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セリアック病と子どもの身長:日本ではまれ?検査が考えられる場合
公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日
セリアック病は、小麦・大麦・ライ麦に含まれるグルテンに体が反応して小腸が傷つく病気で、栄養がうまく吸収できずに背の伸びが落ちることがあります。日本では遺伝的になりやすい体質の人が少なく、報告もまれとされていますが、ゼロではありません。おなかの症状や体重の増えにくさ、貧血などが続くときや、合併しやすい病気があるときに、医師が検査を考えます。検査の前に自己判断で小麦をやめると正しく診断できなくなるため、まず相談してください。
セリアック病とは、どんな病気?
セリアック病は、グルテンというたんぱく質を食べたときに、免疫のしくみが自分の小腸を攻撃してしまう病気です。日本の大学の小児科がまとめた総説(2023年)は、遺伝的になりやすい体質の人がグルテンをとることで起こり、世界の一般人口では約1%にみられると説明しています。
小腸の内側には、栄養を吸収するための細かいひだ(絨毛)があります。炎症が続くとこのひだが平らになり、食べたものの栄養が十分に吸収できなくなります。食後すぐにじんましんなどが出る小麦アレルギーとは、しくみも検査も別の病気です。
症状は人によって大きく違います。下痢や腹痛などおなかの症状がはっきり出る子もいれば、おなかの症状がほとんどなく、背の伸びの遅れや貧血だけが目立つ子もいます。
なぜ、背の伸びに影響するの?
栄養が十分に吸収できない状態が続くと、体重の増え方や身長の伸びが落ちることがあります。成長期に長く続くと、思春期が遅れることもあります。
低身長の子どもでどのくらいセリアック病が見つかるかを調べた研究をまとめた分析(17研究・3,759人)では、組織の検査で確かめられた割合は、原因を調べる前の低身長の子で7.4%、ほかの原因が見つからなかった低身長の子で11.6%でした。ただし著者らは、対象の選び方の偏りが大きく、研究ごとの差も大きいと述べています。日本のようにセリアック病が少ないとされる国の子どもに、この割合をそのまま当てはめることはできません。
日本では、まれな病気なの?
日本で少ないと考えられている理由はいくつかあります。前の総説によると、セリアック病になりやすい遺伝的な型(HLA-DQ2)を持つ人は日本では0.3〜0.6%ととても少なく、もう一つの型(HLA-DQ8)は8〜10%で欧米と同じくらいです。また、日本人の小麦の摂取量は欧米の約3分の1とされ、お米が主食であることも挙げられています。
島根県の成人2,008人の血液を調べた研究では、最初の抗体検査で基準を超えた人が161人いましたが、確かめのための別の抗体はすべて陰性で、組織の検査でセリアック病と確かめられたのは1人(0.05%)でした。原因の分からないおなかの症状が続く47人では、1人(2.1%)が診断されています。総説の時点で日本から報告された患者さんは大人が中心で、子どもの報告は見当たらないとされています。
一方で、抗体の値が少し高いだけでは、セリアック病とは決まりません。おなかの症状などで内視鏡検査を受けた日本の子ども84人を調べた研究では、5人(5.9%)で抗体が基準を超えましたが、小腸の組織でセリアック病の所見があった子はいませんでした。結果は、専門の医師が組み合わせて判断します。
どんなときに、検査が考えられる?
欧州小児栄養消化器肝臓学会(ESPGHAN)の2020年のガイドラインの要約では、次のような症状や病気があるときに、セリアック病の検査を考えるよう挙げています。日本でどの子に検査をするかは、症状や経過を見て医師が判断します。
- 下痢や便秘、腹痛が長く続く、またはくり返す。おなかがふくれている
- 体重が減る、体重が増えにくい
- 思春期が遅い、月経が止まる
- 鉄剤で治りにくい鉄欠乏性貧血が続く
- 骨が弱い、骨折をくり返す
- 口内炎をくり返す、歯のエナメル質の異常、肝臓の検査値の異常
- 家族(親・きょうだい)にセリアック病の人がいる
- 1型糖尿病、甲状腺の自己免疫の病気、ダウン症候群、ターナー症候群、ウィリアムズ症候群、IgA欠損症がある
出典 [2]
どうやって調べるの?
ESPGHANのガイドラインでは、最初の検査として、血液の総IgAと、組織トランスグルタミナーゼに対するIgA抗体(TGA-IgA)を測ることを勧めています。総IgAが低い子では、抗体が低く出てしまうため、IgGの種類の抗体を調べます。結果が陽性なら、小児の消化器の専門医に紹介するとしています。
抗体の値が基準の上限の10倍以上と高く、別の日の採血で別の抗体(EMA-IgA)も陽性であれば、家族と相談したうえで、小腸の組織検査をせずに診断できる場合があるとされています。値がそれより低い場合は、内視鏡で十二指腸の組織を複数とって調べます。遺伝的な型(HLA-DQ2・DQ8)の検査は診断に必須ではありませんが、どちらもなければセリアック病の可能性はとても低いとされています。抗体が陽性でも組織の変化がない、またはごく軽い場合は「潜在的なセリアック病」として、経過を見ていくとしています。日本でどの検査がどこで受けられるかは、医療機関によって違います。
検査の前に、小麦をやめてもいい?
検査の前に、自分の判断で小麦やグルテンを抜くのはやめましょう。ESPGHANの要約では、検査は、ふだんどおりの量のグルテンを食べていることを確かめてから行うとしています。前の総説も、グルテンを含む食事をしている時期に調べないと、抗体が低く出て見落とすおそれがあると説明しています。
また、診断がついていないまま主食や食品を除くと、エネルギーや鉄、カルシウムなどが足りなくなるおそれがあります。食事の制限が成長に与える影響は「食物アレルギーで除去食の子の身長と栄養」のコラムでも説明しています。
治療をすると、背の伸びは戻る?
治療の基本は、グルテンを含む食品を厳しく除く食事を、ずっと続けることです。総説は、厳しいグルテン除去で症状や腸の傷み、生活の質がよくなると説明しています。小麦は、パンや麺類だけでなく、しょうゆやルウ、加工食品などにも使われています。食事の内容は、専門の医師や管理栄養士と相談しながら決めます。
イタリアで2〜18歳の439人を調べた研究では、グルテン除去を始めてから約2年のあいだに、身長と体重の値が同じ年齢の標準に近づいていました。診断のときの年齢が低いほど、伸びの回復が大きい傾向がありました。ただし、回復の程度には個人差があります。
食事を続けても伸びが追いつかないときは、食事の守り方を見直すほか、ほかの原因が重なっていないかを主治医が確かめることがあります。
セリアック病と身長についてよくある質問
Q. 小麦を食べるとおなかが痛くなります。セリアック病でしょうか?
A. 小麦で症状が出る理由には、小麦アレルギーなどほかの原因もあり、症状だけでは分かりません。食べるのをやめる前に、小児科で相談してください。
Q. 低身長の検査で、必ずセリアック病の検査をしますか?
A. 一律ではありません。海外のガイドラインには低身長の子で調べることを勧める考え方もありますが、日本ではまれとされているため、症状や経過、ほかの検査の結果を見て医師が判断します。
Q. グルテンフリーの食品を食べると、背が伸びますか?
A. セリアック病でない子が、グルテンを抜いて背が伸びるという根拠はありません。必要のない制限は、栄養が偏る原因になります。
まとめ
セリアック病は日本ではまれとされますが、背の伸びの遅れや貧血、おなかの症状が続くときに検査が考えられる病気です。検査の前に小麦をやめず、まず医師に相談しましょう。伸び方が気になる場合は、医師による無料相談(ビデオ通話)で記録を見ながらご相談いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。検査が必要な場合や、保険診療の対象になりうる場合は、対面の医療機関をご紹介します。
出典 [8]
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公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- International Journal of Molecular Sciences「Celiac Disease Genetics, Pathogenesis, and Standard Therapy for Japanese Patients」(日本のセリアック病に関する総説、2023年、PubMed)
- 欧州小児栄養消化器肝臓学会(ESPGHAN)「New Guidelines for the Diagnosis of Paediatric Coeliac Disease(ESPGHAN Advice Guide)」(2020年ガイドラインの要約、PDF)
- Journal of Gastroenterology and Hepatology「Prevalence of celiac disease in patients with short stature: A systematic review and meta-analysis」(Singh AD ほか、2021年、17研究・3,759人、PubMed)
- Journal of Gastroenterology「Celiac disease in non-clinical populations of Japan」(Fukunaga M ほか、2018年、日本の成人2,008人の調査、PubMed)
- Pediatrics International「Serum positivity of serum anti-tissue transglutaminase immunoglobulin A antibodies in Japanese children with inflammatory bowel disease」(Kurasawa S ほか、2023年、日本の子ども84人、PubMed)
- Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition「European Society Paediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition Guidelines for Diagnosing Coeliac Disease 2020」(Husby S ほか、欧州小児栄養消化器肝臓学会の診断ガイドライン、2020年、PubMed)
- European Journal of Pediatrics「Changes in the anthropometric measurements in children and adolescents with coeliac disease over a two-year follow-up」(Siccardo F ほか、2025年、イタリアの439人、PubMed)
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