成長ホルモン治療読む時間 約6分
治療2年目に伸びが1年目より減った:よくある理由と、主治医と確かめること
公開日:2026年10月5日 更新日:2026年10月5日
成長ホルモン治療では、1年目にいちばん大きく伸び、2年目以降は伸びの速さが落ち着いていくことが多いと報告されています。2年目の伸びが1年目より小さいこと自体は、珍しい変化ではありません。ただし、体重が増えたのに量が同じまま、打ち忘れが増えた、甲状腺の働きが変わったなど、見直せる理由が隠れていることもあります。1年分の記録を持って、主治医と一緒に確かめましょう。
2年目に伸びが減るのは、よくあること?
国内で、思春期前の成長ホルモン分泌不全症の男の子を対象にした臨床試験の報告(1999年)では、治療1年目の伸びは量に応じて大きくなった一方、その後は量による差がはっきりしなくなりました。研究者は、2年目以降に治療の効果が弱まっていくこと(ウェイニング)を課題として挙げています。
米国で、生まれたときに小さく生まれた思春期前の子ども10人を調べた研究(1996年)では、1年の伸びの平均が、治療前の約5.4cmから1年目に約7.3cmに増えましたが、2年目には約6.5cmに落ち着きました。2年目も、治療前より大きい傾向は保たれていました。
国内の添付文書でも、一部の病気の治療継続基準は、2年目以降の1年の伸びについて1年目より低い値で判定するよう定められています。1年目と比べるだけでなく、治療前の伸びや、同じ病気の中での目安と比べることが大切です。1年目の伸びの見方は「成長ホルモン治療の効果はいつから分かる?」のコラムで説明しています。
なぜ1年目がいちばん伸びやすい?
治療を始めた最初の時期は、それまで伸びが小さかった分を取り戻すように、伸びの速さが大きくなることが多いと考えられています。体がお薬に慣れていくにつれて、伸びの速さは少しずつ落ち着いていきます。
どのくらい落ち着くかは、もとの病気、治療を始めた年齢、成長ホルモンの不足の程度などによって違います。国際的な成長ホルモン治療のデータベースを使った研究では、子どもの年齢や体格などから伸びを予測し、実際の伸びと比べて治療の反応を見る方法が検討されています。ほかの子の数字とそのまま比べないようにしましょう。
出典 [4]
体重が増えたのに、量が同じままになっていない?
成長ホルモンの量は、体重1kgあたりで決めることになっています。治療中は体重も増えていくため、量を変えずにいると、体重あたりの量は少しずつ減っていきます。量をいつ、どう変えるかは主治医が体重や検査の結果を見て決めます。
最後に量を変えたのはいつか、今の体重はいくつかを、診察の前に確かめておきましょう。量が変わるときの確かめ方は「体重が増えて注射の量が変わると言われたら」のコラムで説明しています。
打ち忘れが増えていない?
フランスで毎日の注射を受けていた子どもを調べた研究(Endocrine Connections誌、2023年)では、治療の期間が長くなるにつれて、きちんと打てた割合がわずかに下がっていました。ニュージーランドで治療を受けていた子ども177人の調査(2011年)では、打ち忘れが多い子ほど身長の伸びが小さい傾向がありました。
1年目は家族みんなで気をつけていても、2年目には慣れから確認がゆるむことがあります。本人に任せる場面が増えた家庭や、部活・塾で帰りが遅くなる日が増えた家庭では、とくに打てた日数を記録で振り返ってみましょう。週末や行事の日、旅行の前後など、打ち忘れが起きやすい日に偏りがないかも見ておくと、対策を立てやすくなります。打てなかった日があっても隠さずに主治医に伝えることが、正しい評価につながります。記録のつけ方は「注射の記録はどうつける?」のコラムで紹介しています。
測り方や、測った時期の違いは?
身長は、測る時刻や姿勢、測る人によって少しずつ違います。英国の研究(Archives of Disease in Childhood誌、1991年)は、身長の測定の誤差を考えると、12か月の伸びでも1回分だけでは、今の成長を正確に表すには精度が足りないとしています。
1年目と2年目を比べるときは、ほぼ1年ごとの、同じ条件で測った値どうしで比べましょう。家で測った値と病院で測った値を混ぜて比べると、差が大きく見えることがあります。測定の誤差の考え方は「身長の測定誤差:1cmの違いをどう考える?」のコラムで説明しています。
出典 [9]
体の中の変化や、ほかの薬は関係する?
成長ホルモンの添付文書には、治療中に甲状腺の働きが下がることがあるため、甲状腺の検査を定期的に行うことが書かれています。甲状腺ホルモンは成長に欠かせないため、働きが下がると伸びにも影響します。
また、ステロイド(糖質コルチコイド)の薬は、成長ホルモンの成長を促す作用を弱めることがあると添付文書に書かれています。ぜんそくやアレルギー、そのほかの病気で新しく薬を使い始めた場合は、主治医に伝えましょう。長く続いた病気や、食事の量が大きく減った時期があったかどうかも、伸びに関わる手がかりになります。
思春期の時期は関係する?
思春期が始まると、伸びの速さは大きく変わります。思春期が始まる少し前には、伸びの速さが一時的に小さくなる時期があるともいわれます。一方、思春期が始まると伸びが大きくなるとともに、骨年齢も進みやすくなります。
2年目の伸びが減った時期が、胸のふくらみや声変わりなど思春期の始まりのサインと重なっていないかも、主治医に伝えましょう。治療中に思春期が始まったときの考え方は「成長ホルモン治療中に思春期が始まったら」のコラムで説明しています。
主治医と確かめたいことは?
次の診察の前に、記録をもとに次のことを整理しておくと、話がしやすくなります。
- 治療前1年、治療1年目、2年目それぞれの伸びと、測った時期
- 今の体重と、最後に量が変わった時期
- この1年で打てなかった日の数と、その理由
- 血液検査(IGF-1や甲状腺の働きなど)の結果に変化がないか
- 骨年齢の進み方と、思春期のサインの有無
- 新しく使い始めた薬や、長く続いた病気があったか
- このまま続けるか、量を見直すか、ほかに調べることがあるか
ノビケアで治療を受けている場合は?
ノビケアでも、治療は年単位になることが多く、続けるかどうかを定期的に判断しています。伸びが前の年より小さくなったと感じたときは、記録をもとに診察でご相談ください。治療を始めるかどうか迷っている段階では、医師による無料相談(ビデオ通話)をご利用いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。お薬の処方を検討する2回目には、お子さまにも参加していただきます。予約は公式LINEから受け付けています。
治療2年目の伸びについてよくある質問
Q. 2年目に伸びが減ったら、治療は効いていないということですか?
A. 2年目以降に伸びの速さが落ち着くのは、よく見られる傾向です。治療前の伸びと比べてどうか、ほかに理由がないかを、主治医が記録全体から判断します。思ったほど伸びないときの考え方は「成長ホルモン治療で思ったほど伸びないとき」のコラムで説明しています。
Q. 量を増やしてもらえば、1年目のように伸びますか?
A. 量を変えるかどうかは、病気の種類や体重、検査の結果をもとに主治医が判断します。量を増やしても伸びが大きくならなかったという報告もあり、自己判断で量を変えることはしないでください。
Q. 半年の伸びが小さかったのですが、心配ですか?
A. 12か月の伸びでも測定の誤差の影響を受けるとされており、半年の伸びだけで判断するのはさらに難しくなります。1年分の記録と、それまでの伸びの流れで見直しましょう。
まとめ
成長ホルモン治療では、1年目に大きく伸び、2年目以降は伸びの速さが落ち着くことが多いと報告されています。そのうえで、体重と量、打ち忘れ、測り方、甲状腺やほかの薬、思春期の時期など、見直せる理由がないかを1年分の記録で確かめ、主治医と次の方針を相談しましょう。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- Acta Paediatrica Supplement「High-dose growth hormone (GH) treatment in prepubertal GH-deficient children」(Yokoya S ほか、1999年。国内の思春期前の成長ホルモン分泌不全症の男の子を対象にした2つの臨床試験、PubMed)
- Clinical Endocrinology「Predicting the growth response to growth hormone in patients with intrauterine growth retardation」(Frank GR ほか、1996年。米国の思春期前の子ども10人、PubMed)
- PMDA「ノルディトロピン フレックスプロ注 添付文書」(2025年9月改訂 第3版)
- Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism「Observed and predicted growth responses in prepubertal children with growth disorders: guidance of growth hormone treatment by empirical variables」(国際的な成長ホルモン治療のデータベースKIGSの思春期前の子ども、2010年)
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル」
- 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会(厚生労働科学研究班・日本内分泌学会)「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」(日本内分泌学会雑誌 Vol.99 Suppl.、2023年7月、J-STAGE、PDF)
- Endocrine Connections「Treatment burden, adherence, and quality of life in children with daily GH treatment in France」(Coutant R ほか、2023年、毎日型の治療を受けていたフランスの子ども275人、PMC)
- PLoS One「Non-compliance with growth hormone treatment in children is common and impairs linear growth」(ニュージーランドで成長ホルモン治療を受けていた子ども177人の全国調査、2011年、PubMed)
- Archives of Disease in Childhood「The reliability of height and height velocity in the assessment of growth (the Wessex Growth Study)」(Voss LD ほか、1991年、PubMed)
- PMDA「ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル 添付文書」(2026年8月改訂 第3版)
- PMDA「グロウジェクト皮下注 添付文書」
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- ノビケア「お問い合わせ」