ノビケア トップ > コラム > 低身長の原因と成長ホルモンのしくみ
低身長の原因と成長ホルモンのしくみ読む時間 約6分
MRIで「下垂体が小さい」と言われたら:考えられることと、次に確かめること
公開日:2026年10月5日 更新日:2026年10月5日
「下垂体が小さい」は、MRIの画像で、下垂体が年齢の目安より小さく見えたという所見です。成長ホルモンの不足と関係していることがありますが、下垂体の大きさはもともと個人差が大きく、年齢や思春期によっても変わります。画像だけで病気が決まるわけではないので、ホルモンの検査の結果とあわせて意味を確かめ、成長ホルモン以外のホルモンも含めて経過を見ていくことが大切です。
「下垂体が小さい」とは、どういう意味?
下垂体は、脳の下側にある小さな器官で、成長ホルモンのほか、甲状腺や副腎、精巣・卵巣の働きを調節するホルモンや、尿の量を調節するホルモンを出しています。MRIでは、下垂体の高さや形、脳とつながる細い茎(下垂体茎)、後ろ側の部分(後葉)の位置などを見ます。下垂体が小さいことを、医療の言葉では「下垂体低形成」と呼ぶことがあります。
下垂体の大きさには、もともと幅があります。内分泌の病気のない18歳未満の子ども800人の頭部MRIを調べたトルコの研究(2023年)では、下垂体の体積は年齢とともに少しずつ大きくなり、思春期の初めごろに大きくなる時期があり、その変化は女の子でよりはっきりしていました。研究者は、下垂体の形は人によって大きく違うため、大きさの評価はやや難しいと述べています。そのため、「小さい」かどうかは、年齢や性別、思春期の段階を考えて判断されます。頭のMRIを受ける理由や鎮静については「低身長で頭のMRI検査をするのはなぜ?」のコラムで説明しています。
どんなことが考えられる?
下垂体が小さく見える理由には、次のようなものがあります。どれに当たるかは、画像だけでは決まりません。
- 成長ホルモン分泌不全症に伴うもの:小児慢性特定疾病情報センターは、頭部MRIで下垂体低形成、下垂体茎の途切れ、後葉の位置のずれ(異所性後葉)がある場合を、脳の器質的原因による成長ホルモン分泌不全性低身長症に含めています
- 生まれつきの下垂体の発達の違い:生まれつき下垂体のホルモンが足りない子についての総説(2021年)は、MRIでは下垂体の前側が小さめのものから、ごく小さいものまでさまざまな所見がみられるとしています
- 原因の見つからない低身長に伴うもの:米国の研究(2016年)では、下垂体の体積は、成長ホルモンだけが足りない子で小さく、原因の見つからない低身長の子はその中間でした
- 年齢や思春期の段階による見え方:思春期の前後で大きさが変わるため、同じ子でも時期によって見え方が違います
下垂体の大きさのほかに、画像で何を見る?
前の総説は、下垂体が小さいこと、下垂体茎が途切れていること、後葉の位置がずれていることの3つがそろったものを「下垂体茎断裂症候群」と呼ぶと説明しています。視神経が細いことや、脳の真ん中の構造の違いを伴うこともあるとされています。
32の研究(3万9,060人)をまとめた分析(2021年)では、生まれつきの成長ホルモン分泌不全症の子のうち、下垂体のまわりに何らかの所見があった割合は、成長ホルモン以外のホルモンも足りない子で91.4%、成長ホルモンだけが足りない子で40.1%でした。下垂体茎断裂症候群の割合は、それぞれ65.3%と20.1%でした。画像の所見は、ほかのホルモンの不足がないかを考える手がかりになります。
次に、どんな検査で確かめる?
MRIは形を見る検査で、ホルモンがどのくらい出ているかは分かりません。ホルモンの働きは血液検査や分泌刺激試験で確かめます。小児慢性特定疾病情報センターは、成長ホルモンが足りない低身長では、甲状腺を刺激するホルモン(TSH)、精巣・卵巣を刺激するホルモン(LH・FSH)、副腎を刺激するホルモン(ACTH)、尿の量を調節するホルモン(ADH)の不足を伴うことがあるとしています。主治医から、次のような検査の予定を聞いておきましょう。
- 成長ホルモンの分泌刺激試験と、IGF-1などの血液検査
- 甲状腺の働きの検査(TSH、甲状腺ホルモン)
- 副腎の働きの検査(ACTH、コルチゾール)
- 思春期の年ごろには、LH・FSHや性ホルモンの検査
- のどの渇きや尿の量の確認と、必要に応じた尿や血液の検査
出典 [3]
画像の所見は、診断にどう関わる?
成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断の手引きでは、ふつうは2種類以上の分泌刺激試験で成長ホルモンの値が低いことを確かめます。一方、画像検査の異常所見(下垂体低形成、細いか見えない下垂体茎、後葉の位置のずれ)などがあり、視床下部や下垂体の働きの障害が強く疑われる場合は、低身長とあわせて、1種類の分泌刺激試験で判定する場合があるとされています。
つまり、画像の所見は診断を考えるうえで大切な情報ですが、ホルモンの検査とあわせて初めて意味がはっきりします。分泌刺激試験の流れは「成長ホルモン分泌刺激試験(負荷試験)とは?」、病気の全体像は「汎下垂体機能低下症とは?」のコラムで説明しています。
出典 [7]
今は問題がなくても、経過を見るのはなぜ?
下垂体のホルモンの不足は、あとから加わることがあります。前の総説は、成長ホルモンだけが足りず、下垂体茎断裂症候群がある子は、ほかのホルモンの不足が新たに起こらないか注意深く見ていく必要があるとしています。小児慢性特定疾病情報センターも、下垂体機能低下症では、今は副腎を刺激するホルモンが正常でも、年月とともに低下することがあると説明しています。
そのため、最初の検査でほかのホルモンに問題がなくても、身長の伸び方や思春期の進み方を見ながら、定期的に検査を続けることがあります。検査の間隔は、主治医と相談して決めてください。
早めに連絡したほうがよいサインは?
次のような様子があるときは、次の受診を待たずに主治医に相談しましょう。
- のどがよく渇いて水をたくさん飲み、夜中も何度もトイレに行く
- かぜなどのときに、いつもよりひどくぐったりする、顔色が悪い
- 身長の伸びが、これまでより目立って落ちてきた
- 思春期の変化が、同じ年ごろの子と比べて大きく早い、またはなかなか始まらない
出典 [1]
すぐに受診が必要なのは、どんなとき?
強い頭痛が続く、何度も吐く、見え方がおかしいといった様子があるときは、予約の日を待たずに、すぐに医療機関に連絡してください。意識がおかしい、けいれんがあるといったときは、119番に連絡してください。
ノビケアはオンライン診療のため、MRIや分泌刺激試験、静脈採血は行っていません。ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話)でも、お手元の記録を見ながらご相談いただけます。1回目は保護者の方だけでもかまいません。お薬の処方を検討する2回目には、お子さまにも参加していただきます。予約は公式LINEから受け付けています。検査が必要な場合や、保険診療の対象になりうる場合は、対面の医療機関をご紹介します。
出典 [9]
下垂体が小さいと言われたときのよくある質問
Q. 下垂体が小さいのは、遺伝によるものですか?
A. 小児慢性特定疾病情報センターは、頻度は非常に少ないものの、下垂体の発生や成り立ちに関わる遺伝子の変化による成長ホルモン分泌不全症があると説明しています。多くの場合ははっきりした原因が分かりません。家族に同じ病気の人がいる場合は、主治医に伝えてください。
Q. 成長ホルモンの値が正常なら、下垂体が小さくても心配いりませんか?
A. 今の検査で不足がなくても、あとから不足が加わることがあるとされています。どのくらいの間隔で何を確かめるか、主治医と相談しましょう。
Q. MRIはまた撮る必要がありますか?
A. 所見の種類や、ほかの検査の結果によって違います。撮り直すかどうかとその時期は、主治医の判断に従ってください。
まとめ
MRIで「下垂体が小さい」と言われても、それだけで病気が決まるわけではありません。下垂体の大きさには個人差があり、年齢や思春期でも変わります。成長ホルモンとほかのホルモンの検査で働きを確かめ、身長の伸び方とあわせて、主治医と経過を見ていきましょう。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 難病情報センター「下垂体前葉機能低下症(指定難病78)」(下垂体性ADH分泌異常症などとあわせた解説と診断基準)
- Pediatric Radiology「Pituitary gland volumes in children with normal endocrine function」(Çolaklar A・Fitoz ÖS、2023年、内分泌の病気のない18歳未満800人の頭部MRI、PubMed)
- 小児慢性特定疾病情報センター「成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症(脳の器質的原因によるものを除く。)」
- Frontiers in Pediatrics「Congenital Hypopituitarism During the Neonatal Period: Epidemiology, Pathogenesis, Therapeutic Options, and Outcome」(Bosch i Ara L ほか、2021年、PMC)
- Journal of Pediatric Endocrinology and Metabolism「Pituitary volume in children with growth hormone deficiency, idiopathic short stature and controls」(Kessler M ほか、2016年、PubMed)
- Neuroradiology「Prevalence of brain MRI findings in children with nonacquired growth hormone deficiency: a systematic review and meta-analysis」(2021年、32研究・39,060人、PubMed)
- 小児慢性特定疾病情報センター「成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症(脳の器質的原因によるものを除く。) 診断の手引き」
- 小児慢性特定疾病情報センター「先天性下垂体機能低下症 概要」
- ノビケア「お問い合わせ」