成長ホルモン治療読む時間 約7分
成長ホルモン注射の痛みを減らす工夫と、注射を嫌がる子への声かけ
公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日
成長ホルモン注射の痛みは、打つ場所を毎回変える、針を毎回新しくする、製剤によっては薬液を室温に戻してから打つ、といった工夫で軽くなることがあります。怖さには、うそをつかずに前もって伝える、打つ間は気をそらす、終わったらできたことを認める、という声かけが役立ちます。嫌がる日が続くときは我慢させ続けず、注入器や時間帯の見直しも含めて主治医に相談しましょう。
注射を痛がったり怖がったりする子は、どのくらいいる?
イタリアで毎日型の成長ホルモン治療を受けていた子ども70人(平均11.7歳)を調べた研究(Frontiers in Endocrinology、2025年)では、注射の針が怖いと答えた子が25.7%、長く続く治療にストレスを感じていた子が41.4%いました。注射のことで友だちに対して気まずさを感じていた子も22.9%いて、それがストレスと関係していました。
同じ研究では、注射を主に打っていたのは保護者が77.1%、本人が22.9%でした。研究者は、子どもだけでなく、注射を担う保護者への心の支えも大切だとしています。子どもが痛がったり怖がったりするのは珍しいことではなく、打ち方が下手だからというわけでもありません。
痛みには、針が刺さる瞬間の痛み、薬液が入るときのしみるような感じ、打ったあとの赤みや腫れなど、いくつかの種類があります。どの場面でいちばん嫌がるのかを見ておくと、合う工夫を選びやすくなり、主治医にも伝えやすくなります。
出典 [1]
お薬の説明書には、どんな工夫が書かれている?
毎日型の製剤の一つ、ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパルの患者向医薬品ガイドには、薬液の温度が低すぎると注射で感じる痛みが強くなることがあるため、注射する30分前までにカートリッジを冷蔵庫から出して室温に戻すよう書かれています。室温に戻すかどうか、どのくらい出しておいてよいかは製剤によって違うため、ほかの製剤では自己判断せず、処方を受けた医療機関や薬局に確認してください。
ジェノトロピンゴークイック注用のガイドでは、毎回場所を変えて前回の場所から少なくとも2cm離すこと、骨ばっている、あざがある、赤くなっている、痛みがある、硬くなっている場所や、傷や皮膚の病気がある場所を避けることが示されています。同じ場所に打ち続けると皮膚が硬くなったりへこんだりして、痛みが出やすくなることがあります。
注射針は毎回新しいものに付け替えます。打つ場所や手順の基本は「成長ホルモン注射の打ち方は?」のコラムで説明しています。説明書の工夫をまとめると、次のようになります。
- 製剤によっては、薬液を室温に戻してから打つ(決まりは製剤ごとに確認する)
- 前回の場所から少し離し、順番に場所を移していく
- 硬い、赤い、あざがある、痛む場所は避ける
- 針は毎回新しいものを使う
- 消毒したアルコールが乾いてから針を刺す
注入器や針の違いで、痛みは変わる?
デンマークで成長ホルモン治療中の子ども18人を対象にした研究(Acta Paediatrica、1995年)では、針を自動で刺す試作のペンのほうが、手で刺すペンより痛みの点数が低く、18人中13人が自動のペンで治療を続けることを選びました。ただし、試作品で調べた小さな研究で、今の注入器にそのまま当てはまるわけではありません。
今の成長ホルモン製剤は、製剤ごとに専用の注入器や使える針が決まっています。たとえばエヌジェンラの添付文書では、決められた規格の専用の針で、32ゲージかそれより太い針を使うこととされています。針の種類や注入器を家庭の判断で変えることはできません。
痛みが強い、針を見るだけで怖がる、といった場合は、ほかの注入器や針を選べるかを主治医に尋ねてみてください。病気と承認の範囲によっては、製剤そのものを見直すこともあります。製剤の違いは「成長ホルモン製剤の種類は?」のコラムにまとめています。
注射の前は、どんなふうに伝えるとよい?
国立成育医療研究センターのチャイルドライフサービス室は、病院で注射を受ける子どもについて、何をするかを知っているほうが怖さが少なく、痛みも軽くなると説明しています。「言うことを聞かないと注射してもらうよ」といった脅しは、誤ったメッセージや恐怖を与えかねないとしています。
毎日の注射でも、何のために打つのかを、年齢に合わせて短い言葉で伝えておくことが出発点になります。同センターは、2〜7歳ごろの子には、言葉だけでなく、人形に注射をするごっこ遊びなどで伝えることも勧めています。
予防接種の痛みを減らすためのカナダの診療指針(CMAJ、2015年)では、「大丈夫、大丈夫」と何度もくり返すことや、事実と違うことを言って安心させることは勧めないとしています。「少しチクッとするけれど、すぐ終わるよ」のように、正直に短く伝えるほうがよいと考えられます。
打つ間に、気持ちをそらす方法は?
同じ指針は、3〜12歳の子には、話しかけて気をそらす方法や動画で気をそらす方法、シャボン玉や風車を吹くなど、おもちゃを使った呼吸を勧めています。また、3歳以上では、寝かせるより体を起こして座った姿勢を勧めています。予防接種についての指針ですが、家での注射にも取り入れやすい工夫です。
国立成育医療研究センターは、抱っこやおもちゃ、クイズなどで気をそらす方法を紹介し、保護者は心の支えに徹するとよいとしています。家では、打つ人と、話しかけて気をそらす人を分けられると、それぞれの役に集中しやすくなります。たとえば、次のような方法があります。
- 好きな歌を歌う、数を一緒に数える、クイズを出す
- シャボン玉や風車をふうっと吹いてもらう
- いすに座り、体を起こした姿勢で打つ
- 今日打つ場所を、決められた順番の中から本人に選んでもらう
打ち終わったら、どう声をかける?
国立成育医療研究センターは、泣いたとしても腕を動かさなかったら「手をまっすぐしていられたね」と、できたことを認める声かけを勧めています。うまくいかなかった日も、がんばった部分を言葉にして返すと、子どもは「できる自分」を確かめやすくなります。
毎日の注射では、カレンダーにシールを貼る、終わったら好きな絵本を読むなど、注射のあとの小さな楽しみを決めておく方法もあります。ごほうびを大きくしすぎると、もらえない日が負担になることもあるため、続けやすい形にしましょう。
年齢が上がってきたら、針を付ける、量を合わせるなど、本人にできる手順を少しずつ任せる方法もあります。自分で打つかどうかは、理解の程度や本人の気持ちを見ながら主治医と相談してください。
出典 [6]
注射を嫌がる日が続くときは?
押さえつけて打つ日が続くと、子どもにとっても保護者にとっても、注射の時間がつらいものになりがちです。嫌がる理由を聞いてみると、「針が見えるのが怖い」「寝る前の遊ぶ時間が減る」「友だちに知られたくない」など、痛み以外の理由が見つかることもあります。
打てない日が出ても、2回分をまとめて打たないことが基本です。打ち忘れたときの扱いは製剤によって違うため、「成長ホルモン注射を打ち忘れたら」のコラムも参考にしてください。打てなかった日は隠さずに主治医に伝えましょう。主治医に相談するときは、次の点を伝えると話が進みやすくなります。
背が低いことや治療のことを本人が気にしている様子があれば、「背が低いことを気にする子どもへの声かけ」のコラムも参考になります。
- どの場面がいちばん嫌か(針を見る、刺す瞬間、薬が入るとき、打ったあと)
- 打ったあとの赤み、腫れ、しこりが続いていないか
- 嫌がる日や、打てなかった日が週に何日くらいあるか
- 本人が治療を続けたいと思っているか
医療機関に早めに相談したほうがよいのは?
注射したところの痛み、赤み、腫れはよくある副作用ですが、強い痛みや腫れが続く、しこりやへこみができてきた、という場合は、次の診察を待たずに処方を受けた医療機関に相談してください。打ち方や場所の見直しが必要なことがあります。強い頭痛、何度も吐く、けいれんがあるときは、すぐに119番に連絡してください。
ノビケアで治療を受けている方も、痛みや嫌がる様子が続くときはご相談いただけます。治療を始めるかどうか迷っている段階では、医師による無料相談(ビデオ通話)で、毎日の注射の負担も含めてお話しいただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。
成長ホルモン注射の痛みについてよくある質問
Q. 怖がるので、本人に知らせずに打ってもよいですか?
A. 国立成育医療研究センターは、何をするかを知っているほうが怖さが少ないとしています。不意に打つと、注射の時間そのものへの不安が強くなることもあるため、短くても前もって伝えましょう。
Q. 打つ前に、保冷剤で皮膚を冷やしてもよいですか?
A. 冷やすことについては、お薬の説明書には書かれていません。試したいときは、主治医に確認してからにしましょう。
Q. 塗る麻酔の薬やテープは使えますか?
A. カナダの予防接種の指針では12歳以下の子に塗る麻酔薬を勧めていますが、毎日の家庭での注射に使えるかは別に考える必要があります。自己判断で使わず、主治医に相談してください。
まとめ
成長ホルモン注射の痛みは、場所を変える、針を毎回新しくする、製剤によっては室温に戻すといった工夫で軽くなることがあります。怖さには、正直に前もって伝え、打つ間は気をそらし、終わったらできたことを認める声かけが役立ちます。嫌がる日が続くときは、理由を聞いたうえで主治医に相談しましょう。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- Frontiers in Endocrinology「Discomfort towards peers causes therapy-related stress in children and adolescents on daily rhGH therapy」(Corica D ほか、2025年、イタリアで毎日型の治療を受けていた70人、PMC)
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル」
- PMDA「患者向医薬品ガイド ジェノトロピンゴークイック注用」(2024年8月更新)
- Acta Paediatrica「Automatic needle insertion diminishes pain during growth hormone injection」(Main KM ほか、1995年、デンマークの子ども18人、PubMed)
- PMDA「エヌジェンラ皮下注ペン 添付文書」(2026年7月改訂 第3版)
- 国立成育医療研究センター チャイルドライフサービス室「お子さんが注射を受けることになったとき」
- CMAJ「Reducing pain during vaccine injections: clinical practice guideline」(Taddio A ほか、2015年、カナダHELPinKids&Adultsによる予防接種の痛みの診療指針、PMC)
- ノビケア「お問い合わせ」