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思春期の子が「注射をやめたい」と言ったら:話し合い方と相談先

公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日

思春期の子が「注射をやめたい」と言ったときは、すぐに説得するより、まず理由を聞くことが大切です。痛みや友だちの目、時間の縛り、効果を感じにくいことなど、理由によって打てる手は変わります。続けるか、方法を変えるか、やめるかは、本人も加わって主治医と話し合い、成長ホルモン以外の薬がある場合はそれを自己判断で止めないようにしましょう。

思春期に「やめたい」と思うのは、珍しいこと?

治療を続けにくくなることは、思春期にはよく見られます。ギリシャで毎日型の治療を受けていた子ども250人を調べた研究(Endocrine誌、2025年)では、8歳以上の子は年下の子より打ち忘れが多く、12歳を超える子では、治療に関する生活の質の点数を本人が保護者より低くつけていました。本人が感じている負担は、保護者が思うより大きいことがあるということです。

イタリアで毎日型の治療を受けていた70人を調べた研究(Frontiers in Endocrinology誌、2025年)では、41.4%が治療によるストレスを感じていました。針がこわいと答えた子は25.7%、治療のことで友だちに対して居心地の悪さを感じると答えた子は22.9%で、とくに友だちに対する居心地の悪さが、ストレスと強く結びついていました。

どちらの研究も、製薬会社の支援を受けた海外の調査です。それでも、「やめたい」という言葉は、わがままではなく、成長の時期によく見られる反応の一つだと受け止めてよいでしょう。

出典 [1] [2]

「やめたい」の裏には、どんな理由がある?

子どもの治療の続けにくさに関わる要因をまとめた研究(Hormone Research in Paediatrics誌、2018年)では、病気や治療についての理解が足りないこと、注射の痛みや不快感、医療者との関係の質などが、変えられる可能性のある要因として挙げられています。思春期には、次のような理由が重なることもあります。

出典 [3]

どう話し合えばよい?

厚生労働省のこころの健康に関するサイトは、子どもが話し始めたら、意見をはさんだり否定したりせずに聞き、「どんなふうに思う?」のように、はい・いいえで答えにくい聞き方をすることを勧めています。「やめたい」と言われたら、まず理由を聞き、その場で説得したり、治療にかけてきた手間を持ち出したりしないようにしましょう。心配を伝えるときは、「あなたは〜」ではなく「私は心配している」と、自分を主語にする言い方が勧められています。

日本小児内分泌学会の移行期医療に関する提言は、思春期の子の医療でも、本人の意思と自己決定権を尊重することを求めています。話し合いのゴールは、親の考えに従わせることではなく、本人が理由を理解したうえで選べるようにすることです。治療の目的、続けた場合とやめた場合の見通しなど、分からない点は主治医から本人に直接説明してもらいましょう。

一度で結論を出す必要はありません。「次の診察で先生に相談しよう」と区切り、それまでの間の打ち方を一緒に決めておくと、話が途切れにくくなります。

出典 [4] [5]

黙って打たなくなっていたら、どうする?

ニュージーランドの子ども177人の全国調査(PLoS One誌、2011年)では、本人や家族の申告より、使い終わった容器の数のほうが実際に打った量を正確に表していました。思春期になって本人に注射を任せていると、打っていない日が増えていても家族が気づきにくいことがあります。

打っていなかったことが分かっても、責めるより、理由を聞くことから始めましょう。打っていない日が多いことを主治医が知らないと、効果が足りないと判断されて量が変わるなど、治療の判断がずれることがあります。正直に伝えることが、本人に合った治療を選ぶ近道です。

出典 [6]

主治医には、何を相談できる?

日本小児科学会の提言(2023年)は、12歳くらいから、本人だけで医師と話す場面を設けることを勧めています。親の前では言いにくい気持ちもあるため、診察の一部を本人だけで話せるよう、主治医に頼んでみてもよいでしょう。

相談の中身は、続けるかやめるかの二択だけではありません。打つ時間帯や注入器、打ち方の見直しで続けやすくなることがあります。週1回型の製剤が話題になることもありますが、承認されている病気が限られています。日本小児内分泌学会は、1年の伸びが2cm未満になったときは治療をやめることを検討する基準として示しており、骨年齢や伸びの記録から、残りの治療期間の見通しを聞くこともできます。

出典 [7] [8]

やめると決めたら、何を確かめておく?

まだ伸びる時期にやめた場合は、その子本来のペースで伸びていくと考えられます。やめたあとの伸び方は「成長ホルモン治療をやめたあと、身長はどうなる?」のコラムで説明しています。やめる時期と、その後の通院や身長の測り方は、主治医と決めてから区切りをつけましょう。

成長ホルモン分泌不全症の診療ガイドラインの手引きは、重症の場合は体の代謝を保つ観点から、治療を続けることが望ましいとしています。また、副腎皮質ホルモンなど、成長ホルモン以外のホルモンの薬を使っている場合、そのホルモンは生きていくために欠かせないため、成長ホルモンの注射をやめても、ほかの薬は自己判断で止めないでください。

原因となる病気が見つからない低身長への成長ホルモンの使用は、国内で承認された効能・効果に含まれない適応外使用で、自由診療になります。この場合も、続けるかどうかは、身長の見込みと本人の気持ちをあわせて、担当の医師と相談して決めましょう。

出典 [9] [10] [11]

保護者の気持ちは、どう整理する?

長く注射を支えてきた保護者にとって、「やめたい」という言葉は、これまでの努力を否定されたように感じられることがあります。日本小児科学会の提言も、慢性の病気がある子の保護者は、自己管理や決定の役割を子どもに移していくことに戸惑いを感じやすいと述べています。

保護者の不安や迷いも、主治医に伝えてかまいません。本人と保護者それぞれの考えを聞いてもらうことで、家族の中だけでは見えなかった選び方が見つかることがあります。

本人が続けると決めた場合も、やめると決めた場合も、その選択を尊重する姿勢を言葉で伝えましょう。「自分で考えて決めた」という経験は、これから大人になって自分の健康を管理していくうえでの土台になります。日本小児科学会の提言も、患者が自分で健康を管理し、自分で決めて意思を伝えられるよう、早いうちから支えることを求めています。

出典 [7]

思春期の子の「やめたい」についてよくある質問

Q. 本人がやめたいと言うなら、すぐにやめてもよいですか?

A. 自己判断でやめる前に、主治医に相談してください。病気によっては続けたほうがよい理由があり、ほかの薬を使っている場合はそれを止めてはいけないこともあります。

Q. 「やめたら後悔するよ」と言ってもよいですか?

A. 脅すような言い方は、本人が本音を話しにくくなります。やめた場合の見通しは、主治医から事実として説明してもらうほうが受け止めやすくなります。

Q. 一度やめた治療を、また始めることはできますか?

A. 保険診療では、病気ごとの基準や骨端線の状態などから主治医が判断します。やめる前に、再開の可能性についても聞いておきましょう。

まとめ

思春期の「やめたい」は珍しいことではなく、痛み、友だちの目、時間の縛り、効果の実感など、理由はさまざまです。まず理由を聞き、本人も加わって主治医と方法を見直しましょう。ノビケアで治療を受けている方も、本人の気持ちや続けにくさについてはいつでもご相談いただけます。

出典 [12]

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この記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。

参考にした資料

  1. Endocrine「Quality of life and treatment burden of children receiving daily growth hormone treatment in Greece」(Christoforidis A ほか、2025年、ギリシャの子ども250人と保護者、PMC)
  2. Frontiers in Endocrinology「Discomfort towards peers causes therapy-related stress in children and adolescents on daily rhGH therapy」(Corica D ほか、2025年、イタリアで毎日型の治療を受けていた70人、PMC)
  3. Hormone Research in Paediatrics「Identifying Potentially Modifiable Factors Associated with Treatment Non-Adherence in Paediatric Growth Hormone Deficiency: A Systematic Review」(Graham S ほか、2018年、PubMed)
  4. 厚生労働省 こころもメンテしよう「話を聞くときのポイント」
  5. 日本小児内分泌学会「小児期発症内分泌疾患の成人への移行期医療に関する提言」(PDF)
  6. PLoS One「Non-compliance with growth hormone treatment in children is common and impairs linear growth」(ニュージーランドで成長ホルモン治療を受けていた子ども177人の全国調査、2011年、PubMed)
  7. 日本小児科学会 移行支援に関する提言作成ワーキンググループ「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人移行支援を推進するための提言」(日本小児科学会雑誌127巻1号、2023年、PDF)
  8. 日本小児内分泌学会「成長ホルモンとは」
  9. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会(厚生労働科学研究班・日本内分泌学会)「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」(日本内分泌学会雑誌 Vol.99 Suppl.、2023年7月、J-STAGE、PDF)
  10. 日本内分泌学会「副腎皮質機能低下症患者さんのための災害時マニュアル」(PDF)
  11. ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
  12. ノビケア「お問い合わせ」