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低身長の原因と成長ホルモンのしくみ読む時間 約6分
キャッチアップ成長とは?病気や栄養不足のあとに身長が追いつくしくみ
公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日
キャッチアップ成長(追いつき成長)とは、病気や栄養不足などで身長の伸びが落ちていた子が、その原因がよくなったあとに、年齢の標準よりも速く伸びて、もとの成長曲線の線に近づこうとすることです。骨の伸びる力が「温存」されていたことによると考えられています。ただし、原因が続いた期間や年齢によっては、十分に追いつかないこともあります。
キャッチアップ成長とは?
子どもの身長は、ふつうは成長曲線の同じような線に沿って伸びていきます。ところが、病気や栄養不足などで伸びが妨げられると、線から下にずれていきます。
米国とアルゼンチンの研究者らによる2013年の総説は、伸びが妨げられた期間のあと、体の成長はただ元の速さに戻るだけでなく、ふつうより速くなることが多いと説明しています。この「ふつうより速く伸びて、元の線に戻ろうとする」現象をキャッチアップ成長と呼びます。日本語では追いつき成長ともいいます。
出典 [1]
なぜ、あとから速く伸びられるの?
骨の端にある成長板(骨端線)では、軟骨の細胞が増えることで骨が伸びます。成長板は年齢とともに「老化」し、細胞の増え方がゆっくりになって、最後には伸びが止まります。2011年の総説では、成長板のもとになる細胞が分裂できる回数には限りがあり、使うにつれて少なくなっていくと考えられています。
同じ総説によると、ステロイドが多すぎる状態や甲状腺ホルモンが足りない状態など、成長を妨げる状態のあいだは、この成長板の老化も遅れます。そのため、原因がよくなったときには、成長板が年齢のわりに若い状態に保たれていて、年齢の標準より速く伸びると説明されています。セリアック病(小麦などのたんぱく質で腸に炎症が起こる病気)の子では、追いつきの時期の伸びの速さが、実際の年齢ではなく、身長や骨年齢から見た「より年下の子」に近かったという観察も紹介されています。
出典 [2]
どんなときに見られる?
キャッチアップ成長は、伸びを妨げていた原因がよくなったときに見られます。主な例は次のとおりです。
どの場合も、まず原因になっている病気や状態を見つけて治療することが優先になります。原因がはっきりしないまま身長だけを伸ばそうとしても、追いつきは期待しにくいと考えられます。
- 小さく生まれた子(SGA):多くは2歳ごろまでに標準の範囲に追いつく
- 栄養不足:十分に食べられるようになると、伸びが戻ることが多い
- 甲状腺ホルモンが足りない病気:お薬で補うと伸びが速くなる
- ステロイドが多すぎる病気(クッシング病など):治療のあとに伸びが戻ることがある
- 炎症性腸疾患などの慢性の病気:病気と栄養の状態が落ち着くと伸びが改善することがある
小さく生まれた子の追いつきは?
日本小児内分泌学会の手引きによると、妊娠週数に比べて小さく生まれた子(SGA)の約90%は、生まれてから2年以内に標準の範囲の身長に追いつきます。2歳を過ぎても追いつかない場合は、子どもの時期を通して低身長のまま経過することが多く、SGA性低身長症として成長ホルモン治療の対象になることがあります。
くわしくは「SGA性低身長症とは?」と「出生体重・早産と将来の身長」のコラムで説明しています。
出典 [3]
栄養不足や病気のあとの追いつきは?
イスラエルの研究者らによる2015年の総説(Nutrients誌)は、栄養が回復すると多くの場合は自然に追いつき成長が起こる一方、追いつきが十分でなく身長の差が残る場合もあるとしています。体重の増え方と身長の関係は「やせている子は背が伸びにくい?」のコラムで説明しています。
英国で子どものころにクッシング病の治療を受けた10人を調べた研究(2000年)では、治療のあとに伸びが追いつき、最終身長(または最後に測った身長)と両親から見込まれる身長との差は、診断時より小さくなっていました。ただし、この研究では治療後に成長ホルモンが不足した人が多く、成長ホルモンの補充も追いつきに役立った可能性があるとしています。
十分に追いつかないのは、どんなとき?
キャッチアップ成長が起こっても、元の線まで戻りきらないことがあります。米国で、子どものころに重い甲状腺機能低下症と診断された24人を大人になるまで追った研究(1988年、NEJM誌)では、治療で甲状腺の働きを正常に保っても、大人の身長は平均より約2SD低く、両親から見込まれる身長にも届きませんでした。治療を始めてから1年半ほどのあいだ、身長の伸びより骨の成熟のほうが速く進んでおり、身長の不足は治療前に病気が続いた期間の長さと関係していました。
英国の研究者らによる2020年のシステマティックレビューでも、子どもの摂食障害では回復後に身長が追いつく様子が多くの研究で見られた一方、すべての子で十分に追いつくわけではないとされています。発症の年齢が低いことや、病気の期間が長いことが、成長の遅れにつながる可能性があるとしています。
身長が伸びるのは骨端線が閉じるまでです。原因が長く続いたり、思春期の終わり近くまで見つからなかったりすると、追いつくための時間が足りなくなります。伸びが落ちたことに早く気づくことが大切なのは、このためです。
ステロイドのお薬を使っている子では?
成長板の老化が遅れるしくみを示した研究には、ステロイドが多すぎる状態を扱ったものが含まれています。病気の治療でステロイドの飲み薬や注射を長く使う子では、伸びが落ちることがあり、量が減ったりやめられたりしたあとに伸びが戻ることがあると考えられます。
ただし、ステロイドは病気を抑えるために必要なお薬です。身長を理由に自己判断で減らしたりやめたりせず、主治医に相談してください。ぜんそくの吸入ステロイドと身長の関係は「ぜんそくの吸入ステロイドは身長に影響する?」のコラムで説明しています。
「あとから追いつく」と言われる体質とは、どう違う?
思春期が遅めの体質の子は、まわりより遅れて思春期の伸びが始まり、あとから追いつくように伸びることがあります。これは病気で伸びが落ちたあとの回復ではなく、成長の時期がずれているものです。くわしくは「背は低いけれど元気な子」のコラムで説明しています。
一方で、「そのうち追いつく」と考えているあいだに、病気による伸びの低下を見逃してしまうこともあります。伸びの線が下がってきたときは、体質か病気かを自分で決めずに小児科で相談しましょう。
出典 [9]
家庭では、どんなことに気をつければよい?
キャッチアップ成長に気づくにも、伸びの低下に気づくにも、身長と体重の記録が役立ちます。母子健康手帳や学校の記録を成長曲線に書き込み、線の形を見ておきましょう。
病気の治療中や治療のあとに伸びが戻ってこないと感じたら、主治医に成長曲線を見てもらい、追いつきの途中なのか、ほかの原因があるのかを確かめてもらいましょう。身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で記録を見ながらご相談いただけます。
キャッチアップ成長についてよくある質問
Q. 病気が治れば、必ず元の身長の線に戻りますか?
A. 戻ることが多いものの、原因が続いた期間や年齢、思春期の時期によっては、差が残ることがあります。
Q. 追いついている途中かどうかは、どう分かりますか?
A. 1年あたりの伸びが同じ年齢の標準より大きく、成長曲線の線を上向きに横切っていれば、追いつきの途中と考えられます。医師に記録を見てもらいましょう。
Q. 早く追いつかせるために、たくさん食べさせたほうがよいですか?
A. 必要な栄養をとることは大切ですが、食べすぎで身長が速く伸びるわけではありません。食事の量は医師や栄養士と相談しましょう。
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まとめ
キャッチアップ成長は、伸びを妨げていた原因がよくなったあとに、年齢の標準より速く伸びて元の線に戻ろうとする現象で、成長板の伸びる力が温存されていたためと考えられています。ただし、原因が長く続くと十分に追いつかないことがあるため、伸びが落ちたことに早く気づき、原因を確かめることが大切です。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- World Review of Nutrition and Dietetics「Catch-up growth: cellular and molecular mechanisms」(キャッチアップ成長のしくみに関する総説、2013年、PMC)
- Endocrine Development「Growth plate senescence and catch-up growth」(成長板の老化とキャッチアップ成長に関する総説、2011年、PMC)
- 日本小児内分泌学会「SGA性低身長症におけるGH治療の手引き」
- Nutrients「Nutritionally-induced catch-up growth」(栄養と追いつき成長に関するレビュー、2015年、PubMed)
- Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism「Linear growth and final height after treatment for Cushing's disease in childhood」(英国、子どものころにクッシング病の治療を受けた10人、2000年)
- Translational Pediatrics「Growth failure in pediatric onset inflammatory bowel disease: mechanisms, epidemiology, and management」(2019年、PubMed)
- New England Journal of Medicine「Long-term growth in juvenile acquired hypothyroidism: the failure to achieve normal adult stature」(1988年、PubMed)
- Journal of Adolescent Health「What Are the Effects of Restrictive Eating Disorders on Growth and Puberty and Are Effects Permanent? A Systematic Review and Meta-Analysis」(2020年、PubMed)
- 日本小児内分泌学会「低身長」
- ノビケア「お問い合わせ」