成長ホルモン治療読む時間 約6分
子どもに注射を打つのが怖い親へ:始めたばかりの不安と、慣れるまでの練習のしかた
公開日:2026年10月5日 更新日:2026年10月5日
わが子に毎日注射を打つことを怖いと感じるのは、珍しいことではありません。添付文書では、打ち方の十分な練習をしたうえで、正しく打てることを確かめてから家での注射を始めることとされています。分からない手順は何度でも医療機関に確かめ、慣れるまでは手順を紙にして同じ流れで進めると、少しずつ落ち着いて打てるようになります。
注射を打つのが怖いと感じる親は、少なくない?
成長ホルモンの注射は、多くの家庭で保護者が打っています。イタリアで毎日型の治療を受けていた子ども70人(平均11.7歳)を調べた研究(Frontiers in Endocrinology誌、2025年)では、注射を主に打っていたのは保護者が77.1%、本人が22.9%でした。
成長ホルモン治療を受ける子どもの保護者などの体験を調べた15の研究(648人)をまとめた解析(Journal of Pediatric Nursing誌、2026年)では、保護者が体と気持ちの両面で負担を抱えていることが共通して報告されていました。困りごとは子どもの成長の段階によって変わっていくこと、医療者が家族全体を支え、同じ立場の人とつながれるようにすることが大切だとまとめられています。
「痛くしたらどうしよう」「量を間違えたらどうしよう」と感じるのは、子どもを大切に思っているからこそです。怖さがあることを、まず自分で認めてあげてください。
家で打ち始める前に、どんな練習をする?
週1回型の成長ホルモン製剤の添付文書には、自己注射について、打ち方の十分な教育訓練を行ったあと、確実に打てることを確かめたうえで、医師の管理と指導のもとで行うこと、すべての器具の安全な捨て方を指導すること、取扱説明書を読むよう指導することが書かれています。家での注射は、医療機関で手順を一緒に確かめてから始めるものです。
糖尿病でインスリン注射を始める子どもの家族について、日本糖尿病学会のサイトで公開されている小児・思春期糖尿病のガイドライン(2024年)は、診断の直後は多くの知識や手技を短い時間で受け入れることが難しいとしています。不安を軽くするために、いつでも質問や相談ができること、理解の程度に合わせて説明をくり返すことが大切だとしています。薬は違いますが、毎日の注射を家族が担う点は同じです。一度の説明で覚えきれなくても、遅れているわけではありません。
慣れるまでの練習は、どう進めるとよい?
使う注入器によって手順は違うため、細かな操作は取扱説明書と医療機関の指導に従ってください。そのうえで、慣れるまでの進め方には次のような工夫があります。どこまで練習すれば家で打ってよいかは、主治医や看護師と相談して決めましょう。打つ場所や手順の基本は「成長ホルモン注射の打ち方は?」のコラムで説明しています。
- 最初は医療機関の看護師などが打つところを、手元が見える位置で見せてもらう
- 説明を受けながら、針の付け方、量の合わせ方、空気を抜く操作を自分の手で行う
- 家で打つ最初の数回は、手順を一つずつ声に出しながら進める
- 手順を書いた紙を、注射の道具のそばに置いておく
- 時間と場所を決め、毎回同じ流れで準備する
- 分からなかったところは、その日のうちにメモして次の連絡で確かめる
量を間違えないか心配なときは?
量を合わせる目盛りは、打つ前にもう一度確かめる習慣をつけると安心です。家族が二人いるときは、一人が量を合わせ、もう一人が数字を読み上げて確かめる方法もあります。
毎日型の製剤の患者向医薬品ガイドには、打ち忘れたときに2回分を一度に打たないこと、多く使ったときはじめに血糖が下がる症状(お腹がすく、冷や汗が出る、手足のふるえなど)が、次いで血糖が上がる症状があらわれることがあると書かれています。量を間違えた、2回打ってしまったと気づいたときは、自分で次の量を調整せず、処方を受けた医療機関に連絡してください。けいれんや意識がぼんやりするなどの様子があるときは、すぐに119番に連絡しましょう。
注射のあとに少し液が残ったように見えても、自分の判断で追加して打たないでください。注入器のトラブルへの対応は「注射の器具がうまく動かない・薬がもれたときは?」のコラムで紹介しています。
出典 [5]
自分の指に針を刺してしまわないか心配なときは?
環境省が公開している在宅医療廃棄物の手引きは、家での自己注射に使うペン型の注射針は細く短いため、中に残る血液がごく少なく、針ケースで針先を覆えるように工夫されていると説明しています。感染症にかかっていない人が使った針であれば、刺してしまっても感染することはないとしています。
それでも、もし刺してしまったときは、流水で洗い流したうえで、できるだけ早く医師に相談することが必要だとされています。毎日型の製剤のガイドには、内側の小さな針キャップを付け直そうとすると針刺しのおそれがあるため、付け直さないよう書かれているものがあります。外した針の扱いは「使い終わった注射針や器具はどう捨てる?」のコラムで説明しています。
子どもが泣いたり嫌がったりすると、自信がなくなるときは?
子どもが泣くと、「自分の打ち方が悪いのでは」と感じてしまうことがあります。注射で泣くのは、打ち方とは関係なく自然なことです。国立成育医療研究センターのチャイルドライフサービス室は、病院での注射について、泣いたとしても腕を動かさずにいられたら、できたことを認めてあげるよう勧めています。
家では、打つ人と、話しかけたり歌ったりして気をそらす人を分けると、打つ人は手元に集中しやすくなります。痛みをやわらげる工夫や声のかけ方は「成長ホルモン注射の痛みを減らす工夫と、注射を嫌がる子への声かけ」のコラムでくわしく紹介しています。
出典 [7]
親の気持ちの負担を軽くするには?
注射を一人で担っていると、休めない気持ちが続きます。もう一人の家族も打てるように練習しておくと、体調が悪い日や帰りが遅い日にも交代でき、気持ちに余裕が生まれます。役割の分け方は「毎日の注射を続ける家族の負担を軽くするには」のコラムを参考にしてください。
前に紹介した糖尿病のガイドラインは、気持ちを話せる相談相手や患者会のような場を知っておくことも大切だとしています。怖さや疲れが続くときは、遠慮せずに主治医や看護師に伝えてください。診断を受けた直後の気持ちの整理は「「成長ホルモン分泌不全症」と診断されてショックなとき」のコラムで取り上げています。
ノビケアで治療を受けている場合は?
ノビケアで治療を受けている方も、注射の手順や量の合わせ方に不安があるときは、ご自分で判断せずにご相談ください。治療を始めるかどうか迷っている段階では、医師による無料相談(ビデオ通話)をご利用いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。お薬の処方を検討する2回目には、お子さまにも参加していただきます。予約は公式LINEから受け付けています。
子どもに注射を打つのが怖いときによくある質問
Q. 怖がるので、寝ている間にこっそり打ってもよいですか?
A. 国立成育医療研究センターは、突然の処置ほど子どもにとって怖いことはないとして、前もって伝えることを勧めています。打つ時間や場所は、本人とも相談しながら主治医と決めましょう。
Q. 何回くらい練習すれば、家で打てるようになりますか?
A. 決まった回数はありません。手順を自分の言葉で説明でき、量を正しく合わせられることを、医療機関で一緒に確かめてもらってから始めましょう。
Q. 慣れてきたら、手順の紙は見なくてもよいですか?
A. 慣れたころに、確かめを省いて間違えることもあります。量の確かめだけは、毎回続けておくと安心です。
まとめ
子どもに注射を打つのが怖いと感じるのは自然なことです。家での注射は、医療機関で十分に練習し、正しく打てることを確かめてから始めます。分からない手順は何度でも確かめ、量の確かめを習慣にして、怖さや疲れは一人で抱えずに主治医や家族と分け合いましょう。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- Frontiers in Endocrinology「Discomfort towards peers causes therapy-related stress in children and adolescents on daily rhGH therapy」(Corica D ほか、2025年、イタリアで毎日型の治療を受けていた70人、PMC)
- Journal of Pediatric Nursing「The caregivers' experiences in growth hormone therapy for short stature: A qualitative meta-synthesis」(Kang C ほか、2026年、15の研究・保護者など648人の体験をまとめた解析)
- PMDA「ソグルーヤ皮下注 添付文書」(2026年6月改訂 第4版)
- 日本糖尿病学会掲載「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」Ⅴ.患児・家族の支援(社会・日常生活、年齢時期別の支援、PDF)
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル」
- 環境省「在宅医療廃棄物の処理に関する取組推進のための手引き」(平成20年3月、PDF)
- 国立成育医療研究センター チャイルドライフサービス室「お子さんが注射を受けることになったとき」
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- ノビケア「お問い合わせ」