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低身長の原因と成長ホルモンのしくみ読む時間 約7分
甲状腺の病気と身長:甲状腺ホルモンが足りないと背は伸びにくい?
公開日:2026年10月3日 更新日:2026年10月3日
甲状腺ホルモンは、子どもの体の成長や知的な発達に欠かせないホルモンです。足りなくなると身長の伸びが落ち、骨の成熟も遅れます。不足しているホルモンを薬で補うと伸びは回復しますが、不足していた期間が長いと十分に追いつかないことがあるため、伸び方の変化に早めに気づくことが大切です。
甲状腺ホルモンは、成長にどう関わる?
甲状腺は首の前にある臓器で、甲状腺ホルモンを出しています。日本小児内分泌学会は、甲状腺ホルモンには全身の代謝を活発にするはたらきがあり、子どもでは体の成長や知的な発達に必要なホルモンだと説明しています。
甲状腺ホルモンの量は、脳の下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)が調節しています。甲状腺ホルモンが足りないとTSHが高くなり、多すぎるとTSHは低くなります。血液検査では、この二つを組み合わせて甲状腺のはたらきを判断します。
骨が長く伸びるしくみにも関わっています。骨の成熟についての総説では、成長ホルモンや性ホルモンと同じように、甲状腺ホルモンが骨の端で軟骨が増えて骨に置きかわる過程を進めると説明されています。そのため、足りないと身長の伸びと骨年齢の両方が遅れ、多すぎると両方が進みます。
甲状腺ホルモンが足りないと、背の伸びはどうなる?
日本小児内分泌学会は、甲状腺ホルモンの分泌が不足したときにも身長の伸びが低下することがあり、不足しているホルモンを治療で補うことで身長が伸びると説明しています。成長ホルモンの不足と並んで、治療できる低身長の原因の一つです。
成長曲線では、それまで線に沿って伸びていた子が、だんだん線から離れて下がっていく形で現れることが多くあります。小児慢性特定疾病情報センターの萎縮性甲状腺炎の解説では、甲状腺機能が急に大きく低下すると成長がほとんど止まり、肥満をともなうことが特徴とされています。
体重は増えているのに身長が伸びない、という組み合わせは、甲状腺の病気を考える手がかりの一つです。病気が原因の低身長のサインは「病気が原因の低身長に気づくサインは?」の記事でもまとめています。
生まれつきの甲状腺機能低下症は、どう見つかる?
生まれつき甲状腺のはたらきが弱い病気を、先天性甲状腺機能低下症といいます。日本小児内分泌学会によると、3000〜5000人に1人程度の割合でみられると推定されています。長い目で見ると、体の成長や知的な発達が遅れることが問題になります。
日本では、生まれて5〜7日目ごろに、すべての赤ちゃんを対象にした新生児マススクリーニング検査でTSHを測っています。そのため、症状がはっきりする前に見つかることがほとんどです。ただし、この検査で見つからないケースもまれにあると学会は説明しています。
治療は、甲状腺ホルモン薬(レボチロキシンナトリウム)を1日1回飲み、血液検査をしながら量を調整します。新生児マススクリーニングが始まり、早く見つけて早く治療できるようになってから、成長や発達の見通しがよくなったことが知られています。
出典 [1]
成長の途中で起こる甲状腺の病気には、何がある?
生まれたときは問題がなくても、成長の途中で甲状腺のはたらきが落ちることがあります。小児慢性特定疾病情報センターによると、橋本病(慢性甲状腺炎)は、6歳以上の子どもの甲状腺の腫れや、あとから起こる甲状腺機能低下症の主な原因とされ、思春期の年齢から増えてきます。子どもでは女の子に多く、男女比は1対5程度です。
橋本病は、自分の甲状腺に対する抗体ができる病気ですが、すべての人が甲状腺機能低下症になるわけではありません。甲状腺のはたらきが正常なまま経過する人も多くいます。萎縮性甲状腺炎のように、首の腫れがないまま甲状腺のはたらきが大きく落ちる病気もあり、学童期から思春期の女の子に多いとされています。
このほか、頭や首の放射線治療のあと、一部の薬の影響、ヨウ素のとりすぎなどでも甲状腺のはたらきが落ちることがあります。脳の下垂体などに原因がある中枢性の甲状腺機能低下症もあります。
気づくきっかけになる症状は?
甲状腺機能低下症の症状は、ゆっくり現れることが多く、本人も家族も気づきにくいものです。小児慢性特定疾病の診断の手引きや解説では、次のような症状が挙げられています。
どれも、ほかの原因でも起こりうる症状です。一つ当てはまるだけで病気とは限りませんが、身長の伸びが落ちていることと重なる場合は、小児科で相談してください。
- 身長の伸びが落ちてきた、体重は増えているのに背が伸びない
- 元気がない、疲れやすい、寒がり
- まぶたのむくみ、動作がゆっくりになった、眠そうにしている
- 便秘、声のかすれ
- 首の前が腫れている
- 月経が不順になった、学業成績が下がった
検査と治療は、どのように進む?
甲状腺のはたらきは、血液検査で甲状腺ホルモン(遊離T4など)とTSHを測って調べます。橋本病を疑うときは甲状腺に対する抗体も測り、必要に応じて首の超音波検査を行います。成長への影響を見るために、成長曲線や骨年齢も確認します。
甲状腺機能低下症と分かった場合は、甲状腺ホルモン薬を飲んで足りない分を補います。血液検査で量を調整しながら続けます。原因によっては、一生飲み続ける必要があります。
甲状腺ホルモンは正常でTSHだけが少し高い「潜在性甲状腺機能低下症」については、すぐに薬を始めることに慎重な意見もあります。小児慢性特定疾病情報センターの解説では、一時的で自然に正常に戻ることがあることや、身長の伸びの低下を起こさないことが理由として挙げられています。薬を始めるかどうかは、医師が経過を見ながら判断します。
治療すれば、身長は追いつく?
治療を始めると、伸びは回復してきます。ただし、どこまで追いつけるかは、不足していた期間の長さによって変わります。
米国の医学誌に載った研究では、重い後天性の甲状腺機能低下症の子ども24人(女子18人、男子6人)を治療後、大人になるまで追跡しました。大人の身長は平均より約2SD低く、治療前に不足していた期間が長いほど、身長の不足が大きかったと報告されています。治療を始めたばかりのころは、身長の伸びより骨の成熟のほうが速く進んだことも示されています。
小児慢性特定疾病情報センターの萎縮性甲状腺炎の解説(2014年版)でも、身長の伸びが悪かった期間が長いと、追いつけるのは70%程度で、大人の身長は十分には改善しないとされています。解説には、思春期の年齢で見つかった場合などに、ほかの治療を組み合わせる検討についても触れられています。組み合わせるかどうかや保険の扱いは一人ひとり異なり、小児内分泌の専門医が個別に判断します。
甲状腺ホルモンが多すぎると、背が伸びやすい?
甲状腺ホルモンが多すぎる状態の代表がバセドウ病です。日本小児内分泌学会は、子どものバセドウ病の症状として、脈が速い、体重が減る、手がふるえる、汗が多い、首の腫れ、目が出てくるなどに加えて、身長の伸びの促進、落ち着きのなさ、学力の低下を挙げています。
子どもでは思春期以降に多く、15歳未満で発症するのは全体の約5%、女の子に多い(男女比は約1対7)とされています。背が急に伸び始めたうえに、体重が減る、汗が多いなどの変化があれば、相談してください。背が高すぎるときの見方は「子どもの背が高すぎる?」の記事で説明しています。
出典 [8]
甲状腺の薬や海藻で、背を伸ばすことはできる?
学会や公的機関の資料には、甲状腺の病気がない子どもに甲状腺ホルモン薬を使って背を伸ばすことを勧めたものは見当たりません。小児慢性特定疾病情報センターの解説では、甲状腺ホルモンの補充が多すぎると、多動や集中力の低下などにつながる心配があると指摘されています。
ヨウ素を多く含む昆布などの海藻を大量にとっても、背が伸びるわけではありません。むしろ、ヨウ素のとりすぎは甲状腺のはたらきを落とす原因の一つに挙げられています。ふだんの食事でとる量を心配する必要はありませんが、特定の食品だけを大量に続けるのは避けましょう。
気になるときは、どこに相談する?
身長の伸びが落ちてきた、首の腫れに気づいた、疲れやすさが続くといった場合は、成長の記録を持って小児科に相談してください。甲状腺の病気は血液検査で調べられ、治療できる低身長の原因の一つです。
伸び方が気になる場合は、ノビケアの医師による無料相談(ビデオ通話、0円)で、記録を見ながら受診の必要性をご相談いただけます。予約は公式LINEから受け付けています。
甲状腺の病気と身長についてよくある質問
Q. 新生児のスクリーニングで異常がなければ、甲状腺の心配はありませんか?
A. 生まれつきの病気の多くは見つかりますが、まれに見つからないことがあります。また、橋本病のように成長の途中で起こる病気もあります。伸び方が落ちてきたら、甲状腺も含めて調べてもらいましょう。
Q. 家族に甲状腺の病気があります。子どもも検査したほうがよいですか?
A. 橋本病は家族の中で起こることもあると説明されています。症状や伸び方に気になる点があるときは、家族歴も医師に伝えて相談してください。
Q. 甲状腺の薬はずっと飲み続けるのですか?
A. 原因によって違います。一生続ける必要がある場合もあれば、生まれつきの病気の一部のように、経過を見て薬をやめられる場合もあります。
まとめ
甲状腺ホルモンが足りないと身長の伸びが落ち、骨の成熟も遅れます。薬で補うと伸びは回復しますが、不足していた期間が長いと十分に追いつかないことがあります。伸び方が落ちてきた、体重が増えているのに背が伸びないといった変化があれば、早めに小児科で相談しましょう。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 日本小児内分泌学会「先天性甲状腺機能低下症」
- Clinical Pediatric Endocrinology「Bone age: assessment methods and clinical applications」(日本小児内分泌学会英文誌、2015年、PubMed)
- 日本小児内分泌学会「低身長」
- 小児慢性特定疾病情報センター「萎縮性甲状腺炎 概要」
- 小児慢性特定疾病情報センター「橋本病 概要」
- 小児慢性特定疾病情報センター「21及び22に掲げるもののほか、後天性甲状腺機能低下症 診断の手引き」
- New England Journal of Medicine「Long-term growth in juvenile acquired hypothyroidism: the failure to achieve normal adult stature」(1988年、PubMed)
- 日本小児内分泌学会「バセドウ病(Graves病)」
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