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低身長の原因と成長ホルモンのしくみ読む時間 約6分

汎下垂体機能低下症とは?成長ホルモン以外のホルモンも足りないとき

公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日

下垂体は、成長ホルモンのほかに、甲状腺・副腎・精巣や卵巣の働きを調節するホルモンや、尿の量を調節するホルモンも出しています。これらがまとめて足りなくなる状態を下垂体機能低下症といい、前葉のホルモンがすべて足りないものを汎下垂体機能低下症と呼びます。生まれつきのものと、脳腫瘍やその治療などで後から起こるものがあります。足りないホルモンを薬で補う治療を長く続け、とくに副腎のホルモンが足りない場合は、熱や嘔吐のときの対応を家族が知っておくことが大切です。

下垂体機能低下症とは、どんな病気?

難病情報センターは、下垂体から出るホルモンとして、成長ホルモン(GH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、性腺刺激ホルモン(LH・FSH)、プロラクチン、抗利尿ホルモン(ADH)を挙げています。前葉のホルモンがすべて障害されているものを汎下垂体機能低下症、複数のホルモンがさまざまな程度に障害されているものを複合型下垂体機能低下症、1つだけが欠けるものを単独欠損症と呼びます。

成長ホルモンだけが足りない場合については、「成長ホルモン分泌不全性低身長症」のコラムで説明しています。このコラムでは、ほかのホルモンも足りない場合に、何に気をつけるかを中心にまとめます。

足りなくなるホルモン主な働き足りないときに起こりうること
成長ホルモン(GH)背の伸び、体の代謝子どもでは背の伸びが落ちる
甲状腺刺激ホルモン(TSH)甲状腺ホルモンを出させる元気が出ない、寒がり、伸びが落ちる
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)副腎からコルチゾールを出させる疲れやすい、食欲が落ちる、低血糖、病気のときに急に具合が悪くなる
性腺刺激ホルモン(LH・FSH)精巣・卵巣を働かせる思春期が始まらない、進まない
抗利尿ホルモン(ADH、後葉)尿の量を減らすのどが渇き、水をたくさん飲み、尿が多い(中枢性尿崩症)

出典 [1] [2]

どんなことが原因になる?

難病情報センターは、脳や下垂体の腫瘍(頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍など)、炎症、頭のけがや手術によるものが多いとしています。小児がんの治療を受けた人でも起こることが報告されています。頭蓋咽頭腫などの脳腫瘍と成長の関係は「脳腫瘍(頭蓋咽頭腫など)と成長」のコラムで説明しています。

生まれつきのもの(先天性下垂体機能低下症)は、新生児期の様子を中心にまとめた総説(2021年)では、出生4,000〜10,000人に1人とされています。遺伝子の変化(POU1F1、PROP1など)が見つかる例もありますが、総説によると、80〜90%では遺伝的な原因が分かっていません。

出典 [1] [3]

赤ちゃんや子どもでは、どんなサインがある?

前の総説は、成長ホルモンが足りなくても、おなかの中での育ちにはあまり影響しないため、生まれたときの身長や体重はふつうのことが多く、生まれたあとに伸びが落ちてくると説明しています。

新生児期には、次のようなことがきっかけで見つかることがあります。小児慢性特定疾病情報センターも、足りないホルモンの組み合わせによってさまざまな症状が出るとしています。

なお、甲状腺の新生児マススクリーニングについての総説(2025年)は、TSHを測る方法では、下垂体が原因の甲状腺機能低下症は見つからないと説明しています。日本の一部の地域ではTSHと甲状腺ホルモン(遊離T4)を一緒に測る方法がとられていると紹介されています。同じ総説は、下垂体が原因の先天性甲状腺機能低下症は1万3,000〜3万人に1人ほどで、その61〜98%にほかの下垂体ホルモンの不足もあると紹介しています。スクリーニングで異常がなかったことだけで、この病気がないとは言えません。

出典 [3] [2] [4]

どうやって診断する?

血液でそれぞれのホルモンを測り、必要に応じて薬を使ってホルモンの出方を調べる試験(分泌刺激試験)を行います。頭のMRIで下垂体の形や周りの病気を確かめます。新生児期は、成長ホルモンの刺激試験を行うことができないため、伸び方、MRI、IGF-1などの値をあわせて判断すると前の総説は説明しています。

低血糖で急に見つかった場合は、副腎のホルモン(コルチゾール)の不足を確かめ、あれば急いで治療します。尿の量を調節するホルモンの不足(中枢性尿崩症)については、難病情報センターの診断基準で、子どもでは1日の尿量が体表面積1平方メートルあたり2,000mL以上であることなどが目安に挙げられています。頭のMRIについては「低身長で頭のMRI検査をするのはなぜ?」のコラムで説明しています。

出典 [3]

治療は、どのように行う?

治療は、足りないホルモンを薬で補う「補充療法」です。難病情報センターは、下垂体のホルモンは飲み薬では効かないため、ふつうは、その指示を受けて体の別の場所で作られるホルモン(甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンなど)を補うと説明しています。成長ホルモンは注射で補い、子どもでは早くから始めて、大人になったときの身長が標準に近づくことを目標にするとしています。

大切なのは順番です。小児慢性特定疾病情報センターは、副腎のホルモンの不足がある場合、甲状腺ホルモンを先に始めると副腎の働きの不足が表に出るおそれがあるため、副腎皮質ホルモンを先に始めるとしています。

出典 [1] [2]

熱や嘔吐のときは、どうする?

副腎のホルモンが足りない人では、体に負担がかかったときに、ふだんの量では足りなくなります。難病情報センターは、感染症、発熱、けがなどのときは量を2〜3倍に増やすとし、前の総説も、病気やストレスのときは量を2倍か3倍にするとしています。子どもの量や増やし方は、体の大きさや状態で違うため、主治医から前もって具体的に聞いておきましょう。

吐いて薬が飲めない、ぐったりしている、意識がぼんやりしているといったときは、すぐに医療機関に連絡してください。意識がおかしい、けいれんがあるといったときは119番に連絡してください。災害時の備えについては、日本内分泌学会の副腎皮質機能低下症の災害時マニュアルも参考になります。

出典 [1] [3] [5]

下垂体機能低下症についてよくある質問

Q. 成長ホルモンの治療が終わったら、ほかの薬もやめられますか?

A. 副腎や甲状腺のホルモンは、大人になってからも補充が続くことが多いとされます。小児慢性特定疾病情報センターは、今は副腎の働きが正常でも、年とともに低下してくることがあるとしています。大人の診療への引き継ぎは主治医と相談してください。

Q. 大人になっても成長ホルモンは必要ですか?

A. 難病情報センターは、大人では検査で重い成長ホルモンの不足を確かめたうえで、少ない量から注射を始めるとしています。くわしくは「大人の成長ホルモン分泌不全症とは?」のコラムで説明しています。

Q. 医療費の助成はありますか?

A. 先天性・後天性の下垂体機能低下症は小児慢性特定疾病の対象に含まれています。条件や申請の流れは「小児慢性特定疾病の医療費助成」のコラムを参考にしてください。

出典 [2] [1] [6]

まとめ

下垂体機能低下症では、成長ホルモンだけでなく、副腎・甲状腺・性ホルモンや尿の量を調節するホルモンも足りなくなることがあり、専門の医療機関で補充療法を続けます。副腎のホルモンが足りない場合は、熱や嘔吐のときの対応を家族が知っておくことが大切です。伸び方が気になる場合は、医師による無料相談(ビデオ通話)で記録を見ながらご相談いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。検査が必要な場合や、保険診療の対象になりうる場合は、対面の医療機関をご紹介します。

出典 [7]

お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。

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この記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。

参考にした資料

  1. 難病情報センター「下垂体前葉機能低下症(指定難病78)」(下垂体性ADH分泌異常症などとあわせた解説と診断基準)
  2. 小児慢性特定疾病情報センター「先天性下垂体機能低下症 概要」
  3. Frontiers in Pediatrics「Congenital Hypopituitarism During the Neonatal Period: Epidemiology, Pathogenesis, Therapeutic Options, and Outcome」(Bosch i Ara L ほか、2021年、PMC)
  4. European Thyroid Journal「Newborn screening for central congenital hypothyroidism: past, present and future」(Garrelfs MR ほか、2025年、PMC)
  5. 日本内分泌学会「副腎皮質機能低下症患者さんのための災害時マニュアル」(PDF)
  6. 小児慢性特定疾病情報センター「小児慢性特定疾病 対象疾病一覧(令和7年4月1日版)」(PDF)
  7. ノビケア「お問い合わせ」