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成長ホルモン治療と側弯症:治療中に背中を確認する理由
公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日
側弯症は、背骨がねじれを伴いながら左右に曲がる状態で、背が伸びる時期に進みやすいことが知られています。成長ホルモン製剤の添付文書には、子どもでは治療中に側弯が過度に進むおそれがあるとして、診察やエックス線検査で定期的に確かめるよう書かれています。治療で側弯が増えるかどうかは研究によって結果が分かれているため、治療中は家でもときどき背中を見て、気になる変化を主治医に伝えましょう。
側弯症とは、どんな状態?
慶應義塾大学病院の解説では、側弯症は正面から見たときに、背骨がねじれを伴いながら左右に曲がっている状態で、曲がりの角度(コブ角)が10度以上のものをいうとされています。装具治療の対象となる20〜30度以上の側弯症は0.3〜0.5%、手術が必要になる可能性がある40度以上は0.1%以下と説明されています。
日本整形外科学会は、側弯症の多くは原因の分からない特発性側弯症で、背骨が成長する思春期に悪化する場合が多いとしています。姿勢の悪さとは別のもので、姿勢を正すだけで治るものではありません。姿勢との違いは「姿勢・猫背は身長に影響する?」のコラムでも説明しています。
成長ホルモン治療中に、背中を確認するのはなぜ?
毎日型の成長ホルモン製剤の添付文書には、「小児では、脊柱変形(側弯)が過度に進行するおそれがある」として、治療中は診察(理学的検査)やエックス線検査などを定期的に行い、よく観察するよう書かれています。副作用の一覧にも「側弯症等の脊柱変形の進行」が挙げられています。日本内分泌学会などがまとめた診療ガイドライン(2023年版)の治療の手引きも、注意するべき有害事象の一つに側弯症を挙げています。
背が速く伸びる時期は、もともと側弯が進みやすい時期です。成長ホルモン治療で伸びが速くなると、そのぶん背骨の変化にも目を配る必要があると考えられています。
同じ手引きは、側弯症のほかに大腿骨頭すべり症も注意するべき有害事象に挙げています。治療中の診察では、背骨とあわせて足のつけ根やひざの痛み、歩き方の変化も確かめます。運動のときの注意は「成長ホルモン治療中に運動・部活はしてよい?」のコラムで説明しています。
治療で側弯症は増える?研究で分かっていること
研究の結果は分かれています。韓国で特発性低身長の1,128人を調べた研究(Journal of Pediatric Endocrinology and Metabolism、2021年)では、治療前に側弯がなかった1,093人のうち3.7%に新たに側弯がみられましたが、製剤の種類や治療期間との関係はみられませんでした。治療前から側弯があった67人では16.4%で進みましたが、これも製剤の種類や期間とは関係しなかったとされています。
一方、中国で特発性低身長の子2,053人を調べた研究(Bone & Joint Journal、2023年)では、低身長の子は背の低くない子に比べて側弯が多く(33.1%と8.52%、多くは軽いもの)、治療前に側弯がなかった子では、成長ホルモン治療で側弯が新たに出るリスクと装具が必要になるリスクが高くなりました。ただし、治療前から側弯があった子では、治療で進むリスクは高くなりませんでした。中国の別の研究(2025年)では、治療中に見つかった側弯は軽いものが中心でしたが、治療を続けた子で進む割合が高かったと報告されています。
対象や調べ方が違うため、どれか一つの結果をそのまま一人ひとりに当てはめることはできません。どの研究からも言えるのは、治療中は背骨の状態を定期的に確かめることが大切だという点です。
とくに注意が必要な子は?
もとの病気によっては、治療と関係なく側弯が起こりやすいことがあります。オーストラリアで成長ホルモン治療を受けていた185人を調べた研究(Scoliosis、2007年)では、特発性低身長や成長ホルモン分泌不全の子では109人中4人(3.6%)でしたが、ターナー症候群では45人中13人(28.8%)、さまざまな症候群の子では23人中11人に側弯がみられました。この研究では、側弯の進行を理由に治療を中止した例はなかったとされています。
プラダー・ウィリ症候群の成長ホルモン治療でも、側弯の経過を診察やエックス線で見ていくことを「プラダー・ウィリ症候群と成長ホルモン治療」のコラムで紹介しています。こうした病気がある場合は整形外科と連携して見ていくことがあり、思春期に入って伸びが速くなる時期は、とくに注意しましょう。
出典 [9]
家では、背中のどこを見ればよい?
日本整形外科学会は、側弯症のサインとして、左右の肩の高さの違い、肩甲骨の出っぱり、腰の高さの左右差、前かがみになったときの背中や腰の盛り上がりを挙げています。慶應義塾大学病院の解説も、前かがみになったときに背中や腰の片側が盛り上がる「ハンプ」を特徴的なサインとしています。
文部科学省が示す学校の健康診断の見方を参考に、家では次のように確かめる方法があります。着替えやお風呂の前後など自然な機会に、短い時間で行いましょう。思春期の子では本人の気持ちを大切にし、薄手のシャツの上から見るなどの工夫をしてください。
家での確認は、診察の代わりにはなりません。気になる変化に気づいたら、次の診察で伝えてください。
- 後ろ向きにまっすぐ立ち、両腕を自然に下げた状態で、両肩の高さ、肩甲骨の位置、腰のくびれに左右差がないかを見る
- 体の前で手のひらを合わせ、ゆっくり前にかがんだ状態で、背中や腰の高さに左右差がないかを見る
- 気になったときは、日付を入れて同じ姿勢で写真を撮っておく
側弯が見つかったら、どうなる?
慶應義塾大学病院の解説では、側弯症の治療は、定期的な経過観察、装具治療、手術の3つに分けられます。コブ角が25度以下の軽い側弯では、3〜12か月ごとにエックス線写真で進み具合を確かめます。骨の成熟前(おおむね14〜15歳以下)で25度前後になると装具治療を始め、装具は基本的にお風呂と体育のとき以外は一日中着け、装具を始めたあとは3〜4か月ごとにエックス線写真で確かめるとされています。
成長ホルモン治療を続けるか、量を見直すかは、側弯の程度や進み方、身長の伸び、もとの病気をふまえて、主治医が整形外科と相談して判断します。自己判断で注射をやめないでください。
学校の健康診断で背骨の異常を指摘されたときは、成長ホルモン治療をしていることを整形外科に伝え、結果を成長ホルモンの主治医にも共有しましょう。
成長ホルモン治療と側弯症についてよくある質問
Q. 治療を始める前に、背骨のエックス線を撮りますか?
A. 添付文書は治療中の定期的な確認を求めていますが、治療前にどのような確認をするかは、病気や体の状態、医療機関によって違います。気になる場合は、治療を始める前に主治医に尋ねてみましょう。
Q. 運動やストレッチで側弯は防げますか?
A. 日本整形外科学会は、程度が軽い場合は運動療法などで経過を見ることがあるとしていますが、自己流の運動で側弯を防げることを示した資料は見当たりません。気になるときは整形外科で相談してください。
Q. 重いかばんや姿勢の悪さで側弯症になりますか?
A. 側弯症は姿勢の悪さとは別のもので、多くは原因の分からない特発性側弯症です。気になる変化があれば、原因を決めつけずに受診してください。
まとめ
成長ホルモン治療中は、背が伸びるぶん背骨の変化にも目を配る必要があり、添付文書でも定期的な確認が求められています。家では肩や腰の左右差、前かがみのときの盛り上がりをときどき見て、気づいたことを主治医に伝えましょう。背骨のエックス線検査などが必要な場合は、対面の医療機関で受けることになります。治療を始めるか迷っている段階では、ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話)で、副作用の確かめ方も含めてお話しいただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS「側弯症」(文責:整形外科、2025年10月10日更新)
- 日本整形外科学会「側弯症」
- PMDA「ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル 添付文書」(2026年8月改訂 第3版)
- PMDA「ジェノトロピンゴークイック注用 添付文書」(2023年12月改訂 第3版)
- 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会(厚生労働科学研究班・日本内分泌学会)「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」(日本内分泌学会雑誌 Vol.99 Suppl.、2023年7月、J-STAGE、PDF)
- Journal of Pediatric Endocrinology and Metabolism「Impact of growth hormone treatment on scoliosis development and progression: analysis of 1128 patients with idiopathic short stature」(Park SJ ほか、2021年、韓国、PubMed)
- Bone & Joint Journal「Idiopathic short stature and scoliosis in children treated with growth hormone」(Hong H ほか、2023年、中国の特発性低身長の子2,053人と対照4,106人、PubMed)
- Journal of Orthopaedic Surgery and Research「Risk factors for scoliosis progression in children with idiopathic short stature on growth hormone therapy」(Zhang X ほか、2025年、中国、PMC)
- Scoliosis「Growth rates and the prevalence and progression of scoliosis in short-statured children on Australian growth hormone treatment programmes」(Day GA ほか、2007年、185人、PMC)
- 文部科学省「児童、生徒、学生、幼児及び職員の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項及び健康診断票の様式例の取扱いについて」(PDF、平成27年9月11日)
- ノビケア「お問い合わせ」