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大人の成長ホルモン分泌不全症とは?子どものころの治療との関係

公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日

大人の成長ホルモン分泌不全症は、大人の体で成長ホルモンが足りないために、疲れやすさや気力の低下、体脂肪の増加、筋肉や骨の量の減少、脂質の異常などが起こる病気です。子どものころに成長ホルモン分泌不全症で治療を受けた人の一部は、大人になっても不足が続くため、治療を終える時期に再検査で確かめます。保険で治療できるのは、基準を満たす重症の場合です。

大人の成長ホルモン分泌不全症とは?

日本内分泌学会は、大人の成長ホルモン分泌不全症を、大人になってからの成長ホルモンの分泌の障害によって、生活の質が下がり、体脂肪が増え、筋肉や骨の量が減る病気だと説明しています。国内の患者数は約3万6,000人と推定されています。

日本小児内分泌学会も、成長ホルモンがほとんど出ない重症の成長ホルモン分泌不全症では、大人になってから、メタボリックシンドロームに似た体の異常や生活の質の低下が起こることが分かっていると説明しています。成長ホルモンは背を伸ばすだけでなく、大人になってからも体の組成や代謝を保つ働きをしているためです。

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どんな症状や変化がある?

日本内分泌学会などの診療ガイドライン(2023年版)の手引きでは、次のような症状や検査の変化が挙げられています。主に心臓や血管の合併症が増えることで、亡くなる人の割合が高くなるともされています。

ただし、疲れやすさや気力の低下は、ほかの多くの病気や生活の状況でも起こります。こうした症状だけでこの病気かどうかは判断できず、原因となる病気や治療歴があるかどうかと、検査の結果をあわせて診断します。

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原因には、どんなものがある?

同じ手引きは、原因として、脳の中の病気、手術や放射線治療を受けたこと、頭のけがやくも膜下出血、お産のときの異常(骨盤位の分娩や仮死など)、遺伝子の異常、小児がんの治療を受けたこと、原因が分からないもの(特発性)などを挙げています。子どものころに始まる場合と、大人になってから始まる場合があります。

始まった時期主な原因の例
子どものころ子どものころの成長ホルモン分泌不全症が続いている、生まれつきの下垂体の異常、お産のときの異常、脳腫瘍や小児がんの治療
大人になってから下垂体腫瘍などの脳の病気、その手術や放射線治療、頭のけが、くも膜下出血、下垂体の炎症

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子どものころの成長ホルモン治療と、どう関係する?

診療ガイドラインの手引きは、子どものころに成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断されて治療を受けた人でも、大人になると分泌刺激試験で正常な反応を示すことがあるため、再度の検査が必要だとしています。とくに重症の人を中心に、大人の成長ホルモン分泌不全症と診断される場合があるとされます。

日本小児内分泌学会の移行期ガイドは、子どものころに成長ホルモンだけが足りないと診断された人の約半数は、大人になって再検査すると正常な分泌を示すとしています。一方で、下垂体のホルモンが3種類以上足りない場合は、不足は続くとされています。米国内分泌学会の診療ガイドライン(2011年)も、子どものころから続く遺伝子や脳の構造の異常がはっきりしている場合を除き、原則として分泌刺激試験で確かめる必要があるとしています。

再検査の時期や流れは「成長ホルモン治療を終えたら:大人の診療への引き継ぎと検査」のコラムで説明しています。再検査で重症と診断された場合は、子どもの治療から切れ目なく成長ホルモンの補充を続けることが大切だとされています。

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どうやって診断する?

診断には、薬を使って成長ホルモンの出方を調べる分泌刺激試験を行います。使う薬は、インスリン、アルギニン、グルカゴン、GHRP-2のいずれかです。子どものころの成長障害、または脳の病気やその治療歴、お産のときの異常などがあることを確かめたうえで、原則として2種類以上の試験で基準を満たす必要があります。脳の病気などがあり、成長ホルモンを含む複数の下垂体ホルモンが足りない場合は、1種類の試験で診断できます。

血液中のIGF-1が低いことは参考になりますが、IGF-1が正常範囲でもこの病気は否定できません。また、甲状腺の働きが低い状態や、強い肥満、一部の薬の使用などでは、試験で実際より低い反応が出ることがあります。インスリンを使う試験は、心臓の血管の病気やけいれんの発作がある人には行いません。

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治療は?保険が使えるのは、どんな場合?

治療は、成長ホルモン製剤の注射で足りない分を補います。日本内分泌学会は、寝る前に注射し、毎日打つ製剤と週1回打つ製剤があると説明しています。診療ガイドラインの手引きでは、少ない量から始め、症状と血液中のIGF-1を見ながら量を調整するとしています。ほかのホルモンも足りない場合は、まずそれらの補充が大切で、とくに副腎皮質ホルモンの補充が最優先です。

保険で治療できるのは、大人の成長ホルモン分泌不全症のうち、重症の基準を満たす人だけです。成長ホルモン製剤の添付文書でも、効能は「成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)」とされています。重症の基準は、インスリン・アルギニン・グルカゴンの試験で成長ホルモンの最も高い値が1.8ng/mL以下、GHRP-2の試験では9ng/mL以下です。重症ではない人への治療は、今後の検討課題とされています。

治療を始めたころに、手足のむくみ、手首の神経が圧迫されて手がしびれる手根管症候群、関節や筋肉の痛みがみられることがありますが、多くは量を減らしたり治療を続けたりするうちに消えるとされています。妊娠中の人や悪性腫瘍がある人には使いません。また、下垂体前葉機能低下症(指定難病78)として、基準を満たせば医療費の助成を受けられる場合があります。

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大人が身長を伸ばすために使うことはできる?

できません。骨端線が閉じて身長の伸びが止まったあとは、成長ホルモンを使っても背は伸びません。大人の成長ホルモン分泌不全症の治療の目的は、生活の質の改善や、体組成・代謝の異常を正すことで、身長のためではありません。

日本小児内分泌学会は、成長ホルモンの分泌が足りない状態がない大人への治療について、安全性や有用性の十分な科学的根拠は示されていないとし、若返りや運動能力の向上を期待した誤った使用例が報告されていることにも触れています。

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大人の成長ホルモン分泌不全症についてよくある質問

Q. 子どものころに成長ホルモン治療を受けた人は、全員が大人になっても治療が必要ですか?

A. いいえ。成長ホルモンだけが足りなかった人では、大人になって再検査すると正常な分泌を示す人も多くいます。治療を終える時期に、再検査について主治医と相談してください。

Q. 疲れやすいのは、成長ホルモンが足りないせいでしょうか?

A. 疲れやすさには多くの原因があり、症状だけでは判断できません。脳の病気や手術、放射線治療を受けたことがある、子どものころに成長ホルモン治療を受けたなどの経緯がある場合は、内分泌の専門の医師に相談しましょう。

Q. ターナー症候群やSGA性低身長症で治療を受けていた場合も、再検査が必要ですか?

A. これらの治療は、成長ホルモンの不足を理由としたものではないため、考え方が違います。大人になってからの健康管理は、もとの病気ごとに主治医と確かめてください。

まとめ

大人の成長ホルモン分泌不全症は、背を伸ばすためではなく、体の組成や代謝、生活の質を保つために治療を考える病気です。子どものころに成長ホルモン分泌不全症で治療を受けた人は、治療を終える時期に再検査で大人の治療の要否を確かめます。お子さまの伸び方が気になる場合は、ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話)でご相談いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。

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この記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。

参考にした資料

  1. 日本内分泌学会「成人成長ホルモン(GH)分泌不全症」
  2. 日本小児内分泌学会「成長ホルモンとは」
  3. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会(厚生労働科学研究班・日本内分泌学会)「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」(日本内分泌学会雑誌 Vol.99 Suppl.、2023年7月、J-STAGE、PDF)
  4. 日本小児内分泌学会「移行期医療支援ガイド 複合型下垂体ホルモン分泌不全症」(PDF)
  5. 米国内分泌学会「Evaluation and treatment of adult growth hormone deficiency: an Endocrine Society clinical practice guideline」(J Clin Endocrinol Metab、2011年、PubMed)
  6. PMDA「ノルディトロピン フレックスプロ注 添付文書」(2025年9月改訂 第3版)
  7. 難病情報センター「下垂体前葉機能低下症(指定難病78)」
  8. ノビケア「お問い合わせ」