成長と遺伝読む時間 約6分
身長と遺伝のよくある誤解:「隔世遺伝」「母親の身長で決まる」など
公開日:2026年10月5日 更新日:2026年10月5日
身長は遺伝の影響を強く受けますが、たくさんの遺伝子が少しずつ関わるため、父親か母親のどちらか1人や、祖父母の誰かの身長で決まるものではありません。両親の身長から出す目安は父と母の身長を同じ重さで使い、それでも上下8〜9cmほどの幅があります。遺伝の話だけで安心したり、あきらめたりせず、お子さん自身の伸び方を成長曲線で確かめましょう。
「身長の8割は遺伝」だから、親の身長でほぼ決まる?
理化学研究所の発表(2019年)は、欧米の双子の研究で、身長の個人差の8割程度は遺伝的な要因によって生じていると報告されていることを紹介しています。ただ、これは多くの人の身長のばらつきを説明する割合で、「一人の子の身長の8割が親で決まる」という意味ではありません。
同じ発表では、日本人約19万人の解析で、363のゲノム領域にある609の遺伝的な違いが身長に関わることが分かりました。一つひとつの違いの影響は小さく、たくさんの遺伝子の組み合わせで身長の傾向が決まっていきます。両親から受け継ぐ組み合わせは子どもごとに違うため、同じ両親のきょうだいでも身長に差が出ます。くわしくは「身長はどのくらい遺伝で決まる?」のコラムで説明しています。
同じ発表によると、一つの塩基の違いで身長が2cm近く高くなったり低くなったりする、影響の大きい違いも見つかっています。ただ、こうした違いを持つ人は多くなく、ほとんどの人の身長は、影響の小さいたくさんの違いが積み重なって決まると考えられます。「親のどちらか一人の体質をそのまま受け継ぐ」という見方より、両親それぞれから半分ずつ受け継いだ組み合わせで決まる、と考えるほうが実際に近いでしょう。
出典 [1]
「背は母親の身長で決まる」「男の子は母親に似る」は本当?
日本の子ども向けに示された両親の身長からの目安の式は、男の子が(父の身長+母の身長+13)÷2、女の子が(父の身長+母の身長−13)÷2 です。どちらの式でも、父と母の身長は同じ重さで足し合わされています。13cmを足したり引いたりするのは、大人の男女の平均的な身長の差を調整するためです。
アイルランドで三世代の家族を調べた研究(2012年)でも、体格指数(BMI)は母親の側とのつながりが強く出た一方、身長は母方・父方のどちらの家系とも強い結びつきが見られました。母親の身長だけで子どもの身長が決まる、という話を支える根拠は見当たりません。
式で出した目安には、男の子で上下9cm、女の子で上下8cmほどの幅があります。計算は「両親の身長から子どもの最終身長を予測する計算式は?」のコラムか、計算ツールで確かめられます。
「隔世遺伝」で、祖父母に似て背が高く(低く)なる?
祖父母から受け継ぐ遺伝子は、両親を通して子どもに伝わります。そのため、祖父母の身長の影響は両親の身長にすでに含まれていると考えられ、目安の計算にも祖父母の身長は使いません。祖父母の誰か一人にだけ「似る」と決まるものでもありません。
もう一つ気をつけたいのは、育った時代の違いです。文部科学省の学校保健統計調査では、17歳の平均身長は、調査が始まった昭和23年度に男子160.6cm・女子152.1cmでしたが、令和7年度は男子170.6cm・女子157.9cmです。多くの年齢で、平均身長は平成10年度前後まで上がり、その後は横ばいとされています。祖父母の世代と比べるときは、遺伝だけでなく、栄養や生活環境の違いも大きいことを知っておきましょう。くわしくは「祖父母の身長も子どもの身長に関係する?」のコラムで説明しています。
「親が小さいから遺伝。病院に行かなくてよい」?
日本小児内分泌学会は、子どもの身長が低い原因の多くは、両親も背が低いなどの遺伝や体質によるものだと説明しています。そのため、親が小柄で子どもも小柄なことは、珍しいことではありません。
一方で、同じ学会は、成長曲線で−2.0SDより低い場合や、伸びの線が下がってくる場合は、早めに小児科の医師に相談するよう勧めています。親が小柄であっても、病気がないとまでは言えません。
家族の中で受け継がれる病気が、低身長の原因になることもあります。たとえばSHOX異常症に関わるSHOX遺伝子は、性染色体(XとY)のうち、父と母のどちらからも受け継がれる領域にあります。日本小児内分泌学会の指針には、海外で低身長の子1,608人を調べ、68人にSHOX異常症が見つかった報告が紹介されています。家族の多くが小柄、腕や脚が短めといった特徴があるときは、そのことも医師に伝えてください。
「親が高いから、うちの子は心配いらない」?
両親が高身長でも、病気やホルモンの働きの問題で伸びが落ちることはあります。日本小児内分泌学会が挙げるように、身長には遺伝だけでなく、ホルモンや病気、お薬、栄養、睡眠、心の状態なども関わるからです。
親の身長から見た目安の範囲より、お子さんの身長が大きく下にある場合や、成長曲線の線を横切って下がってきた場合は、親の身長にかかわらず相談のきっかけになります。
「親が遅く伸びたから、子どもも必ず遅く伸びる」?
思春期の始まりの早い・遅いは、家族に似ることがあります。あいち小児保健医療総合センターの解説では、思春期が早い場合も遅い場合も、家族に同じような人がいることが多いとされています。
ただし、家族と同じ経過をたどるとは限りません。同センターは、女の子で13歳、男の子で14歳になっても思春期の変化がまったく見られない場合を思春期遅発の目安とし、過度な運動や極端な体重減少でも遅れることがあるとしています。「父親も高校で伸びたから」と待つだけにせず、年齢の目安を過ぎたら相談しましょう。
出典 [7]
「遺伝で決まるから、生活は関係ない」?
遺伝の影響が大きいことと、生活が関係ないことは別の話です。前の項目で見たように、日本の子どもの平均身長は数十年のあいだに大きく変わりました。遺伝子が短い期間でこれほど変わることは考えにくく、栄養や生活環境の変化が大きく関わったと考えられます。
ただし、特定の食べ物や運動で何cm伸びる、と言えるものはありません。バランスのよい食事、十分な睡眠、体を動かす習慣を、身長に限らず成長期の体づくりの土台として続けることが大切です。
身長と遺伝についてよくある質問
Q. 同じ両親から生まれたのに、きょうだいで身長が違うのはなぜですか?
A. 両親から受け継ぐ遺伝子の組み合わせが子どもごとに違ううえ、思春期の時期の違いもあるためです。「きょうだいで身長が違うのはなぜ?」のコラムで説明しています。
Q. 遺伝子の検査で、将来の身長は分かりますか?
A. 身長にはたくさんの遺伝的な違いが少しずつ関わるため、遺伝子から一人ひとりの将来の身長を言い当てることは難しいと考えられます。病気を調べるための遺伝子の検査は、医師が必要と判断した場合に行います。
Q. 両親の身長差が大きいとき、子どもはどちらに似ますか?
A. どちらに似るかを前もって知る方法はありません。目安の式は両親の身長を足して2で割るため、目安は両親のあいだのどこかになりますが、実際の身長はその上下にも幅をもって散らばります。
Q. 両親の片方の身長が分からないときは、どうすればよいですか?
A. 目安の計算はできませんが、お子さん自身の伸び方は成長曲線で確かめられます。「親の身長が分からないときの成長の見方」のコラムで説明しています。
まとめ
身長は遺伝の影響を強く受けますが、たくさんの遺伝子が少しずつ関わり、両親の身長は同じ重さで目安に使われます。祖父母や母親だけで決まるものではなく、親の身長にかかわらず、お子さん自身の伸び方を成長曲線で見ることが大切です。
身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談(ビデオ通話)で、記録とご家族の身長を見ながらご相談いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。お薬の処方を検討する2回目には、お子さまにも参加していただきます。
出典 [8]
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 理化学研究所「日本人の身長に関わる遺伝的特徴を解明-19万人の解析から日本人の身長に関わる遺伝的要因の謎に迫る-」(2019年10月2日)
- 日本小児内分泌学会 Clinical Pediatric Endocrinology「Target Height and Target Range for Japanese Children: Revisited」(Ogata T ほか, 2007)
- BMC Public Health「Body mass index and height over three generations: evidence from the Lifeways cross-generational cohort study」(Murrin CM ほか、2012年、アイルランドの5〜7歳の子ども529人と両親・祖父母、PMC)
- 文部科学省「令和7年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)について公表します」(PDF、令和8年2月13日)
- 日本小児内分泌学会「低身長」
- 日本小児内分泌学会 SHOX異常症の診断・治療指針ワーキンググループ「SHOX異常症の診断・治療指針〜SHOX異常症に対する成長ホルモン治療の適正な使用のために〜」(PDF)
- あいち小児保健医療総合センター「思春期早発症・遅発症「思春期が早い?遅い?治療が必要なの?」」
- ノビケア「お問い合わせ」