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小児がんの治療後の身長は?放射線・化学療法と成長ホルモン
公開日:2026年10月4日 更新日:2026年10月4日
小児がんの治療後は、頭への放射線治療、脳腫瘍そのものや手術、全身への放射線照射などの影響で、成長ホルモンが不足したり、思春期が早まったりして、身長の伸びが落ちることがあります。こうした影響は治療から何年もたって出てくることもあるため、長期フォローアップで身長を記録し続けることが大切です。成長ホルモンの不足が分かれば、病気が落ち着いてから一定期間をおいて、保険で治療を検討できる場合があります。
小児がんの治療後に、なぜ身長が気になるの?
日本小児内分泌学会の「小児がん経験者(CCS)のための内分泌フォローアップガイド」は、小児がんの5年生存率は70〜80%に達するようになった一方で、治療後の合併症の中でも内分泌(ホルモン)の合併症はとくに多く、成長や思春期に直接影響し、多くは一生続くと説明しています。
国立がん研究センターのがん情報サービスも、治療の影響で起こる「晩期合併症」として、低身長やホルモンの異常など成長・発達の問題を挙げています。晩期合併症は治療が終わってから数年から数十年たって現れることがあり、定期的な診察と検査による長期のフォローアップが必要とされています。
どんな治療で、身長に影響が出やすい?
同じガイドは、どの合併症が起こりうるかは、もとの病気と受けた治療からある程度予測できるとしています。身長に関わる主なものを、ガイドの説明をもとに下の表にまとめました。実際に影響が出るかどうかは、治療の量や年齢などによって一人ひとり違います。
とくに頭への放射線は、成長ホルモンの不足の原因になりやすいとされ、ガイドは(12〜)18Gy以上で成長ホルモン分泌不全を起こす危険性があるとしています。また、成長ホルモンの不足は放射線治療からの年数とともに増えるため、一度の検査で正常でも、その後も正常とは限らないと説明しています。
| 治療など | 身長に関わる影響の例 |
|---|---|
| 頭への放射線治療 | 成長ホルモンの不足、思春期の早まり、甲状腺ホルモンの不足 |
| 脳腫瘍そのもの・手術 | 成長ホルモンを含む下垂体ホルモンの不足 |
| 背骨(脊髄)への放射線治療 | 背骨の伸びが妨げられ、座高が伸びにくい |
| 全身への放射線照射(造血細胞移植の前処置) | 骨への直接の影響、甲状腺や性腺の働きの低下 |
| 一部の抗がん薬(アルキル化剤など) | 性腺の働きの低下(思春期の進み方への影響) |
出典 [1]
思春期が早まると、なぜ身長に影響するの?
ガイドは、頭への放射線の量が18Gy以上になると、脳の視床下部が刺激されて思春期早発症を起こすことがあり、女の子のほうが起こりやすいとしています。思春期が早く始まると、一時的には背が高くなりますが、骨の成熟が進んで骨端線が早く閉じるため、治療しないと最終的に低身長になると説明しています。
一方で、量の多い放射線治療のあとには、一時的に思春期が早まったあと、性腺の働きが低下することもあるとされています。思春期の変化に気づいたら、早めに主治医に伝えましょう。思春期早発症については「思春期早発症とは?」のコラムでも説明しています。
出典 [1]
治療後は、身長をどのくらいの間隔で確かめる?
日本小児内分泌学会のガイドは、成長ホルモンの系統のフォローアップとして、小児期は身長と体重を年2〜4回測って成長曲線を作り、骨年齢は二次性徴が始まるまで年1回、始まったあとは年1〜2回確かめるとしています。米国内分泌学会の指針(2018年)も、大人の身長が低くなるおそれの高い人は、6〜12か月ごとに身長を確かめるよう勧めています。
国立成育医療研究センターの長期フォローアップ科は、小学校入学前後、小学3〜4年生、中学入学前後、高校入学前後、18〜20歳を大切な確認の時期として受診を勧めています。受けた治療の内容(放射線の部位と量、使った薬、移植の有無など)をまとめた記録があると、ほかの医療機関でも経過を正しく見てもらいやすくなります。
成長ホルモン治療はできる?
成長ホルモンの不足が確かめられれば、成長ホルモン分泌不全性低身長症として治療を検討できます。ガイドでは、身長が同じ性別・年齢の−2SD以下、または1年の伸びが標準の−1.5SD以下で経過している場合に、分泌を調べる検査を行うとしています。頭への放射線治療などがある場合は、検査は1種類でよいとされています。小児慢性特定疾病の対象には「脳の器質的原因による」成長ホルモン分泌不全性低身長症も含まれています。
なお、ガイドは、子どもでは7〜12Gyの放射線でも、薬を使う検査では正常なのに、ふだんの分泌が少ない状態(神経分泌異常)が起こることがあるものの、日本では成長ホルモン治療の対象になっていないとしています。
全身への放射線照射を受けた子について、日本造血・免疫細胞療法学会は、移植時の年齢が10歳未満、あるいは女の子では成長ホルモンの効果が明らかに良好だったという報告を紹介する一方、骨そのものへの影響のため効果が出にくいこともあるとしています。
治療を始める時期と、再発や二次がんの心配は?
成長ホルモン製剤の添付文書は、悪性腫瘍のある人には使わないこととしています。治療を始める時期について、日本小児内分泌学会のガイドは、もとの腫瘍の再発は治療終了後2年以内が多いため、可能なら2年たってから始めるとしています。ただし、伸びる期間が残り少ない場合などは、本人・家族と相談して早めに始めることもあるとしています。米国内分泌学会の指針は、病気のない状態が1年続くまで待つことを提案しており、資料によって目安には1〜2年の幅があります。
添付文書には、小児がんの経験がある人に成長ホルモンを使うと、二次性の腫瘍が起こるリスクが上がるという報告があると書かれています。一方、ガイドは成長ホルモン治療と二次性腫瘍の因果関係は明らかではないとしており、米国内分泌学会の指針がまとめた研究でも、治療した人としなかった人で二次性腫瘍の起こり方にはっきりした差はみられませんでした。くわしくは「成長ホルモン治療でがんのリスクは上がる?」のコラムで説明しています。治療を受けるかどうかは、がんの主治医と成長の専門の医師の両方と相談して決めます。
成長の相談をするときに、用意しておくものは?
国立がん研究センターのがん情報サービスは、医療機関によっては、受けた治療をまとめた記録(治療サマリー)を作る取り組みが進められていると紹介しています。手元にない場合は、治療を受けた病院に相談してみましょう。成長の相談では、次のような情報があると経過を正しく見てもらいやすくなります。
- もとの病気の名前と、診断・治療の時期
- 放射線治療の部位と量、全身への放射線照射や造血細胞移植の有無
- 使った抗がん薬の種類
- 母子健康手帳や学校、病院での身長・体重の記録
- 思春期の変化に気づいた時期
- これまでに受けたホルモンの検査の結果
小児がんの治療後の身長についてよくある質問
Q. 化学療法だけで、放射線治療は受けていません。身長への影響はありますか?
A. 日本小児内分泌学会のガイドでは、成長ホルモンの不足の主な危険因子は頭への放射線とされていますが、使った薬によっては性腺の働きなどに影響することがあります。受けた治療の記録をもとに、主治医に確認しましょう。
Q. 治療から何年もたっていますが、今から伸びが落ちることはありますか?
A. ガイドは、頭への放射線治療のあとの成長ホルモンの不足は、年数とともに増えるとしています。治療から時間がたっていても、身長の記録を続けることが大切です。
Q. 背骨に放射線を受けました。成長ホルモン治療で伸びますか?
A. 米国内分泌学会の指針は、背骨に放射線を受けた人では、成長ホルモン治療への伸びの反応が小さかったという研究を紹介しています。どの程度の効果が見込めるかは、専門の医師に相談してください。
まとめ
小児がんの治療後は、頭への放射線治療などの影響で、成長ホルモンの不足や思春期の早まりが起こり、何年もたってから伸びが落ちることがあります。長期フォローアップで身長を記録し続け、伸びが落ちたときは、がんの主治医と成長の専門の医師に相談しましょう。記録の見方で迷うときは、ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話)でご相談いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。検査や治療が必要な場合は、長期フォローアップを行っている医療機関での診療をお勧めします。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 日本小児内分泌学会 CCS委員会「小児がん経験者(CCS)のための内分泌フォローアップガイド」(ver 1.2、2016年6月改訂、PDF)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「晩期合併症/長期フォローアップ」(小児がん)
- Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism「Hypothalamic-Pituitary and Growth Disorders in Survivors of Childhood Cancer: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline」(Sklar CA ほか、2018年)
- 国立成育医療研究センター 小児がんセンター「長期フォローアップ科」
- 小児慢性特定疾病情報センター「小児慢性特定疾病 対象疾病一覧(令和7年4月1日版)」(PDF)
- 日本造血・免疫細胞療法学会「11-11. 小児の晩期合併症」(患者さん向け)
- PMDA「ノルディトロピン フレックスプロ注 添付文書」(2025年9月改訂 第3版)
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