成長ホルモン治療読む時間 約6分
子どもが自分で注射できるのは何歳から?少しずつ任せる段階と見守り方
公開日:2026年10月5日 更新日:2026年10月5日
成長ホルモンの注射を何歳から自分で打てるかについて、決まった年齢はありません。添付文書では、十分な練習のあとに本人が正しく打てることを確かめたうえで、医師の指導のもとで自己注射を行うこととされています。準備や記録など、できる手順から少しずつ任せ、本人が打つようになってからも保護者が見守ることが大切です。
子どもが自分で打ってよいのは、何歳から?
成長ホルモンの治療では、医療機関で注射の方法を教わり、家で保護者や本人が打ちます。日本内分泌学会などの診療ガイドライン(2023年版)の治療の手引きにも、自己注射が認められているので、患者さんか親に皮下注射の方法を教え、自宅で注射を行うと書かれています。だれが打つかの年齢の決まりはありません。
週1回型の製剤の添付文書では、自己注射について、打ち方を十分に練習したあと、本人が正しく打てることを確かめたうえで、医師の管理と指導のもとで行うこととしています。使い終わった器具の安全な捨て方を指導することや、取扱説明書を読むよう指導することも書かれています。
参考までに、同じように毎日の注射が続くインスリン治療について、日本糖尿病学会のサイトで公開されている小児・思春期糖尿病のガイドライン(2024年)は、発症した時期や個人の力によって差はあるものの、6歳ごろから自己注射ができるようになるとしています。ただし、薬も注射器も違うため、成長ホルモンにそのまま当てはまるわけではありません。何歳から任せるかは、本人の理解や気持ちを見ながら主治医と相談してください。
年齢によって、どんなかかわり方が勧められている?
同じ糖尿病のガイドラインは、年齢ごとの支援の考え方を次のように示しています。乳幼児期は家族が管理を引き受け、子どもの興味に合わせてできる手順を部分的に手伝わせる。学童期は、本人の自発性や努力に目を向けて受け止め、家族と一緒に解決策を考えながら、本人が管理できる範囲を少しずつ広げていく。思春期は、本人の意思決定を尊重し、自立したあとも助言や支えを求めてよいと伝えておく、というものです。
日本小児内分泌学会の移行期医療に関する提言は、10〜12歳ごろからは本人にも正しい病名や病気の説明をすべきだとしています。日本小児科学会の提言(2023年)も、診断の早い時期から、本人が自分で健康を管理し、自分で決められるよう計画的に支援し、そのためのプログラムを10代の早いうちから始めることを勧めています。注射を自分で打つことは、こうした自立への準備の一つと考えられます。
どんな順番で任せていくとよい?
手順を一度に全部任せるのではなく、本人ができることから一つずつ増やしていく方法があります。下の表は一例です。進み方には個人差があり、途中で前の段階に戻ってもかまいません。どの手順を任せてよいかは、主治医や看護師に確認してください。
| 段階 | 本人がすること | 保護者がすること |
|---|---|---|
| 1 見て知る | 打つ様子を見る、打つ場所を選ぶ、記録表に印をつける | 注射の準備から片づけまで、すべて行う |
| 2 準備を手伝う | 手を洗う、道具を並べる、打つ場所を消毒する | 針をつける、量を合わせる、注射する |
| 3 器具を扱う | 針をつける、量を合わせる | 合わせた量を一緒に確かめ、注射する |
| 4 見守りの中で打つ | 保護者がそばにいるところで、自分で打つ | 手順と量をその場で確かめる |
| 5 ひとりで打つ | 準備から片づけ、記録まで自分で行う | 記録を週に何回か一緒に見る |
任せる前に、確かめておきたいことは?
本人が打つようになる前に、次のことができるかを家族で確かめておきましょう。医療機関で本人が実際に打つところを見てもらい、手順を一緒に確認してもらうと安心です。
- 手順を、自分の言葉で順番に説明できる
- 主治医に指示された量を、器具で正しく合わせられる
- 打つ場所を順番に替え、前回と同じところを避けられる
- 針は毎回新しいものを使い、使い終わった針を決められた容器に入れられる
- 打ち忘れたときや、体調が悪いときに、だれに相談するか分かっている
- 痛い、赤くなったなど、気になることを家族に話せる
本人が打つようになると、打ち忘れは増える?
ドイツで成長ホルモン治療を受けていた子ども103人を調べた研究(Hormone Research in Paediatrics誌、2015年)では、薬の受け取りの記録から実際に使った量を推定しました。思春期の子は思春期前の子より、本人が自分で打っている子は保護者が打っている子より、決められたとおりに打てている割合が低い結果でした。思春期の子の67%が、週に1回以上打ち忘れていました。
研究者は、思春期、とくに本人が自分で打つようになったときに、打ち忘れを防ぐ工夫が必要だとしています。イタリアの研究(Frontiers in Endocrinology誌、2025年)では、平均11.7歳の子ども70人のうち、本人が主に打っていたのは22.9%でした。自分で打つようになっても、保護者がまったく手を離すのではなく、記録を一緒に見るなど、ゆるやかな見守りを続けるとよいでしょう。打ち忘れたときの対応は「成長ホルモン注射を打ち忘れたら」のコラムで説明しています。
見守るときは、どんな声かけがよい?
糖尿病のガイドラインは、子どもが自立に必要な力を身につけるには、安心できる環境で成功体験を重ね、困ったことを乗り越えて自信をもつ過程が必要だとしています。また、家族の中で役割について合意ができ、支える姿勢で接することが治療を続けることにつながる一方、家族内の言い争いは管理の悪化と関係していたと紹介しています。
打ち忘れに気づいたときも、責めるより「どうしたら忘れにくくなるかな」と一緒に考えるほうが、次につながりやすくなります。国立成育医療研究センターのチャイルドライフサービス室は、注射のあとに、できたことを認める声かけを勧めています。うまく打てた日だけでなく、自分で記録をつけられた日も、言葉にして返してあげましょう。
本人が「やっぱり打ってほしい」と言ったら?
いったん自分で打てるようになっても、テストの時期や体調の悪いとき、気持ちが落ち込んでいるときなどに、「今日は打ってほしい」と言うことがあります。前の段階に戻るのは失敗ではありません。しばらく保護者が打ち、落ち着いたらまた少しずつ任せていけば十分です。
注射そのものをやめたいと言うときは、理由をていねいに聞き、主治医にも相談しましょう。思春期の子との話し合い方は「思春期の子が「注射をやめたい」と言ったら」のコラムで、家族の分担の工夫は「毎日の注射を続ける家族の負担を軽くするには」のコラムで紹介しています。
ノビケアで治療を受けている場合は?
ノビケアで治療を受けている方も、本人に注射を任せていくときの進め方で迷うことがあれば、ご相談ください。治療を始めるかどうか迷っている段階では、医師による無料相談(ビデオ通話)をご利用いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。お薬の処方を検討する2回目には、お子さまにも参加していただきます。予約は公式LINEから受け付けています。
子どもの自己注射についてよくある質問
Q. 小学校低学年ですが、本人が「自分で打ちたい」と言っています。
A. やってみたい気持ちは大切にしたいところです。最初は打つ場所を選ぶ、記録をつけるなど、安全にできる手順から任せ、自分で打つかどうかは主治医と相談しましょう。
Q. 修学旅行で、本人ひとりで打てるか心配です。
A. 宿泊行事で注射を続けるか休むかは、前もって主治医と決めておきます。続ける場合は、出発前の数週間、保護者の見守りのもとで本人が打つ練習を重ねておくと安心です。
Q. 量を合わせる作業も本人に任せてよいですか?
A. 量の間違いは、打ちすぎや打ち足りなさにつながります。本人が合わせる場合も、しばらくは保護者が一緒に確かめましょう。
出典 [1]
まとめ
子どもが自分で注射できる年齢に決まりはなく、本人が正しく打てることを確かめたうえで、医師の指導のもとで少しずつ任せていきます。準備や記録などできる手順から始め、自分で打つようになってからも、記録を一緒に見るなどの見守りを続けましょう。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会(厚生労働科学研究班・日本内分泌学会)「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」(日本内分泌学会雑誌 Vol.99 Suppl.、2023年7月、J-STAGE、PDF)
- PMDA「ソグルーヤ皮下注 添付文書」(2026年6月改訂 第4版)
- PMDA「エヌジェンラ皮下注ペン 添付文書」(2026年7月改訂 第3版)
- 日本糖尿病学会掲載「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」Ⅴ.患児・家族の支援(社会・日常生活、年齢時期別の支援、PDF)
- 日本小児内分泌学会「小児期発症内分泌疾患の成人への移行期医療に関する提言」(PDF)
- 日本小児科学会 移行支援に関する提言作成ワーキンググループ「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人移行支援を推進するための提言」(日本小児科学会雑誌127巻1号、2023年、PDF)
- 環境省「在宅医療廃棄物の処理に関する取組推進のための手引き」(平成20年3月、PDF)
- Hormone Research in Paediatrics「Low Treatment Adherence in Pubertal Children Treated with Thyroxin or Growth Hormone」(Lass N・Reinehr T、2015年、ドイツで成長ホルモン治療を受けていた子ども103人ほか、PubMed)
- Frontiers in Endocrinology「Discomfort towards peers causes therapy-related stress in children and adolescents on daily rhGH therapy」(Corica D ほか、2025年、イタリアで毎日型の治療を受けていた70人、PMC)
- 国立成育医療研究センター チャイルドライフサービス室「お子さんが注射を受けることになったとき」
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- ノビケア「お問い合わせ」