療をする場合は、効果と限界、副作用、費用を医師がご説明し、治療のお薬を処方する2回目にはお子さまにも参加していただきます。相談の時点で、治療を受けると決める必要はありません。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 日本小児内分泌学会「成長ホルモンとは」
- Pediatric Clinics of North America「Short Stature: Is It a Psychosocial Problem and Does Changing Height Matter?」(2015年、PubMed)
- Endocrine Connections「Treatment burden, adherence, and quality of life in children with daily GH treatment in France」(Coutant R ほか、2023年、毎日型の治療を受けていたフランスの子ども275人、PMC)
- 日本小児科学会「医療における子ども憲章」(2022年3月、PDF)
- Endocrines「Perceptions of Youth and Parent Decision-Making Roles Regarding Recombinant Human Growth Hormone Treatment」(Fremont ER ほか、2022年、米国の8〜14歳の子ども22人と保護者22人への聞き取り、PMC)
- Families, Systems, & Health「Correlates of Youth Involvement in Decision Making about Growth Hormone Treatment」(Miller VA ほか、2025年、米国の保護者44人と8〜14歳の子ども30人、PMC)
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- ノビケア「お問い合わせ」