成長ホルモン治療読む時間 約6分
海外旅行や留学中の成長ホルモン治療:薬の持ち出しと時差の考え方
公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日
海外へ成長ホルモン製剤を持っていくときは、機内持ち込みの手荷物に入れ、英文の手紙(医師の説明書)を用意し、渡航先の国のルールを前もって確かめます。時差があるときは、毎日型は現地の寝る前に合わせる方法が考えられますが、切り替え方は出発前に主治医と決めておきましょう。数か月以上の留学では、現地で処方や検査を受ける体制づくりが必要になります。
出発の前に、主治医と何を決めておく?
予定が決まったら、早めに主治医に伝えましょう。日本内分泌学会などがまとめた診療ガイドライン(2023年版)の治療の手引きは、2〜3日の旅行のときは注射を休ませたほうが気持ちの面でもよく、短い中断が大人の身長に及ぼす影響はほとんどないと考えられるとしています。一方で、重症の場合は続けることが望ましいともされています。持っていくか休むかは、病気と旅程をふまえて主治医が判断します。決めておきたいのは、次のようなことです。
決めた内容はメモにして、旅行中もすぐ見られるようにしておくと、迷ったときに落ち着いて対応できます。
- 旅行中も注射を続けるか、休むか
- 時差のある地域での注射の時間の合わせ方
- 持っていく薬と注射針の数(予備を含む)
- 英文の手紙を書いてもらえるか
- 旅行中に体調をくずしたときの連絡のしかた
出典 [1]
薬を海外へ持っていくには、どんな書類が要る?
厚生労働省検疫所(FORTH)は、規制された薬や注射薬について、処方した医師にレターヘッド付きの便箋で書いてもらうことを勧めています。紹介状には、いまの病気、これまでにかかった主な病気、アレルギー、薬の一般名を書いた処方内容を入れるよう示しています。
成長ホルモン製剤の一般名は、毎日型が「ソマトロピン」、週1回型のソグルーヤが「ソマプシタン」、エヌジェンラが「ソムアトロゴン」です。販売名は国によって違うことがあるため、一般名と量、注入器の名前を書いてもらうと伝わりやすくなります。
同じ案内では、薬によっては渡航先への持ち込みが認められないことがあるため、目的地の在日本大使館や領事館に前もって連絡するよう勧めています。注射針を持ち込むときの扱いも、あわせて確かめておくと安心です。
飛行機では、薬をどう運ぶ?
FORTHは、預けた荷物はなくなることがあるため、機内に持ち込む手荷物に十分な量の薬を入れておくよう勧めています。国土交通省は、国際線の液体物の持ち込み制限について、医薬品は機内で必要な量に限って対象外とし、保安検査で申告するよう案内しています。冷やして運ぶ必要がある薬の保冷剤も、薬とあわせて申し出れば持ち込めるとされています。
機内では、薬を保冷バッグに入れて手元に置き、保冷剤に直接ふれて凍らないよう包みます。乗り継ぎや遅れで移動が長くなることもあるため、冷蔵庫の外に置ける条件を出発前に確かめておきましょう。たとえばノルディトロピン フレックスプロ注(5mg・10mg)は25℃以下なら冷蔵庫の外に出した日から21日以内、ソグルーヤは通算3日間(72時間)まで室温で保管できるとされていますが、記載のない製剤もあります。
保安検査では、処方箋の写しや薬袋などを示すよう求められることがあります。英文の手紙とあわせて、すぐに出せる場所に入れておきましょう。
時差があるとき、毎日型の注射はいつ打つ?
毎日型は、日本内分泌学会の説明では夜寝る前に打つとされています。一方で、イスラエルの5〜14歳の子ども20人が、朝に打つ期間と夜に打つ期間を2週間ずつ試した研究(Frontiers in Endocrinology、2025年)では、どちらでも睡眠の長さや質に差はなく、研究者は家族の都合に合わせて決まった時間に打てばよいとしています。ただし、短い期間の小さな研究で、身長の伸びは比べていません。
時差のある地域では、現地の寝る前の時間に合わせて打つ方法が考えられます。時差が大きい場合に、出発の日と到着の日をどうつなぐか(前回から短い間隔で打つのか、間隔をあけるのか、1回休むのか)は、主治医に具体的に決めてもらってください。どの方法でも、1日に2回分を打たないことは同じです。
帰国したら、日本の寝る前の時間に戻します。旅行中に打った日時を記録しておくと、帰国後の診察で伝えやすくなります。
週1回型の製剤では、曜日をどう考える?
週1回型のソグルーヤとエヌジェンラは、毎週同じ曜日に打つことが添付文書で決められています。時差があっても、現地の日付で決めた曜日に打つのが基本の考え方になります。
移動日と注射日が重なる場合は、曜日を変えることも考えられます。ソグルーヤの患者向医薬品ガイドでは、曜日を変えるときは前回から少なくとも4日以上あけること、エヌジェンラでは変更の前後の間隔が3日以上になるようにすることとされています。予定日に打てなかったときは、予定日から3日以内なら気づいた時点で打ち、3日を超えていたらその回は打たずに次の決めた曜日に打ちます。
週1回型は持っていく本数が少なくてすむ一方、使い始めてからの期限があります(添付文書ではソグルーヤは6週間以内、エヌジェンラは4週間以内)。旅行や留学の期間と照らし合わせて、何本必要かを主治医や薬局と確認しておきましょう。
数か月以上の留学では、何を準備する?
長い留学では、日本から持っていける量だけで治療を続けるのは難しいことがあります。使い始めた薬には期限があり、新しい薬も冷蔵で保管する必要があるためです。現地で子どもの内分泌の病気を診る医師にかかり、処方を受けられるかを、出発の数か月前から主治医と相談しましょう。
治療中は、身長や体重、血液検査などで効果と副作用を定期的に確かめます。留学中にどこで検査を受けるか、結果を日本の主治医とどう共有するかも決めておくと、帰国後に治療を続けやすくなります。成長が終わりに近い年齢なら、留学の時期が治療の終わりと重なることもあるため、続ける必要があるかどうかも含めて相談してください。
日本から薬を送ってもらう方法には、渡航先の国の輸入のルールや、輸送中の温度管理の問題があります。自己判断で郵送せず、主治医や渡航先の大使館などに確かめてください。
帰国するときに、気をつけることは?
海外で処方された薬を日本に持ち帰る場合は、日本の輸入のルールが関係します。税関の案内では、処方箋が必要な薬などは、用法・用量からみて1か月分以内であれば、税関での確認だけで持ち込める特例の範囲とされています。それを超える量は、原則どおり地方厚生局での手続きが必要になります。
使い終わった注射針は、ふた付きの容器に入れて持ち帰り、ふだんと同じ方法で処分します。帰国後の最初の診察では、旅行や留学中に打てなかった日、体調、現地で測った身長を伝えましょう。
出典 [13]
海外での成長ホルモン治療についてよくある質問
Q. 1週間の旅行です。薬を持っていかずに休んでもよいですか?
A. 診療ガイドラインの手引きは2〜3日の旅行で休むことを認める考え方を示していますが、1週間以上になる場合や、病気が重い場合の扱いは主治医の判断になります。出発前に確認してください。
Q. ホテルの部屋の冷蔵庫に入れてもよいですか?
A. 冷蔵庫によっては温度が高めだったり、奥のほうで凍ったりすることがあります。凍りにくい場所に置き、気になるときは製剤ごとの室温での保管の条件を確かめて、主治医や薬局に相談しましょう。
Q. 留学先でも同じ製剤を使えますか?
A. 同じ成分の薬でも、販売名や注入器、承認されている病気は国によって違うことがあります。現地の医師に一般名と量、使っている注入器を伝えられるよう、英文の手紙に書いてもらいましょう。
まとめ
海外へ成長ホルモン製剤を持っていくときは、手荷物に入れて医薬品として申告し、英文の手紙と渡航先のルールを前もって確認します。時差のある地域では、毎日型は現地の寝る前、週1回型は決めた曜日を基本に、切り替え方を主治医と決めておきましょう。ノビケアで治療を受けている方も、旅行や留学の予定が分かった時点でご連絡いただければ、保管や注射の日程についてご相談いただけます。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会(厚生労働科学研究班・日本内分泌学会)「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」(日本内分泌学会雑誌 Vol.99 Suppl.、2023年7月、J-STAGE、PDF)
- 厚生労働省検疫所 FORTH「旅行前の準備」
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル」
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソグルーヤ皮下注」
- PMDA「患者向医薬品ガイド エヌジェンラ皮下注ペン」(2022年4月作成)
- 国土交通省「国際線の液体物持込制限 概要」(PDF)
- 国土交通省「国際線の液体物持込制限 よくある質問」(PDF)
- PMDA「ノルディトロピン フレックスプロ注 添付文書」(2025年9月改訂 第3版)
- PMDA「ソグルーヤ皮下注 添付文書」(2026年6月改訂 第4版)
- 日本内分泌学会「成長ホルモン分泌不全性低身長症」
- Frontiers in Endocrinology「Morning vs. evening growth hormone injections and their impact on sleep-wake patterns and daytime alertness」(Levshtein A ほか、2025年、イスラエルの5〜14歳の20人、朝と夜を2週間ずつ比べたクロスオーバー試験)
- PMDA「エヌジェンラ皮下注ペン 添付文書」(2026年7月改訂 第3版)
- 税関「9005 海外旅行者向け(医薬品・化粧品等)」(カスタムスアンサー)
- ノビケア「お問い合わせ」