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毎日の注射を続ける家族の負担を軽くするには:役割分担と記録の工夫
公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日
毎日の注射の負担は、準備・注射・記録・薬の受け取りといった作業を家族で分け、一人に集中させないことで軽くしやすくなります。記録は、打った日と場所、打てなかった日とその理由、皮膚の変化などを、家族の誰が見ても分かる形で残しておくと、診察のときにも役立ちます。続けにくさを感じたら、我慢を重ねる前に主治医に伝えましょう。
毎日の注射は、家族にとってどのくらい負担になる?
フランスで毎日型の成長ホルモン治療を受けていた3〜17歳の子ども275人を調べた研究(Endocrine Connections誌、2023年)では、治療が生活のじゃまになる度合いを0〜100点(100点がいちばん大きい)で表すと、成長ホルモン分泌不全症の子のグループで平均27.7点でした。とくに影響が大きかったのは「家の外で泊まること」と「旅行」で、それぞれ20.7%、27.1%が「よく」または「いつも」じゃまになると答えています。
同じ研究では、子どもの生活の質は全体としては良好でしたが、「治療とのつき合い方」や「治療の影響」に関する項目の点数は低めでした。ギリシャの子ども250人とその保護者を調べた研究(Endocrine誌、2025年)では、保護者が感じる家族の生活への影響は小さめでしたが、感じ方には家庭ごとに大きなばらつきがありました。
どちらの研究も、毎日型の製剤を作る製薬会社が関わった調査です。また、日本の家庭にそのまま当てはまるとは限りません。それでも、負担を感じるのは珍しいことではなく、感じ方が家庭によって違う、という点は参考になります。
担当の人がいない日に、困らないようにするには?
注入器の使い方は製剤によって違い、患者向けの説明書(患者向医薬品ガイド)にも、専用の注入器を使うことや、1本の薬を複数の人で使わないことが書かれています。祖父母など、ふだんは注射をしない家族にも頼む可能性があるなら、処方を受けた医療機関で使い方を一緒に教わっておくと安心です。
説明書の写しや、医療機関から渡された手順の紙は、冷蔵庫の近くなど、誰でも見られる場所にまとめておきましょう。打ち方で迷ったときの問い合わせ先も、同じところに書いておくと便利です。
出典 [3]
記録には、何を書いておくと役に立つ?
記録は、打ち忘れを防ぐだけでなく、診察で主治医が効果や副作用を判断する材料になります。ニュージーランドで治療を受けていた子ども177人の全国調査(PLoS One誌、2011年)では、本人や家族の申告より、使い終わった容器の数のほうが実際に打った量を正確に表していたとされています。家族のあいだで記録を共有しておくと、記憶だけに頼るより正確になります。
日本内分泌学会などの診療ガイドライン(2023年版)の手引きでは、同じ場所に注射を続けると脂肪が減ってへこんだり、逆に盛り上がったりすることがあるため、注射する場所を毎日変えるよう指導するとしています。どこに打ったかを記録しておくと、場所を順番に替えやすくなります。紙の表、カレンダー、家族で共有できるアプリなど、続けやすい方法で残しましょう。
- 打った日と時間
- 打った場所(おなか・太もも・おしり・腕の左右など)
- 打てなかった日と、その理由(熱、外泊、本人が嫌がったなど)
- 注射した場所の赤み、腫れ、しこり、へこみ
- 熱や体調の変化、気になった様子
- 薬・針の残りと、次に受け取る日
子ども本人に任せていくのは、いつからがよい?
日本小児内分泌学会の移行期医療に関する提言は、10〜12歳ごろからは本人にも正しい病名や病気の説明をすべきだとしています。日本小児科学会の提言(2023年)も、10代の早いうちから、本人が自分の健康を管理できるよう準備を始めることを勧めています。注射の作業も、年齢と本人の気持ちに合わせて少しずつ任せていくと、将来の自己管理の練習になります。
たとえば、記録を本人がつける、準備を本人がする、保護者が見守るなかで本人が打つ、という順に進める方法があります。何歳から自分で打てるかには個人差があり、決まった年齢はありません。任せたあとも、打った記録を保護者がときどき一緒に確かめると、打ち忘れに早く気づけます。
保護者が疲れてしまったときは?
治療が長くなると、注射そのものより、毎日欠かさず続けなければという気持ちが重くなることがあります。子どもの治療の続けにくさに関わる要因をまとめた研究(Hormone Research in Paediatrics誌、2018年)では、病気や治療についての理解不足、注射の痛みや不快感、医療者との関係の質などが、変えられる可能性のある要因として挙げられています。つまり、相談することで軽くできる部分があるということです。
厚生労働省のこころの健康に関するサイトは、子どもの健康が心配なときは自分の健康がおろそかになりがちなので、子どもを支えるためにも自分の健康を大切にするよう呼びかけています。眠れない、気分の落ち込みが続く、といった状態が続くときは、保護者自身も医療機関や相談窓口を頼ってください。成長ホルモン治療が小児慢性特定疾病の医療費助成の対象になっている場合は、都道府県などが行う自立支援事業で、療養生活についての相談を受けられることがあります。実施している内容は地域によって違います。
主治医に相談すると、どんなことを見直せる?
同じ診療ガイドラインの手引きでは、注射する時間は毎日欠かさず打てる時間とし、一般には寝る前が多いとしています。家庭の生活の流れに合わない場合は、時間帯を主治医と相談できます。また、熱があるときや2〜3日の修学旅行などでは、厳しく打たせるより休ませたほうが精神的にもよく、短い中断が大人の身長に与える影響はほとんどないと考えられる、と書かれています。ただし、重症の場合は体の代謝を保つために続けることが望ましいとされています。
注入器の種類や、週1回型の製剤への切り替えが話題になることもあります。週1回型の製剤は、承認されている病気が限られています。詳しくは「毎日型から週1回型の成長ホルモン製剤に切り替えるときに確認すること」のコラムで説明しています。どの見直しができるかは、病気や製剤、体の状態によって違うため、自己判断せずに相談しましょう。
出典 [5]
毎日の注射を続ける家族の負担についてよくある質問
Q. 打てなかった日があったことを、主治医に正直に言いにくいです。
A. 打てなかった日が分からないと、効果が足りないと判断されることがあります。責められる話ではなく、治療を合わせるための情報として伝えてください。理由も一緒に伝えると、見直しにつながります。
Q. 共働きで、決まった時間に打つのが難しい日があります。
A. 担当を替えられる人を決めておく、帰宅後の流れのなかで打てる時間に合わせるなど、家庭の事情に合わせた形を主治医と相談しましょう。
Q. 祖父母の家に泊まるときは、どうすればよいですか?
A. 薬の持ち運びと保管、打つ人と打ち方を、前もって決めておきます。外泊が多い場合は、打ち方そのものを主治医に相談しておくと安心です。
まとめ
毎日の注射の負担は、家庭によって感じ方が違い、珍しいことではありません。作業を家族で分け、記録を共有し、子どもの年齢に合わせて少しずつ任せていくことで、一人に負担が集まりにくくなります。続けにくさは我慢せず、主治医に伝えましょう。ノビケアで治療を受けている方も、続けにくさについてはいつでもご相談いただけます。
出典 [11]
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公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- Endocrine Connections「Treatment burden, adherence, and quality of life in children with daily GH treatment in France」(Coutant R ほか、2023年、毎日型の治療を受けていたフランスの子ども275人、PMC)
- Endocrine「Quality of life and treatment burden of children receiving daily growth hormone treatment in Greece」(Christoforidis A ほか、2025年、ギリシャの子ども250人と保護者、PMC)
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル」
- PLoS One「Non-compliance with growth hormone treatment in children is common and impairs linear growth」(ニュージーランドで成長ホルモン治療を受けていた子ども177人の全国調査、2011年、PubMed)
- 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会(厚生労働科学研究班・日本内分泌学会)「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」(日本内分泌学会雑誌 Vol.99 Suppl.、2023年7月、J-STAGE、PDF)
- 日本小児内分泌学会「小児期発症内分泌疾患の成人への移行期医療に関する提言」(PDF)
- 日本小児科学会 移行支援に関する提言作成ワーキンググループ「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人移行支援を推進するための提言」(日本小児科学会雑誌127巻1号、2023年、PDF)
- Hormone Research in Paediatrics「Identifying Potentially Modifiable Factors Associated with Treatment Non-Adherence in Paediatric Growth Hormone Deficiency: A Systematic Review」(Graham S ほか、2018年、PubMed)
- 厚生労働省 こころもメンテしよう「ご家族の皆さんへ」
- 小児慢性特定疾病情報センター「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業」
- ノビケア「お問い合わせ」