ノビケア トップ > コラム > 成長と遺伝

成長と遺伝読む時間 約7分

「どっちに似たのか」と夫婦で責め合ってしまう:遺伝の考え方と、二人で子どもを支える話し方

公開日:2026年10月5日 更新日:2026年10月5日

身長には遺伝が大きく関わりますが、たくさんの遺伝の違いが少しずつ組み合わさって決まるもので、「父親似」「母親似」とどちらか一方のせいにできるものではありません。両親の身長から計算する目安にも、二人の身長が同じように使われます。責め合いをやめ、「これから何を確かめるか」を二人で話すことが、子どもを支えることにつながります。

「どっちに似たのか」と言い合ってしまうのは、なぜ?

子どもの身長が気になると、どうして小さいのか理由を探したくなります。身長は遺伝の影響が大きいと聞くと、その理由を夫婦のどちらかに求めてしまうことがあります。祖父母や親せきから「あちらの家系に似たのね」と言われ、言い合いのきっかけになることもあるでしょう。

責める言葉の裏には、多くの場合、「子どもに申し訳ない」「自分のせいかもしれない」という不安や罪悪感があります。相手を責めているようで、実は二人とも同じように心配している、ということも少なくありません。親が自分を責めてしまう気持ちについては、「「親の自分に似て背が低い」と責めてしまうとき」のコラムで説明しています。

身長の遺伝は、どちらか一方から来るもの?

理化学研究所などの研究グループは、身長の個人差の8割程度は遺伝的な要因によって生じていると報告されていることを紹介しています。同じ発表では、日本人の身長に関わる遺伝的な変異が573見つかったとされています。身長は1つの遺伝子で決まるのではなく、たくさんの遺伝的な違いが少しずつ関わって決まると考えられています。

子どもは、父親と母親の両方から遺伝子を半分ずつ受け継ぎます。どの組み合わせを受け継ぐかは偶然で決まるため、きょうだいでも身長が違うことがあります。「どちらの家系のせい」と一方に決められるものではありません。

日本小児内分泌学会の英文誌に掲載された論文で示されている、両親の身長から子どもの大人の身長の目安を計算する式にも、父親と母親の身長が同じ重みで入っています。さらにこの目安には、男の子で上下9cm、女の子で上下8cmほどの幅があるとされています。くわしくは「両親の身長から子どもの最終身長を予測する計算式は?」のコラムで説明しています。

出典 [1] [2]

身長は、遺伝だけで決まるの?

遺伝のほかにも、身長にはさまざまなことが関わります。日本小児内分泌学会は、ホルモンや慢性の病気、栄養、睡眠、運動、心理的な状態なども、身長に関わる要因として挙げています。

同じ学会によると、子どもの身長が低い原因の多くは、両親も背が低いなどの遺伝や体質によるものです。ただ、病気が見つかることもあるため、「家族に似ているだけ」と決めつけず、伸び方を確かめておくことが大切です。まれに、親から受け継がれる遺伝子の変化が低身長の原因になっていることもありますが、それも親のどちらかの責任ではありません。

出典 [3]

責め合いは、子どもにどう伝わる?

子どもは、親が思っている以上に大人の会話を聞いています。「お父さんに似たから」「お母さんの家系のせい」という言葉を耳にすると、子どもは自分の身長が家族の争いの原因になっていると受け止めてしまうことがあります。自分の体を「よくないもの」と感じるきっかけにもなりかねません。

厚生労働省は、家族で子どもと向きあうときは、話をよく聴く姿勢をもち、親としての意見や思いを押しつけないことが大切だとしています。身長のことを話し合うのは子どもがいない場で、子どもの前では「あなたはあなたのペースで大きくなっているよ」と、二人が同じ態度で接するようにしましょう。

出典 [4]

二人で話すときは、どうすればよい?

身長の話になると言い合いになりやすい場合は、話し方の決まりを先に決めておくと、落ち着いて話しやすくなります。次の点を参考にしてみてください。

出典 [5]

話し合う前に、そろえておきたいことは?

言い合いを、子どものための作業に変える方法もあります。たとえば、母子健康手帳と学校の記録を集めて成長曲線に描く、両親それぞれの身長を測り直す、両親が子どものころに背が低かったか、思春期が遅かったかを思い出しておく、といったことです。

両親の思春期の時期は、子どもの伸び方を考える手がかりになることがあります。「親の思春期の時期は子どもに似る?」のコラムで説明しています。役割を分けて準備すると、「二人で子どものことを調べている」という感覚をもちやすくなります。

医師には、いっしょに何を聞けばよい?

できれば二人で、または片方が受診するときも事前に質問をそろえておくと、同じ説明を共有できます。たとえば、「体質による小柄さと考えてよいか」「ほかに調べたほうがよいことはあるか」「家族の身長や思春期の時期で伝えておくことはあるか」などです。

遺伝のことで悩みが強いときは、遺伝カウンセリングという相談の場もあります。日本遺伝カウンセリング学会は、専門家が科学的根拠にもとづく情報を分かりやすく伝え、心理面や社会面も含めて支援するとしています。必要かどうかは、まず主治医に相談してください。治療について意見が分かれたときの話し合い方は、「治療について夫婦で意見が分かれたら」のコラムで紹介しています。

出典 [6]

言い合いが激しくなってしまうときは?

話し合いのつもりが、大声でどなる、相手を人前でばかにする、何を言っても無視して口をきかない、といった状態になっていませんか。内閣府は、こうした言動を、配偶者からの暴力のうち精神的なものの例として挙げています。

一人で抱えこまず、外の相談先を頼ってください。「#8008」(DV相談ナビ)に電話をすると、近くの配偶者暴力相談支援センターにつながります。子育ての悩みとして話したいときは、市区町村のこども家庭センターや、こども家庭庁の「親子のための相談LINE」も利用できます。

出典 [7] [8] [9] [10]

祖父母や親せきに家系のことを言われたら?

祖父母や親せきから「うちの家系は背が高いのに」と言われ、夫婦の言い合いにつながることもあります。そのようなときは、それぞれ自分の親には自分から伝える、と二人で決めておくと、角が立ちにくくなります。

伝えるときは、「身長は両方の家系から少しずつ受け継ぐもので、どちらのせいでもないそうです。子どもの前では言わないでほしい」と、事実とお願いを短くまとめましょう。親せきへの返し方は「祖父母や親せきに「小さいね」と言われたら」のコラムでも紹介しています。

出典 [1]

伸び方を一緒に確かめるには?

身長の伸び方を医師と一緒に見ることで、「どちらに似たか」ではなく「今どう伸びているか」に目を向けやすくなります。成長曲線で線を下向きに横切ってくる、1年の伸びが小さいといったときは、記録を持って小児科で相談しましょう。

ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話)でも、お手元の記録を見ながらご相談いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。お薬の処方を検討する2回目には、お子さまにも参加していただきます。予約は公式LINEから受け付けています。

出典 [3] [11]

夫婦で身長のことを責め合ってしまうときによくある質問

Q. 背の低いほうの親に似たのは、見た目で分かります。

A. 見た目が似ていても、身長に関わる遺伝の違いは両親の両方から受け継いでいます。どの組み合わせになるかは偶然で、片方の責任ではありません。

Q. 背の高いほうの親が「自分の家系は高いのに」と言います。

A. 両親の身長からの目安にも幅があり、同じ両親から生まれたきょうだいでも身長は違います。一つの言葉で家族が傷つくことがあるので、話し方の決まりを二人で決めておきましょう。

Q. 子どもに「どっちに似たの?」と聞かれました。

A. 「お父さんとお母さんの両方から、いろいろなところを少しずつもらっているよ」と伝えてみてください。そのうえで、子どもが身長を気にしていないか、気持ちを聞いておきましょう。

出典 [1] [2]

まとめ

身長には遺伝が大きく関わりますが、両親の両方から受け継いだたくさんの遺伝の違いが組み合わさった結果で、どちらか一方のせいではありません。原因探しをやめ、記録をそろえて伸び方を二人で確かめることが、子どもを支える一歩になります。言い合いが激しくなるときは、外の相談先を頼ってください。

出典 [1] [3]

お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。

公式LINEで無料相談を予約する

両親の身長から、大人の身長の目安を計算する

この記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。

参考にした資料

  1. 理化学研究所「日本人の身長に関わる遺伝的特徴を解明-19万人の解析から日本人の身長に関わる遺伝的要因の謎に迫る-」(2019年10月2日)
  2. 日本小児内分泌学会 Clinical Pediatric Endocrinology「Target Height and Target Range for Japanese Children: Revisited」(Ogata T ほか, 2007)
  3. 日本小児内分泌学会「低身長」
  4. 厚生労働省 こころもメンテしよう「家族で子どもと向きあうポイント」(話を聴く姿勢、親としての意見や思いを押しつけない)
  5. 厚生労働省 こころもメンテしよう「話を聞くときのポイント」
  6. 日本遺伝カウンセリング学会「遺伝カウンセリングQ&A」
  7. 内閣府男女共同参画局「暴力の形態」(精神的なものの例:大声でどなる、人前でばかにする、無視して口をきかない)
  8. 内閣府男女共同参画局「配偶者暴力相談支援センター」(DV相談ナビ #8008)
  9. こども家庭庁「こども家庭センター」
  10. こども家庭庁「『親子のための相談LINE』について」
  11. ノビケア「お問い合わせ」