成長ホルモン治療読む時間 約8分
思春期が始まってからでも成長ホルモン治療は効く?始める時期と効果の違い
公開日:2026年10月27日 更新日:2026年10月27日
思春期が始まってからでも、骨の端にある骨端線(骨が伸びる部分)が開いていれば、成長ホルモン治療を考える余地はあります。ただ、閉じるまでの残りの期間が短いぶん、思春期の前に始めた場合より上乗せは小さくなりやすいと考えられています。見通しは年齢ではなく、骨年齢、最近1年の伸び、思春期の進み具合で立てます。
思春期に入ってから始めても、意味はありますか?
分かれ目は、思春期に入ったかどうかではなく、骨端線がまだ開いているかどうかです。成長ホルモンは骨端線に働いて骨を長くします。日本小児内分泌学会は、骨端線が閉じたあとは、成長ホルモンが働いても骨は長さの方向に伸びないと説明しています。
成長ホルモン製剤も、骨端線が閉じていない子どもに使う薬として承認されています。思春期が始まったばかりで骨端線に余裕があれば、治療を考える時間は残っています。
一方で同じ学会は、次の場合はほとんど効果がみられないとしています。骨年齢で男子15歳・女子14歳以上の閉じかけの状態と、二次性徴が進んで1年の伸びが2cm以下になった場合です。思春期の「入口」と「終わりのほう」では、見通しが大きく違います。
思春期の前に始めた場合と、何が違うのですか?
大きな違いは、治療で伸びを上乗せできる期間の長さです。思春期に入ると、性ホルモンの働きで骨の成熟が進み、骨端線が閉じる時期に向かいます。思春期の前に始めれば、思春期が来るまでの年月も治療に使えます。
国際的な治療データベース(KIGS)で、原因のはっきりしない成長ホルモン分泌不全症の子ども1,258人(日本人278人を含む)の、大人に近い身長を調べた研究(2006年)があります。治療1年目の伸びと、思春期の前に伸びた分が、全体の伸びと強く関係していました。著者らは、思春期が始まる前に治療することが大切だと結論しています。
この研究は成長ホルモンが足りない病気の子が対象で、病気のない低身長の子にそのまま当てはまるわけではありません。それでも「思春期の前の期間をどれだけ使えるか」が結果に関わる、という手がかりになります。
裏返すと、思春期に入ってから始めるなら、上乗せは小さめに見積もるのが現実的です。小さめでも意味があるかを、家族と本人で話し合って決めます。
思春期の伸びそのものは、治療でどこまで変わりますか?
思春期には、1年で大きく伸びる時期(成長のスパート)があります。日本大学医学部附属板橋病院の解説では、思春期のあいだに伸びる身長は、男の子で平均30cm、女の子で平均25cmです。この伸びは主に性ホルモンの働きによるもので、治療をしなくても起こります。
日本小児内分泌学会の学会誌の総説は、骨端線が閉じるにはエストロゲン(女性ホルモン)が欠かせず、男の子でも同じだと説明しています。成長ホルモン治療は、この骨の成熟の進み方を止めるものではありません。
ですから、思春期に入ってからの治療は「残りの期間に、伸びを少し上乗せする」ものと考えると実際に近くなります。治療中の伸びには思春期の伸びが重なるため、治療の効果だけを取り出して見るのは難しい点も知っておきましょう。
思春期の「どの段階」かで、見通しは変わりますか?
思春期は数年かけて進みます。同じ「思春期に入った」でも、始まったばかりか、伸びのピークを過ぎたかで、残りの期間は違います。次のように分けると整理しやすくなります。
あいち小児保健医療総合センターによると、最初の変化は、女の子の胸のふくらみが平均9歳半ごろ、男の子の精巣が大きくなる変化が平均11歳半ごろです。初潮や声変わりは、思春期に入って1〜2年たってからが多いとしています。日本小児内分泌学会は、女の子は月経が、男の子は声変わりが始まると、その後の伸びはわずかになると説明しています。
家庭から見える変化だけで段階を決めるのは難しく、とくに男の子の精巣の変化は気づきにくいものです。今どの段階かは、診察と骨年齢で確かめます。
- 始まったばかり(女の子は胸のふくらみ、男の子は精巣が大きくなり始めたころ):伸びのピークはこれから。治療を考える時間がまだ残っていることが多い時期です。
- 伸びのピークのころ(女の子は初潮の前、男の子は声変わりのころ):1年の伸びは大きいものの、残りの期間は短くなってきています。
- ピークを過ぎたころ(初潮や声変わりのあと):伸びはゆるやかになり、治療で上乗せできる幅はかなり小さくなります。
病気でない低身長の子では、研究で何が分かっていますか?
検査をしても原因の病気が見つからない低身長(特発性低身長)について、くじで治療を分けた試験(無作為化比較試験)3件・115人をまとめた報告(BMJ誌、2011年)があります。治療を受けた子の大人の身長は、受けなかった子より平均で0.65SD高くなっていました。効果は承認されている病気より平均して小さく、一人ひとりの差がとても大きいとされています。
こうした試験の多くは、思春期の前の子が対象です。
25の研究(子ども1,433人)をまとめた2024年の報告では、特発性低身長の子は、治療を受けたほうが思春期の始まりが平均で半年ほど早くなっていました。思春期の時期も含めて、伸び方を記録で見ていきましょう。
ノビケアでは、こうした研究の数字をお伝えしたうえで、治療をするかどうかを一緒に考えています。
思春期を遅らせて、伸びる期間をのばすことはできますか?
「思春期を遅らせれば、治療できる期間が長くなるのでは」と考える方もいます。米国と欧州の小児内分泌学会の合意声明は、思春期を遅らせる薬で大人の身長が高くなる効果がはっきりしているのは、とても早い年齢で始まった思春期早発症だけとしています。
男の子の低身長に、骨の成熟をゆっくりにする目的で乳がんの薬(アロマターゼ阻害薬)を使った試験もあります。これらをまとめた報告(コクランの系統的レビュー、2015年)も、大人の身長が高くなる根拠は限られていると結論しています。
思春期に入ってからの治療は、時期をずらす工夫より、残りの期間をどう使うかが中心です。くわしくは「思春期を遅らせる治療とは?」のコラムで説明しています。
始めるかどうかは、何を見て決めますか?
思春期に入ってから相談するときは、次の点をそろえると、残りの期間と見込みを考えやすくなります。1年の伸びは、6〜12か月あけて測った記録から計算するのが望ましいとされています。
骨年齢は手のエックス線写真で調べますが、読む人によって0.45〜0.83年ほど差が出ることがあります。境目に近いときは、1回の数字だけで決めず、伸び方の記録と合わせて判断します。
ノビケアでは骨年齢のエックス線検査は行っていません。骨年齢を確かめたほうがよいときは、お近くの医療機関で撮ることをおすすめしています(必須ではありません)。医師が必要と判断した場合は、郵送の血液・尿検査も行います。
- 最近1年の伸び(学校の健康診断の記録でもかまいません)
- 思春期の変化に気づいた時期(胸のふくらみ、初潮、声変わり、ひげなど)
- 骨年齢の結果があれば、その数字と撮った日
- 両親の身長
- 本人が治療をどう考えているか(毎日の注射を続けられそうか)
思春期の子と、治療のことをどう話し合えばよいですか?
思春期に入ってから始める治療は、本人が毎日の注射を受け入れられるかが、とくに大事です。米国の小児病院で8〜14歳の子どもと保護者に聞き取りをした研究(2022年)では、話し合いを覚えていない子もいました。研究者は、年齢に合った言葉でくり返し話すことが大切だとしています。
思春期の子は自分で注射を打つようになる一方、打ち忘れも増えやすくなります。ドイツの研究(2015年)では、思春期の子や自分で注射している子で、決められた回数どおりに打てていない割合が高くなっていました。
見込みも含めて医師から本人に直接説明してもらい、本人が納得してから始めましょう。始めない、と決めることも大切な選択です。
思春期からの成長ホルモン治療についてよくある質問
Q. 小学6年生の娘で、胸がふくらみ始めて1年ほどです。まだ間に合いますか?
A. 初潮の前で伸びが続いているなら、治療を考える時間が残っていることが多い時期です。記録をそろえて、早めに相談しましょう。
Q. 思春期に入ってから始めると、思春期の前に始めた子と同じだけ伸びますか?
A. 同じだけとは考えにくいです。思春期の前の期間を使えないためです。
Q. 治療を始めたら、思春期の伸びが大きくなるのですか?
A. 思春期の伸びは主に性ホルモンによるもので、治療をしなくても起こります。治療で上乗せできるのは、その一部です。
Q. 量を増やせば、短い期間でも取り戻せますか?
A. 量は体重などをもとに医師が決めます。家庭の判断で量を変えないでください。
まとめ
思春期が始まってからでも、骨端線が開いていれば成長ホルモン治療を考える余地はあります。思春期のどの段階かで、見通しは大きく変わります。迷っているあいだにも時間は進みます。最近1年の伸びと思春期の変化をメモして、ノビケアの医師による無料相談(予約は公式LINE)で、今の段階でできることを一緒に確かめましょう。
出典 [17]
ノビケアの成長ホルモン治療について(自由診療)
ノビケアの成長ホルモン治療は自由診療で、健康保険や医療費助成は使えません。原因となる病気が見つからない低身長への使用は、国内で承認された効能・効果に含まれていない適応外使用です。重い副作用が起きた場合でも、国の医薬品副作用被害救済制度は原則として利用できません。
費用(税込)は、医師による無料相談が0円、医師が必要と判断した場合の郵送検査(指先の血液と尿)が20,000円(送料込み)です。お薬は1本あたり、治療を始める月が40,000円、2か月目以降が60,000円、6か月分一括プランでは50,000円です(注射器・注射針と冷蔵便の送料を含みます)。1か月に使う本数は体重によって変わり、2〜5本が目安です。
注射はご自宅で毎日1回行い、治療は年単位になることが多く、続けるかどうかを定期的に判断します。主な副作用は、注射したところの痛み・赤み・腫れ、関節の痛み、むくみ、頭痛などで、まれに頭の中の圧が高くなる、股関節の骨がずれる、側弯が進む、血糖値が上がる、甲状腺の働きが変わる、といったことがあります。詳しくは「成長ホルモン治療について」のページをご覧ください。ご質問はお問い合わせページから受け付けています。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 日本小児内分泌学会「成長ホルモンとは」
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル」
- J Clin Endocrinol Metab「Effect of growth hormone (GH) treatment on the near-final height of 1258 patients with idiopathic GH deficiency: analysis of a large international database」(Reiter EO ほか、2006年、KIGS、日本人278人を含む、PubMed)
- 日本大学医学部附属板橋病院「思春期早発症」
- Clinical Pediatric Endocrinology「Bone age: assessment methods and clinical applications」(日本小児内分泌学会英文誌、2015年、PubMed)
- あいち小児保健医療総合センター「思春期早発症・遅発症「思春期が早い?遅い?治療が必要なの?」」
- 日本小児内分泌学会「低身長」
- BMJ「Impact of growth hormone therapy on adult height of children with idiopathic short stature: systematic review」(Deodati A、Cianfarani S、2011年、無作為化比較試験3件・115人など、PubMed)
- Hormone Research in Paediatrics「Effect of Growth Hormone Therapy on Pubertal Timing: Systematic Review and Meta-Analysis」(Olwi D ほか、2024年、25研究・子ども1,433人の系統的レビュー、PubMed)
- 米国ローソン・ウィルキンス小児内分泌学会・欧州小児内分泌学会「Consensus statement on the use of gonadotropin-releasing hormone analogs in children」(Pediatrics 2009年、PubMed)
- コクラン「Aromatase inhibitors for short stature in male children and adolescents」(2015年)
- American Family Physician「Evaluation of Short and Tall Stature in Children」(米国家庭医学会誌の総説、2015年)
- Journal of Clinical Research in Pediatric Endocrinology「Traditional and New Methods of Bone Age Assessment-An Overview」(Prokop-Piotrkowska M ほか、2021年、PMC)
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- Endocrines「Perceptions of Youth and Parent Decision-Making Roles Regarding Recombinant Human Growth Hormone Treatment」(Fremont ER ほか、2022年、米国の8〜14歳の子ども22人と保護者22人への聞き取り、PMC)
- Hormone Research in Paediatrics「Low Treatment Adherence in Pubertal Children Treated with Thyroxin or Growth Hormone」(Lass N・Reinehr T、2015年、ドイツで成長ホルモン治療を受けていた子ども103人ほか、PubMed)
- ノビケア「お問い合わせ」