成長ホルモン治療読む時間 約6分
治療について夫婦で意見が分かれたら:話し合いの進め方と、いっしょに医師に聞くこと
公開日:2026年10月5日 更新日:2026年10月5日
治療について夫婦の意見が分かれるのは、どちらも子どものことを真剣に考えているからで、めずらしいことではありません。賛成か反対かを先に決めるより、それぞれの心配を書き出し、「何が分かれば決められるか」をはっきりさせると話し合いが進みやすくなります。分からない点は、できれば二人そろって同じ医師に聞き、子ども本人の気持ちも確かめたうえで決めましょう。
夫婦で意見が分かれるのは、よくあること?
成長ホルモン治療は、毎日の注射を長い期間続けることが多い治療です。「できることはしてあげたい」という気持ちと、「毎日注射をさせるのはかわいそう」「副作用が心配」という気持ちは、どちらも子どもを思う気持ちから出てきます。
片方が情報を集めて前向きになり、もう片方は説明を十分に聞いていないまま慎重になる、という形で意見が分かれることもあります。意見の違いの多くは、持っている情報の違いや、何を大事にしているかの違いから生まれます。まずは相手の考えを否定せずに聞くことから始めましょう。家族全体での話し合い方は「成長ホルモン治療を受けるか迷ったら」のコラムでも紹介しています。
意見が分かれやすいのは、どんな点?
低身長の治療で、夫婦の考えが分かれやすいのは次のような点です。自分たちがどこで意見が違うのかを確かめるだけでも、話し合いの焦点が見えてきます。
- 治療でどのくらいの効果が見込めるのか、期待してよいのか
- 毎日の注射を、誰がどのように続けるのか
- 副作用や、治療中の検査・通院の負担
- 保険診療の対象になるのか、自由診療(適応外使用)になるのか
- 治療を続ける期間と、費用の総額の見込み
- 今すぐ始めるか、記録をとりながら様子を見るか
- 子ども本人が治療をどう思っているか
話し合いは、どう進める?
最初に、それぞれが心配していることや期待していることを、別々に紙に書き出してみましょう。そのうえで並べてみると、「事実を確かめれば解決すること」と「価値観の違いで、話し合って決めること」が分けやすくなります。
事実の問題は、医師に聞けば答えが分かることが多くあります。下の表のように、心配ごとを医師への質問に置きかえておくと、受診のときに確かめやすくなります。価値観の違いは、どちらが正しいかではなく、子どもにとって何を大切にしたいかを話し合いましょう。
| 夫婦の心配の例 | 医師に聞けること |
|---|---|
| 本当に効くのか分からない | この子の診断名と、治療で期待できることの見込み |
| 副作用が心配 | 考えられる副作用と、治療中にどんな検査をするか |
| 毎日続けられるか不安 | 注射の手順、打ち忘れたときの対応、続けるための工夫 |
| 始めたらやめられないのでは | 効果を見直す時期と、やめる目安 |
| 今でなくてもよいのでは | 様子を見る場合に、いつまでに何を確かめればよいか |
話し合う前に、確かめておきたい事実は?
まず、お子さんの低身長の原因が分かっているか、保険診療の対象になる病気かどうかを確かめましょう。小児慢性特定疾病情報センターは、成長ホルモン治療が保険診療で行われる病気や、医療費助成の対象になる基準を示しています。保険診療の対象になりうる場合は、自由診療より先に、その検査や治療を検討します。
原因となる病気が見つからない低身長への成長ホルモンの使用は、承認された使い方ではない適応外使用で、自由診療になります。日本小児内分泌学会は、承認された病気以外の低身長に使っても効果が得られないことが多く、有害なことが起こる可能性もあるとしています。医薬品副作用被害救済制度の対象にならないことも含めて、二人で同じ情報を確認しておきましょう。くわしくは「自由診療の成長ホルモン治療とは?」のコラムで説明しています。
また、骨端線が閉じて伸びが止まっている場合は、成長ホルモン治療はできません。考える時間がどのくらいあるかは、年齢や思春期の進み方、骨の成熟によって一人ひとり違います。
いっしょに医師に聞くには、どうすればよい?
説明を片方だけが聞いて、家でもう片方に伝えると、言葉の受け取り方の違いから、かえって意見がすれ違うことがあります。できれば二人そろって、同じ説明を聞くのがよいでしょう。そろわないときは、聞けなかったほうの質問を前もって預かっておきます。
国立がん研究センターのがん情報サービスは、病気の説明を受けるときの工夫として、聞きたいことを前もってメモしておく、時間が限られるときは優先順位をつける、「私の理解で合っていますか」と確かめる、時間が足りなければ別の機会を設けられるか尋ねる、といった方法を紹介しています。がんの患者向けの情報ですが、低身長の相談でも役に立つ考え方です。
二人でいっしょに聞いておきたい質問の例です。
- この子の身長が低い原因について、今わかっていることは何か
- 保険診療の対象になる可能性はあるか。そのために必要な検査はあるか
- 治療をした場合としない場合で、それぞれどんな経過が考えられるか
- 副作用と、治療中に気をつけるサイン
- 効果を見直す時期と、やめる目安
- 今決めない場合、次にいつ何を確かめればよいか
出典 [4]
子ども本人の気持ちは、どこで聞く?
注射を受けるのは子ども本人です。日本小児科学会の「医療における子ども憲章」は、子どもには自分の健康についての情報を分かりやすく説明してもらい、気持ちや意見を伝える権利があるとしています。夫婦の話し合いが進んできたら、年齢に合わせた言葉で本人に説明し、考えを聞きましょう。
米国で成長ホルモン治療を考える家族を調べた研究(2025年)では、保護者の心配が強いと、子どもが決定に関わる度合いが低くなる傾向が見られました。夫婦の意見の違いを子どもに背負わせないよう、「お父さんとお母さんも一緒に考えているところだよ」と伝え、どちらの味方かを選ばせないようにしましょう。中高生と治療を決めるときの話し合い方は「中高生の子と治療を決めるには」のコラムで紹介しています。
それでも意見がまとまらないときは?
すぐに結論を出せないときは、「次の受診まで記録をとって、そのときにもう一度話す」のように、話し合う時期を決めておく方法があります。「まだ決めない」ことも一つの選択ですが、そのあいだも身長の記録は続けておきましょう。
治療を始める方向で話がまとまっても、片方だけに注射や記録の負担が偏ると、あとで不満が出やすくなります。始める前に、誰がいつ注射を担当するか、外泊や行事の日はどうするかを決めておきましょう。家族の分担の工夫は「毎日の注射を続ける家族の負担を軽くするには」のコラムで紹介しています。
診断や治療方針について別の医師の意見も聞きたいときは、セカンドオピニオンを受ける方法があります。別居や離婚をしている場合に、治療を始めるときもう一方の親の同意が必要かどうかは、受診する医療機関に確認してください。
医師に相談するときは?
話し合いのために医師の説明を聞きたいときは、成長の記録を持って小児科や専門の外来に相談しましょう。ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話)でも、お手元の記録を見ながらご相談いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。お薬の処方を検討する2回目には、お子さまにも参加していただきます。予約は公式LINEから受け付けています。
出典 [7]
夫婦で意見が分かれたときによくある質問
Q. 片方が強く反対しているときは、治療を始めないほうがよいですか?
A. 反対の理由によります。副作用や効果への心配なら、医師の説明で解消することもあります。注射を誰が担うかなど生活の心配なら、家族の分担を一緒に考える必要があります。理由を具体的に聞いてから考えましょう。
Q. 子どもの前で意見がぶつかってしまいました。
A. あとで子どもに「お父さんとお母さんは、あなたのことを大事に思って話していたんだよ」と伝えましょう。治療のことを子どもが自分のせいだと感じないよう、話し合いはできるだけ子どものいないところで行うと安心です。
Q. 祖父母が治療に反対しています。
A. 治療を決めるのは、保護者と子ども本人、そして医師との話し合いです。祖父母の心配にも耳を傾けつつ、まずは夫婦で考えをそろえることを優先しましょう。
まとめ
夫婦で意見が分かれたら、賛成か反対かより先に、それぞれの心配を書き出し、事実の問題と価値観の問題を分けましょう。保険診療の対象かどうかなどの事実は、二人そろって医師に確かめるのが近道です。子ども本人の気持ちも聞いたうえで、家族で納得できる形を探してください。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 小児慢性特定疾病情報センター「成長ホルモン治療について」
- 日本小児内分泌学会「成長ホルモンとは」
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「医療者と話し合うときのヒント」
- 日本小児科学会「医療における子ども憲章」(2022年3月、PDF)
- Families, Systems, & Health「Correlates of Youth Involvement in Decision Making about Growth Hormone Treatment」(Miller VA ほか、2025年、米国の保護者44人と8〜14歳の子ども30人、PMC)
- ノビケア「お問い合わせ」