成長ホルモン治療読む時間 約6分
中高生の子と治療を決めるには:本人への説明と、本人の気持ちを聞く方法
公開日:2026年10月5日 更新日:2026年10月5日
中高生の治療は、毎日の注射などを本人が自分で続けていくことが多く、本人が理由を理解し、納得して始めることが大切です。治療の目的や限界、毎日の負担、残りの時間を、本人にも分かる言葉で医師から直接説明してもらいましょう。家族は答えを急がず、まず本人の気持ちを聞き、決めたあとも話し合いを続けていきましょう。
中高生では、なぜ本人の考えがとくに大切?
日本医師会の医の倫理の資料は、子どもが十分に判断できない場合でも、理解できるように分かりやすく説明し、本人の理解と納得(インフォームド・アセント)を得ることを求めています。そして、中学校を卒業した、または16歳以上で判断する力がある場合は、本人と保護者の両方の同意を得ることとしています。
日本小児科学会の「医療における子ども憲章」も、子どもには自分の健康を守るための情報を分かりやすく説明してもらい、自分の考えや意見を伝える権利があるとしています。希望どおりにならない場合は、その理由を分かりやすく説明してもらい、納得できなければさらに意見を伝える機会があるとも書かれています。
子どもの成長ホルモン治療の続けにくさに関わる要因をまとめた研究(Hormone Research in Paediatrics誌、2018年)では、病気や治療についての理解が足りないことが、変えられる可能性のある要因の一つに挙げられています。中高生は、注射を自分で打つようになることも多い年代です。本人が納得していることは、続けていくための土台にもなります。
本人に説明しておきたいことは?
中高生には、大人と同じように、治療の良い面と負担の両方を伝えましょう。次のような点は、医師から本人に直接説明してもらうと受け止めやすくなります。
- 診断名と、何のための治療なのか
- 保険診療か、原因となる病気が見つからない低身長への適応外使用(自由診療)か
- 毎日の注射を何年続けるのか、旅行や部活のときはどうするのか
- 効果には個人差があり、最終的な身長を約束できる治療ではないこと
- 残りの時間:日本小児内分泌学会は、骨年齢で男子15歳・女子14歳以上の骨端線が閉じかけた状態や、思春期が進んで1年の伸びが2cm以下になった場合は、ほとんど効果がみられないとしています
- 主な副作用と、治療中に受ける検査
- 効果を見直す時期と、やめる目安
- 治療をしないで経過を見るという選択肢もあること
説明は、どう伝えればよい?
米国で成長ホルモン治療について話し合った保護者と8〜14歳の子どもを調べた研究(Families, Systems, & Health誌、2025年)では、保護者が「子どもと話し合った」と答えていても、32%の子どもはその話し合いを覚えていませんでした。研究者は、検査の結果や治療の選択肢について、くり返し話すことを勧めています。同じ研究グループの聞き取り調査(Endocrines誌、2022年)でも、年齢に合った言葉で何度も話すこと、動画や実際の器具を見せるなど、いくつかの方法で伝えることが勧められています。
一度の説明で全部を理解してもらおうとせず、次のような工夫をしてみましょう。
- 医療機関でもらった資料を、本人にも渡して読んでもらう
- 家での話し合いは短く区切り、何回かに分ける
- 本人に、医師に聞きたいことを書き出してもらう
- 注射の器具を見たり、打ち方の説明を受けたりする機会があれば、本人もいっしょに参加する
本人の気持ちは、どう聞く?
厚生労働省のこころの健康に関するサイトは、子どもの話を聞くときは、すぐに助言をするより、まず「そうなんだ」と気持ちを受け止め、子ども自身の感じ方を理解するつもりで聞くことを勧めています。「はい・いいえ」で終わらない聞き方も勧められています。
親が治療に期待していると、本人は「やりたくない」と言いにくくなります。親の考えを先に伝えるより、本人の考えを先に聞きましょう。次のような質問が手がかりになります。
- 「今の背の高さのこと、自分ではどう思っている?」
- 「先生の説明を聞いて、いちばん気になったのはどこ?」
- 「毎日の注射について、どう感じる?」
- 「治療をしたら、どんなことが変わると思う?」
- 「決めるまでに、あと何を知りたい?」
出典 [8]
診察で、本人が話せるようにするには?
日本小児科学会の移行支援に関する提言(2023年)は、12歳くらいから、本人だけで医師と話す場面を設けることを勧めています。親の前では言いにくい不安や本音もあるため、診察の一部を本人だけで話せるように、医師に頼んでみてもよいでしょう。
診察では、医師が本人に直接質問できるよう、保護者は先に答えないようにすることも大切です。思春期の子にとって、体の診察や体の変化の話は恥ずかしいものです。「医療における子ども憲章」は、子どもの体や病気のことは本人の大切な情報で、ほかの人に伝える必要があるときは本人に確認するとしています。学校の先生や親せきに治療のことを伝えるかどうかも、本人と相談して決めましょう。
親子で考えが違うときは?
本人は治療を望んでいるのに親が迷っている場合も、親は始めたいのに本人が乗り気でない場合もあります。どちらの場合も、その場で結論を出そうとせず、それぞれが何を心配し、何を期待しているのかを言葉にしてみましょう。違いが分かれば、医師に聞くべきことがはっきりします。
毎日の注射は、本人の協力がなければ続けることが難しい治療です。本人が納得していないまま始めると、打たない日が増えたり、親子の関係がぎくしゃくしたりすることがあります。一方で、骨端線が閉じたあとは成長ホルモン治療で身長を伸ばす効果はないため、考える時間は無制限ではありません。「いつまでに、何を確かめて決めるか」を、本人も交えて医師と決めておくと、焦らずに話し合えます。
本人の希望どおりにならない結論になった場合は、その理由をきちんと説明し、本人がさらに意見を言える機会を残しておきましょう。
決めたあとも、話し合いは続く?
治療を始めたあとも、本人の気持ちは変わることがあります。効果の見直しの時期など、区切りごとに「続けてみてどう?」と聞き、本人が意見を言い直せるようにしておきましょう。途中で「やめたい」と言われたときの話し合い方は「思春期の子が「注射をやめたい」と言ったら」、注射を本人に少しずつ任せていく方法は「子どもが自分で注射できるのは何歳から?」のコラムで説明しています。
治療をしないと決めた場合も、身長の記録を続けておくと、あとで本人が考え直したくなったときの材料になります。ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話)は、1回目は保護者の方だけでもご相談いただけます。お薬の処方を検討する2回目には、お子さまにも参加していただき、医師から本人にも説明します。相談の時点で、治療を受けると決める必要はありません。
出典 [10]
中高生と治療を決めることについてよくある質問
Q. 本人が「親が決めて」と言います。
A. 決めることに自信がないのかもしれません。親が決めるとしても、本人が分からないことや不安なことを聞き、「決めたことはいつでも見直せる」と伝えておきましょう。
Q. 本人が治療を強く望んでいますが、効果が分からないのが心配です。
A. 期待している伸びが治療で得られるものかどうか、医師から本人に直接説明してもらいましょう。期待と現実の差を本人が理解したうえで決めることが大切です。
Q. 本人がまだ中学1年生です。説明しても分かるでしょうか。
A. 年齢や理解に合わせて言葉を選べば、多くのことは理解できます。日本医師会の資料も、判断する力が十分でない場合でも、分かりやすく説明して本人の納得を得ることを求めています。
まとめ
中高生の治療は、本人が理由を理解し、納得して始めることが続けていくための土台になります。目的と限界、毎日の負担、残りの時間を医師から本人に説明してもらい、家族は本人の気持ちを先に聞きましょう。決めたあとも、区切りごとに話し合いを続けていきましょう。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 日本医師会「医の倫理の基礎知識 2018年版【医師と患者】B-3.小児の場合のインフォームド・コンセント」
- 日本小児科学会「医療における子ども憲章」(2022年3月、PDF)
- Hormone Research in Paediatrics「Identifying Potentially Modifiable Factors Associated with Treatment Non-Adherence in Paediatric Growth Hormone Deficiency: A Systematic Review」(Graham S ほか、2018年、PubMed)
- 日本小児内分泌学会「成長ホルモンとは」
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- Families, Systems, & Health「Correlates of Youth Involvement in Decision Making about Growth Hormone Treatment」(Miller VA ほか、2025年、米国の保護者44人と8〜14歳の子ども30人、PMC)
- Endocrines「Perceptions of Youth and Parent Decision-Making Roles Regarding Recombinant Human Growth Hormone Treatment」(Fremont ER ほか、2022年、米国の8〜14歳の子ども22人と保護者22人への聞き取り、PMC)
- 厚生労働省 こころもメンテしよう「話を聞くときのポイント」
- 日本小児科学会 移行支援に関する提言作成ワーキンググループ「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人移行支援を推進するための提言」(日本小児科学会雑誌127巻1号、2023年、PDF)
- ノビケア「お問い合わせ」