成長と遺伝読む時間 約6分
妊娠中の過ごし方と子どもの将来の身長:分かっていること
公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日
妊娠中の過ごし方は、おもに赤ちゃんが生まれるときの大きさを通して、その後の身長に関わることがあります。たばこ、飲酒、妊娠前のやせや栄養不足、妊娠高血圧症候群などは、赤ちゃんが小さく生まれる要因になることが分かっています。一方で、小さく生まれた子の多くは追いつき、大人の身長には両親から受け継ぐ体質や生まれたあとの環境も大きく関わります。特定の食べ物で背の高い子になるという確かな根拠は見当たりません。
妊娠中の過ごし方で、子どもの将来の身長は決まる?
決まるわけではありません。妊娠中の環境は、まず赤ちゃんがおなかの中でどのくらい育つか、つまり生まれるときの大きさに関わります。妊娠週数に比べて小さく生まれた子の多くは2歳ごろまでに標準の範囲に追いつきますが、一部の子は追いつかず、子どもの時期を通して低身長のまま経過することがあります。
厚生労働省の「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」の解説要領は、胎児期の発育が十分でなかった場合、大人になってから肥満や循環器の病気、2型糖尿病などのリスクが高まる可能性があるという考え方(DOHaD)を紹介しています。妊娠中の環境は、身長だけでなく、生まれた子の将来の健康にも関わると考えられています。
小さく生まれた子のその後の伸び方は「出生体重・早産と将来の身長」のコラムで、追いつかない場合は「SGA性低身長症とは?」のコラムで説明しています。
赤ちゃんが小さく生まれる要因として、分かっていることは?
学会や公的機関が示している主なものを、下の表にまとめました。どれも、生まれたあとの身長を直接決めるものではなく、生まれるときの大きさを通して関わるものです。
表にあることが当てはまっても、赤ちゃんが必ず小さく生まれるわけではありません。反対に、どれにも当てはまらなくても小さく生まれることがあり、はっきりした理由が分からないことも少なくありません。生まれたときの大きさは、妊娠週数とあわせて判断されるため、母子健康手帳の記録で確かめておきましょう。
| 要因 | 分かっていること |
|---|---|
| 妊娠中のたばこ | 早産、低出生体重、おなかの中での発育の遅れにつながる。吸う本数が多いほど、生まれたときの体重と身長が小さくなる |
| 妊娠中の飲酒 | 胎児性アルコール・スペクトラム障害の原因になり、低体重や体重増加の遅れなどが起こりうる。安全な飲酒量は分かっていない |
| 妊娠前のやせ・栄養不足 | 若い女性のやせは、早産や低出生体重のリスクを高めると報告されている |
| 妊娠高血圧症候群 | 妊婦の10〜20人に1人に起こるとされ、赤ちゃんの発育が遅れる(胎児発育不全)ことがある |
| 多胎妊娠 | 双子や三つ子は早産が多く、約7割が2,500g未満で生まれる |
たばことお酒は、どのくらい気をつければよい?
厚生労働省のe-ヘルスネットは、妊娠中の飲酒について、ここまでなら大丈夫という量のしきい値は分かっておらず、妊娠中の女性は完全にお酒をやめるよう勧めています。胎児性アルコール・スペクトラム障害には治療法がなく、唯一の対策は予防だとしています。
たばこは、妊婦自身が吸わなくても、周りの人の煙を吸うことが赤ちゃんの発育の遅れと関係する可能性があるとされています。妊娠中のたばこと、その後の子どもの身長の研究は「受動喫煙と子どもの身長・成長」のコラムで説明しています。家族ぐるみで禁煙に取り組むことが大切です。
妊娠中の体重は、どのくらい増えるのがよい?
2021年に改定された「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」では、日本産科婦人科学会の目安をもとに、妊娠前の体格ごとの体重増加量の目安を示しています。あわせて、増加量を厳しく指導する根拠は必ずしも十分ではないとして、個人差を考えたゆるやかな指導を心がけるとしています。
同じ資料によると、日本で2,500g未満で生まれる赤ちゃんの割合は、2004年以降9.5%前後で、OECD加盟国の平均6.5%より高くなっています。若い女性のやせが多いことが、背景の一つとして挙げられています。体重の増やし方は、妊婦健診で医師や助産師と相談しながら決めましょう。
| 妊娠前の体格(BMI) | 体重増加量の目安 |
|---|---|
| 低体重(18.5未満) | 12〜15kg |
| 普通体重(18.5以上25.0未満) | 10〜13kg |
| 肥満1度(25.0以上30未満) | 7〜10kg |
| 肥満2度以上(30以上) | 個別に対応(上限5kgまでが目安) |
妊娠中に特定の食べ物をとると、背の高い子になる?
そうした確かな根拠は見当たりません。たとえば、デンマークの妊婦809人を約20年追った研究(European Journal of Clinical Nutrition誌、2013年)では、妊娠中に牛乳を多く飲んでいた母親の子は、生まれたときの体重と身長がやや大きめでした。しかし、20歳ごろの身長の差ははっきりせず、研究者もより大きな研究が必要だとしています。
葉酸は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害という先天異常を防ぐために、妊娠前から十分にとることが勧められている栄養素で、身長を伸ばすためのものではありません。特定の食品やサプリメントに頼るより、主食・主菜・副菜をそろえた食事で、必要な量をとることが基本です。
子どもが小柄なのは、妊娠中の自分のせい?と思ってしまうときは?
子どもの身長には、両親から受け継ぐ体質、生まれたあとの栄養や睡眠、病気の有無など、たくさんのことが関わります。妊娠中の過ごし方だけで、今の身長を説明できることはほとんどありません。
また、妊娠高血圧症候群のように、本人の努力だけでは防ぎきれないものもあります。日本産科婦人科学会は、この病気には胎盤が深く関わっていると考えられ、定期的に妊婦健診を受けて適切な管理を受けることが最も大切だとしています。
過去を振り返って自分を責めるより、今のお子さんの伸び方を記録で確かめることが、これからできることです。気持ちがつらいときは、市区町村のこども家庭センターなどの相談窓口も利用できます。
生まれたあとに、家庭でできることは?
妊娠中のことは変えられませんが、生まれたあとの環境は、これから整えていくことができます。日本小児内分泌学会は、身長に関わるものとして、遺伝や体質のほか、栄養、睡眠、運動、心理的な状態などの環境の要因を挙げています。
小さく生まれた子では、体重を増やそうとして食べさせすぎると、体重だけが増えて将来の肥満につながることがあると、同学会の手引きは注意しています。身長と体重のバランスを成長曲線で確かめながら見守りましょう。家庭でできることは「子どもの身長を伸ばす方法はある?」のコラムでまとめています。
- 母子健康手帳の発育曲線に、健診ごとの身長と体重を書き込んでおく
- 家族のたばこの煙から子どもを遠ざける
- 年齢に合った睡眠時間と、主食・主菜・副菜のそろった食事を心がける
子どもの身長の相談では、妊娠中のことをどう伝える?
身長の相談では、生まれたときの記録が大切な手がかりになります。母子健康手帳を見ながら、次のことを確かめておきましょう。
- 妊娠何週で生まれたか(在胎週数)と、出生時の体重・身長
- 妊娠中に、赤ちゃんの発育が遅いと言われたことがあるか
- 妊娠高血圧症候群など、妊娠中にかかった病気
- 双子など多胎だったか
出典 [1]
妊娠中の過ごし方と子どもの身長についてよくある質問
Q. 妊娠中に飲酒や喫煙をしてしまいました。子どもの身長は大丈夫でしょうか?
A. 影響があるかどうかは、生まれたときの大きさやその後の伸び方を見て判断します。気になる場合は、母子健康手帳と身長の記録を持って小児科で相談してください。
Q. 妊娠中のつわりで、あまり食べられませんでした。
A. 妊娠中の食事の量だけで、子どもの今の身長が決まるわけではありません。生まれたときの記録と、その後の伸び方を確かめましょう。
Q. 次の妊娠で、できることはありますか?
A. 妊娠前からの食生活や体格を整えること、たばことお酒を避けること、妊婦健診をきちんと受けることが勧められています。具体的なことは、かかりつけの産婦人科で相談しましょう。
出典 [2]
まとめ
妊娠中のたばこ、飲酒、やせや栄養不足、妊娠高血圧症候群などは、赤ちゃんが小さく生まれる要因になりますが、小さく生まれた子の多くは追いつき、身長はそれだけで決まるものではありません。生まれたときの記録とその後の伸び方を確かめ、気になるときは相談しましょう。身長の伸び方が気になる場合は、ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話)で、母子健康手帳の記録を見ながらご相談いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。お薬を処方する2回目の診察には、お子さまにも参加していただきます。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 日本小児内分泌学会「SGA性低身長症におけるGH治療の手引き」
- 厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 ~妊娠前から、健康なからだづくりを~ 解説要領」(令和3年3月、こども家庭庁掲載、PDF)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「胎児性アルコール・スペクトラム障害」
- 日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」(一般の方へ)
- こども家庭庁 母子健康手帳情報支援サイト「多胎児の育児に関するサポートなど|多胎を妊娠・出産した方へ」
- こども家庭庁掲載「「妊産婦のための食生活指針」改定の概要(2021年3月)」(妊娠中の体重増加指導の目安を含む、PDF)
- European Journal of Clinical Nutrition「Maternal milk consumption, birth size and adult height of offspring: a prospective cohort study with 20 years of follow-up」(Hrolfsdottir L ほか、2013年、デンマークの妊婦809人、PubMed)
- 日本小児内分泌学会「低身長」
- こども家庭庁「こども家庭センター」
- ノビケア「お問い合わせ」